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リスキリングと人事DXの進め方 第7回 リスキリングのステップ4 「スキル情報の収集と活用」

 前回説明した「ステップ3 スキル習得の仕組み化によりリスキリングを社内に導入することができたら、次にステップ4 スキル情報の収集と活用」を実施し、その定着化を図ります。
ここでは、従業員のスキル情報の効果的な収集方法その活用方法について説明します。
 

スキル情報を管理するシステムの導入 

 リスキリングを進めていくうえで、従業員一人ひとりの研修履歴や保有資格などに関する情報を管理するシステムが必要になります。そのシステムには、次のような機能が装備されていることが望ましいと言えるでしょう

  1. 従業員一人ひとりの研修履歴、保有する公的資格、職務経験などのデータを蓄積するデータベース機能 
  2. スキル情報を分析して、業務遂行に適した従業員を抽出する機能
  3. 従業員の保有スキルなどに関する情報を関係者が閲覧できるようにする機能 
  4. 従業員の公的資格の取得状況や経年推移などを可視化して表示する機能 

 
 エクセルなどの表計算ソフト、あるいは給与計算ソフトなどで研修履歴などのスキル情報を管理している会社は、これらの機能を装備するシステムの導入を検討するべきです。 

 ただしシステムは、入力されている情報が少ないと、その機能を存分に発揮できません。リスキリングに活用できるシステムにするためには、まず多くのスキル情報を収集することが必要になります。 

 

【スキル情報を管理するシステムの機能と表示画面の例 



スキル情報の収集方法 

 リスキリングを進める上で収集するべきスキル情報は、次のものがあります。 

  • 会社が受講を指示した集合研修、e-ラーニングなどを通じて習得したスキルに関する情報 
  • 従業員が自分の判断で受講した社外セミナーなどを通じて習得したスキルに関する情報
  • 業務に関係があり、会社で取得を奨励している資格の取得などに関する情報
  • 業務に関係がない資格の取得や研修受講などに関する情報

 これらのスキル情報を効果的に収集するためのポイントは、次の2点です 

(1)(業務と直接的な関係がないものも含めて)様々なスキル情報を収集対象とすること 

スキル情報の範囲を「会社が実施した研修」「業務と関係がある資格」などに限定してしまうと、多くの情報を収集することができません。従業員が個人的に行っている勉強(例:英会話)、あるいは業務に関係がない資格(例:ソムリエ)の取得などに関する情報についても、幅広く収集するべきです。 

(2)スキル情報の入力を本人ができるように、また(可能な範囲内で)社内で閲覧できるように
   すること
 

システム内で蓄積する情報量を増やすためには、従業員が趣味などを通じて習得した)スキル情報を自分で入力できるようにしておくことが重要です。また、可能な範囲内で、社内で各従業員のスキル情報を閲覧できるようにすることも重要です。従業員にシステム利用を開放することによって、各人がスキル情報を積極的に提供・入力するようになります。 

スキル情報の活用 

 リスキリングを社内に定着させるために、会社は各人が新たに習得したスキルが業務の中で発揮されように、スキル情報を積極的に活用すること」が不可欠です。具体的には、次のような取組みをします 

(1)スキルを習得した従業員に新たな業務・役割を付与する 

リスキリングを成功させた従業員は、習得したスキルをすぐにでも発揮したいと思うでしょう。ですから、リスキリングを成功させた従業員には、習得したスキルを発揮できる業務・役割を付与することが不可欠です。 

(2)業務配分の決定などにスキル情報を積極的に活用する 

システムを社内で閲覧できるようにすれば、現場の管理職は、業務配分を決めるときに、部下のスキル情報を参考にすることができます。スキル情報が業務配分を行うときの参考になっていることが分かれば、従業員は、自主的にリスキリングに取り組み、システムにスキル情報を積極的に入力するようになるでしょう。 
スキル情報を積極的に活用することで、従業員のリスキリングが促され、リスキリングが社内に定着します。 

(3)研修の選定などを行い、人材育成に役立てる 

システムから高業績者が受講した研修などをチェックすれば、「成果に結びつく研修」が特定されます。このようにスキル情報を活用して、受講するべき研修の選定を行えば、人材育成に役立てることができます。 

 

 ここまで説明した「ステップ4 スキル情報の収集と活用」によってリスキリングを社内に定着させることができるでしょう 
 しかし、ここで安心してはいけません。 
 技術革新に伴い、業務に必要なスキルは常に変化しまた、オンライン研修などの新たな仕組みが生まれていますリスキリングの定着後も、会社は、リスキリングの対象となるスキルや仕組みを定期的に見直すことが必要です 
 次回は、リスキリングの最終段階となるステップ5:スキルの見直しなどについて解説します。