新たな仕組みづくりに向けて、内部統制や法令改正対応、決算書類の自動化、帳票へのリアルタイム反映、完全なクラウド対応などのマスト要件を軸に、複数の製品を選定することに。そのなかで注目したのが、デモの評価が最も高かったSuperStream-NXだった。「マスト要件を満たした製品から実際にデモを行ったところ、画面の見やすさと直感的操作性の点で現場からの評価が一番高かったのです」と青山氏。
また、グローバル対応できる点もSuperStream-NX選定の大きなポイントだった。「選定したほとんどの製品が、グローバルでの対応が難しいという回答でした。実はSuperStreamを知ったのは、タイで生産管理システムを立ち上げているとき。スクラッチ開発した財務会計システムを、いずれは刷新しなければと考えてはいた。そんな折、タイで生産管理システムを立ち上げたパートナーからSuperStreamの紹介を受けたことがきっかけでした。最終的にはタイやインドにも日本と同様の環境を展開することで、グローバルで同じ仕組みを動かすことが理想的だと考えており、将来性も加味するとグローバル対応が可能なSuperStream-NXを高く評価したのです」と青山氏。
グローバル展開を念頭に考えれば、海外製品という選択肢も十分考えられたものの、生産管理と密接に連携した会計パッケージが多く、コスト的にも同社に見合うものではなかったという。「生産管理のパッケージを導入して失敗している企業をタイで数多く見聞きしており、当初から生産管理システムは自前で開発する計画でした。パッケージの生産管理と密接につながる海外製品は避けたいと考えたのです」。実は自社のオフコンも周辺システムと密結合しており、改修時の苦労を経験していた青山氏にとっては部分最適を実現させるシステムとして、周辺システムと柔軟に連携できるSuperStream-NXは同社にとっても最良な環境だったのだ。
また、プロジェクト当初から請求書など紙の情報をOCRにて読み取ることで、帳票の電子化による電子帳簿保存法への対応も検討していた同社。その環境づくりの過程で、SuperStreamが提供するAI-OCRソリューションにも注目したという。「紙で運用していた業務を電子化して、さらに実務の時間が減らせるよう、財務会計とは異なるプロジェクトとしてOCRを当初から検討していました。そんな折、ちょうどSuperStream-NX AI-OCR(請求書)がリリースされたのを聞き、同じベンダのソリューションの方が連携性も高いと判断したのです」と強矢氏。単なるOCRによる読み取りよりも、定期的にデータを学習することで読み取り精度の向上につながるAI-OCRに期待を寄せたのだ。
結果として、グローバル展開を念頭にSuperStream-NXが、生産管理システムとの柔軟な連携が可能な財務会計の基盤として採用されることになった。
現在は、タイのデータセンタに設置されたクラウド環境にSuperStream-NXを展開し、統合会計をはじめ、固定資産や建設仮勘定などの機能を軸に財務会計の基盤として運用をスタートさせている。
具体的には、国内の各拠点に所属する経理担当者がおり、拠点ごとに請求書をSuperStream-NXに入力し、月次決算などは本社主導で処理を行っている。「以前は10年間の固定資産の償却予測などを求められても出すことが難しい状況でしたが、今は固定資産のシミュレーションが容易になるなど、いろいろな面で便利に使っています」と強矢氏。なお、SuperStream-NX AI-OCR(請求書)と証憑管理オプションは現在導入を進めており、近い将来、各拠点に届いた紙の請求書は入力せずにスキャンしてSuperStream-NXに取り込むことになる。
今回開発を主導したのはタイに本社を置く企業で、タイの生産管理システム開発プロジェクトを推進した、ASEANを中心にビジネスを展開するSiamSystem Consulting Co., Ltd.だ。日系企業向けのSuperStream-NX導入を得意としている。「いずれグローバルに展開するのであれば、タイの会社が日本に導入するという手法もありだと弊社の役員から進言があり、その発想には当初驚いた記憶があります。生産管理システムの導入時にも高く評価したこともあり、ぜひお願いすることにしたのです」と青山氏。また、当初は新型コロナウイルス感染症が広がっていない状況だったため遠隔での導入は想定外だったが、プロジェクトを進めるなかでWeb会議にて打ち合わせを続けながら導入を進めたという。以前からテレビ会議を使ってミーティングすることに慣れていたことも手伝って、日本とタイという距離の離れた環境でも遅延なくプロジェクトを進めることに成功、わずか半年の間で稼働にまでこぎつけている。むしろほとんどの打ち合わせをWeb会議にすることで、隙間時間を上手に活用できるというメリットもあったという。「急激なIT化によって現場からの抵抗がゼロとは言いませんが、カイゼン文化が根付いている製造業だからこそ、常に新しい改善をしていこうという機運が社内にあったことが今回のプロジェクトがうまく推進できた要因の1つ」と青山氏は分析する。
新たな環境に移行したことで、財務・会計課内の指標では残業時間が対前年比59%にまで圧縮できており、紙による承認業務が撤廃され、手作業による帳票作成も不要になるなど、本社、拠点ともに業務の負担が大きく軽減されている。そして今後AI-OCRが動き出せばさらなる業務効率化に寄与するだろうと期待されている。AI-OCRの活用によりは転記作業が削減できるだけでなく転記ミスなども大きく削減できるなどガバナンス的にも大きな効果が得られるはずだと青山氏。「AI-OCR、証憑管理が導入されれば、紙の証票がすべて電子化されるため、場所を問わず承認作業ができるようになります。少数精鋭で運用している分、どこからでも業務が進められるのは大きな副産物です」と高く評価する。
今後は、現在稼働している日本の財務会計システムをインドに展開する計画が進められており、グローバルな財務会計基盤としてさらなる拡張を続けていく予定だ。「タイで構築された生産管理システムを改良して日本に展開することも進めていますが、この日本発の財務会計についてはインドにまず展開し、その後タイにも適用していく予定です。最終的には、日本とインド、タイの3か国をすべて同じシステムでつなげていくことを目指しています」と青山氏。
各国で生まれたシステムをそれぞれの国に展開した後は、生産システムと財務会計システムの連動性を高めていくことが必要だと青山氏は力説する。
「製造業であるがゆえに、最終的には各システムを生産にうまく直結させていくことがポイントになってきます。いまだに生産現場はマニュアルな部分が多いため、モノづくりに役立つデータが欲しいというニーズは必ずあるはず。SuperStream-NXをうまく活用しながら、生産管理との連携を深めていきたい」と今後について語っていただいた。
Siam System Consulting Co.,Ltd.
会社名 | クミ化成株式会社 |
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本社 | 東京都千代田区神田東松下町47-1 |
URL | http://www.kumi.co.jp/ |
従業員数 | 2,039名(連結) |
事業内容 | ■自動車内外装部品の研究開発、設計、製造、販売 ■OA/通信機器などの樹脂・ゴム製品の製造、販売 等 |
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