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電子帳簿保存法の対象書類は?保存方法からデジタル化に際しての注意点を解説

作成者: スーパーストリーム|2023.06.03

電子帳簿保存法は、国内の各税法で保存が義務付けられている帳簿や書類を、電子データで保存する際のルールを定めた重要な法律です。この法律は、1998年に施行されてからも何度か改正されており、直近では2022年1月1日に改正電子帳簿保存法が施行されました。

電子帳簿保存法が改正された背景には、企業の帳簿や書類のデジタル化を促進し、業務を効率化するねらいがあります。改正電子帳簿保存法によってデジタル化の要件が緩和されたことで、企業の経理業務の効率化やコスト削減が期待されています。また、要件が緩和された一方で、規則や罰則も強化されているため注意が必要です。

そこで今回は、電子帳簿保存法の内容や対象書類、改正電子帳簿保存法の影響や注意すべきポイントを解説します。企業の会計業務に携わる方は、ぜひ参考にしてください。

電子帳簿保存法とは?法律の概要

電子帳簿保存法は、国税関係の帳簿や書類を電子データで適正に保存するための法律です。電子帳簿保存法の目的は、帳簿や書類のデジタル化を促進し、企業や個人の会計業務の効率化とコスト削減を図ることにあります。
2022年1月施行の電子帳簿保存法の改正(以下・改正電子帳簿保存法)では、これまでの要件が一部緩和され、企業や個人が紙媒体の帳簿や書類をデジタル化することが可能となりました。改正電子帳簿保存法の具体的な要件としては、データの保全性や保存期間、保存形式などが定められています。
ただし、この改正電子帳簿保存法では、デジタル化の推進に加え、規則や罰則が強化されている点に注意が必要です。

電子帳簿保存法の目的と要件

電子帳簿保存法の目的は、企業の帳簿や書類をデジタル化し、業務の効率化とコストの削減を図ることです。この電子帳簿保存法には、電子帳簿を適切に管理するための保存義務や保存方法、規則などが定められています。 そこで電子帳簿保存法を遵守するために、関連する法律やガイドラインをしっかりと確認することが重要です。

電子帳簿保存法の対象書類

電子帳簿保存法は、各税法で保存が義務付けられている帳簿や書類を、電子データで保存するためのルールを定めた法律です。電子帳簿保存法の具体的な対象書類と保存方法は、以下のように分類されます。

国税関係帳簿書類の保存(法定保存)

国税関係の帳簿書類は、電子データによる保存が可能です。この保存は法定保存と呼ばれ、電磁的記録による保存等の制度に基づいて行われます。

その他の帳簿書類の保存(任意保存)

国税関係以外の帳簿書類については、任意で電子データによる保存が可能です。これは任意保存とも呼ばれています。

対象書類の保存方法

上記の電子帳簿の保存方法は、電子帳簿保存法により一定の要件が定められています。電子帳簿保存法の主な保存区分は次の3つです。

電子帳簿等保存

電子帳簿等保存とは、電子帳簿保存法に基づく制度の一つで、税務関係帳簿書類のデータ保存を可能にする仕組みです。
一般的には、企業や個人のPCや会計ソフトなどを使って作成した帳簿や書類などがこれに該当します。

電子帳簿保存で保存できる書類には、次のようなものが挙げられます。

国税関係帳簿(デジタルデータ化したもの)

  • 仕訳帳
  • 総勘定元帳
  • 売掛帳
  • 買掛帳
  • 固定資産台帳
  • 現金出納帳 など

国税関係書類(デジタルデータ化したもの)

(決算関係書類)

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 試算表 など

(自己作成書類)

  • 請求書の控え
  • 領収書の控え など

電子帳簿等保存のメリットは、従来の紙媒体の帳簿書類をPCなどでデジタルデータ化して管理することで、データの検索や分析が容易になることや、データの保存スペースや保管コストが削減できる点です。また、デジタルデータの保存により、データの改ざんや紛失などのリスクを低減することも可能です。
この制度を利用することで、比較的容易に経理のデジタル化を進めることができます。

スキャナ保存

スキャナ保存とは、紙媒体の国税関係書類の書面をスキャナで読み取り、デジタルデータ化して保存することです。 なお、スキャナだけではなく、スマートフォンやデジタルカメラなどで撮影した画像での保存も認められています。 スキャナ保存できる書類には、次のようなものが挙げられます。

国税関係書類(紙媒体をスキャンしてデジタル化したもの)

(自己作成書類)

  • 請求書の控え
  • 領収書の控え など

(取引先から受領した書類)

  • 請求書
  • 領収書 など

スキャナ保存のメリットは、紙の帳簿書類をデジタルデータとして保存することによってデータの検索や抽出が容易できること、データの保存スペースや保管コストの削減に期待ができる点です。

電子取引

電子取引とは、ECサイトをはじめとする、インターネットを通じて行われるさまざまな商取引が該当します。

電子取引で保存できる書類には、次のようなものが挙げられます。

国税関係以外の帳簿書類(デジタルデータ化されたもの)

  • 注文書
  • 契約書
  • 納品書
  • 受領書
  • 請求書 など
電子帳簿保存法の改正により、取引先と電子データでやりとりした書類を紙媒体で保存することが禁止されました。また、2024年1月1日からは、決められた保存方法にもとづいてデータを保存しなければなりません。

ただし、電子取引では、もともとデジタルデータ化された書類をやりとりするため、会計システムの導入により管理や保存を自動化しやすいのがメリットです。

以上のように、電子帳簿等保存は法律に基づく要件であるため、適切なデータの保存や管理が求められます。そのため、法的要件に適応した会計システムの導入と、専門家のアドバイスを受けるのがおすすめです。

参考:国税庁「令和3年度改正 電子帳簿保存法」

改正電子帳簿保存法の影響

2022年1月1日に施行された改正電子帳簿保存法では、一部で緩和された要件があるものの、罰則面が強化されるといった影響が出ています。 具体的な影響については、次のような点が挙げられます。

緩和要件1.税務署長の事前承認廃止

電子帳簿保存法が改正される以前は、電子帳簿等保存とスキャナ保存を行う3カ月前に、税務署長の事前承認を受ける必要がありました。 しかし、改正電子帳簿保存法の影響により、電子帳簿等保存とスキャナ保存について、税務署長による事前承認が不要となったため、任意のタイミングで電子帳簿と電子書類の保存が開始できるようになりました。

緩和要件2.タイムスタンプ要件の緩和

電子帳簿保存法が改正される以前は、電子書類を受領した3営業日以内にタイムスタンプ(インターネット上の取引や手続き等が行われた時刻や電子文書の存在した日時を証明するサービス)を付与しなければならず、さらにスキャナ読み取りには担当者の署名も必要でした。 しかし、改正電子帳簿保存法ではタイムスタンプ付与期間が最長2カ月とおおむね7営業日以内と緩和され、さらにスキャナ読み取りの際の署名も不要となりました。 また、クラウドサービスなどで電子書類の訂正や削除の内容が確認できるものや、訂正削除ができないものについては、タイムスタンプを付与する必要がなくなっています。

緩和要件3.検索要件の緩和

電子帳簿保存法が改正される以前は、設定すべき検索要件が、電子帳簿と電子書類の種類によって異なっており、さらに範囲指定検索や組み合わせ検索にも対応する必要がありました。 改正電子帳簿保存法では、設定すべき検索要件が「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3点のみとなっています。また、税務職員が要求するダウンロードに応じられる場合は、範囲指定検索や組み合わせ検索の機能が不要です。

緩和要件4.適正事務処理要件の廃止

電子帳簿保存法が改正される以前は、紙媒体の国税関係書類をスキャナ保存する際に、適正事務処理を踏まえる必要がありました。 改正電子帳簿保存法では、この適正事務処理要件が廃止されたことにより、入力者以外の担当者によるチェックや定期検査が不要となり、スキャンした後、すぐに原本を廃棄できるようになりました。

強化要件1.電子取引の電磁的記録の義務化

電子帳簿保存法が改正される以前は、電子取引における国税関連の取引情報を、紙媒体に出力して保存することが認められていました。 改正電子帳簿保存法では、この措置が廃止され、全て電子データで保存することが義務化されました。ただし、やむを得ない事情で電磁的記録の保存要件を満たせない場合に限り、2023年12月31日までの宥恕期間が設けられています。

強化要件2.重加算税の加重

改正電子帳簿保存法では、国税関連の保存データを隠蔽、仮装した場合には、それによって生じた申告漏れなどに対する重加算税を10%加重する措置が整備されました。 上記のように、一部に緩和要件があるものの、厳罰化された要件もあるため注意が必要です。

※改正電子帳簿保存法の詳しい内容については国税庁の公式ウェブサイトを参照し、さらに詳しい内容については専門家へ確認することをおすすめします。

電子帳簿保存法の注意すべきポイント

上記を踏まえ、以下では改正電子帳簿保存法の注意すべきポイントについて解説します。

法律要件を遵守する

電子帳簿保存を行う際は、法律で定められた要件を遵守する必要があります。具体的な要件には、データの保全性、改ざん防止、保存期間、保存形式などが含まれるため、これらの要件を適切に満たすことが重要です。

詳しい要件については、改正電子帳簿保存法に適応したクラウド会計システムを活用するか、専門家に確認することをおすすめします。

データの信頼性を担保する

電子帳簿はデジタルデータとして保存されるため、データの信頼性が求められます。 そこで、データの改ざんや消失を防ぐために、データのバックアップやセキュリティ対策を適切に実施することが重要です。

改正電子帳簿保存法に適合している、信頼できる会計システムを導入することで、このような課題を解決できます。

保存期間を遵守する

電子帳簿保存法では、帳簿書類の保存期間が定められています。保存期間は各種税法によって異なる場合がありますので、保存期間を遵守することが重要です。 各帳簿の保存については、専門家に相談するか、会計システムで管理するのがおすすめです。

罰則要件に適切に対応する

電子帳簿保存法の要件を遵守しなかった場合には、厳しい罰則を課せられる可能性があります。そこで、適切な帳簿保存とデータの保全を行い、法令を遵守することが重要です。 信頼できる会計システムは定期的なアップデートを実行し、常に法改正に適合した機能を実装しています。このような機能をもつ会計システムを導入することで、煩雑な会計業務の効率化が可能です。

電子帳簿保存法と対象書類のまとめ

このように、電子帳簿保存法の改正に合わせたクラウド会計システムを導入することで、帳簿保存の効率化とコストの削減に期待できます。 ただし、必要な要件を満たすことができなければ、相応の罰則を課せられる可能性があるため注意が必要です。

そこで、クラウド会計システムを導入する際は、セキュリティやデータの管理など多くの要素を考慮する必要があります。そのため、自社の業務内容に合わせて適切なクラウド会計ソフトを選択し、電子帳簿保存法の要件を満たすシステムを選択・導入することが大切です。

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