企業にとって、確定申告と年末調整は、避けて通ることのできない年次の業務です。そのため、これらの手続きの違いや、それぞれの重要性を正確に理解することが重要です。
確定申告とは、個人の所得税を精算するためのもので、原則として個人が自ら行います。一方、年末調整とは言葉の通り、年間の正確な所得税を年末に計算し直し、給与から毎月差し引かれていた所得税(源泉徴収)の過不足を調整するもので、企業側が行います。
確定申告と年末調整の違いを把握し、適切な労務管理を行うことは、企業運営において非常に重要です。また、担当者が適切な知識と手続きを身につけることで、社員の満足度を高め、企業の信頼性を保つことができます。
そこで今回は、確定申告と年末調整の違いについて、労務管理に必要な知識と手続きを詳しく解説します。企業の経営者の方はもちろん、労務管理を担当する方も、ぜひ参考にしてください。
確定申告と年末調整は、どちらも税金の申告手続きですが、対象者や時期、手続きの内容にいくつかの違いがあります。
確定申告とは、1年間の所得に対する税金を計算し、税務署に申告・納付する手続きのことです。主に自営業者やフリーランスの方が対象となりますが、給与所得者でも副業の収入が一定額を超える場合や、医療費控除などの特定の控除を受ける場合には確定申告が必要となります。
確定申告の主な目的は以下の通りです。
確定申告の期間は通常、翌年の2月16日から3月15日までです。
一方、年末調整とは、会社員やパート、アルバイトなど給与所得者が対象で、勤務先が行う手続きのことです。
年末調整では、毎月の給与から予定された所得税が天引き(源泉徴収)されますが、これは概算の金額です。そこで、年末に実際の所得や控除を考慮して正確な税額を計算し、過不足を調整します。この手続きが年末調整です。
年末調整を行う過程で、配偶者控除や扶養控除、保険料控除などの所得控除が適用されます。
労務管理における確定申告と年末調整の役割は、従業員の所得税に関する正確な申告と納税を確保することです。
ここでは、それぞれの役割について解説します。
確定申告は、個人が自ら行う手続きで、給与所得者だけでなく、個人事業主やフリーランス、副業で一定額以上の収入がある人も含まれます。確定申告では、全ての所得とそれにかかる税額を申告し、必要に応じて納税または還付を受けます。
特に、副業の所得が20万円を超える場合や、医療費控除、寄付金控除など年末調整では適用されない控除を受ける場合に必要です。
年末調整は、企業が従業員に代わって行う手続きで、1年間の所得税の過不足を調整するものです。これにより、従業員が支払うべき正確な税額が計算され、過払いがあれば還付され、不足があれば追加徴収されます。
年末調整は、従業員が1年間に受け取った給与に基づいて行われ、各種控除(生命保険料控除や地震保険料控除など)が適用されます。
労務管理の観点から確定申告や年末調整で果たす役割は、従業員の税務コンプライアンスを支援し、企業としての法的義務を果たすことです。また、従業員が適切な控除を受けられるように正確な情報提供を行うことも、労務管理の役割の一つです。
次に、会社員に確定申告が必要となるケースとその手続きについて解説します。
会社員が確定申告を行う必要がある主なケースには、次の6つが挙げられます。
この場合、自分自身で確定申告を行う必要があります。
副業の売上から経費を引いた年間の利益額が20万円を超えると、確定申告が必要です。
一時所得の収入金額から、それを得るために支出した金額を差し引いた額が50万円を超えると、確定申告が必要です。
誤りがあった場合は、確定申告で修正する必要があります。
転職により前職の源泉徴収票を提出していない場合、自分で確定申告を行います。
退職後に再就職していない、または事業を始めた人は、自分で確定申告を行う必要があります。
確定申告の手続きは、以下のステップに従って行います。
まずは、確定申告で必要となる源泉徴収票や各種経費に関する領収書、副業の収入に関する記録などを準備します。
次に、申告書を作成します。申告書は、国税庁の確定申告書等作成コーナーを利用するか、税務署で提供される書式を使用しましょう。
申告書の提出は、郵送または国税庁のe-Taxシステムを通じてオンラインで提出可能です。
申告結果に基づき、納税または還付を受けます。
確定申告は通常、毎年2月16日から3月15日までの期間に行われますが、期限前に提出することも可能です。
詳細な手続きや必要書類については、国税庁のウェブサイトや各地の税務署でも確認できます。
会社員でも確定申告をした方が良いケースには、次の6つが挙げられます。
医療費控除は、年間の医療費が一定額を超えた場合に受けられる控除です。具体的には、自己または生計を一にする家族のために支払った医療費が10万円(または総所得金額の5%)を超える場合、その超過分が控除対象となります。
対象となる医療費には、診療費、治療費、入院費、通院のための交通費、医薬品代などが含まれます。ただし、美容整形や予防目的の費用は対象外です。
確定申告の際には、医療費控除の明細書を提出する必要があります。
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンを利用してマイホームを新築、取得、または増改築した場合に受けられる控除です。初年度は確定申告が必要で、2年目以降は年末調整で申請できます。
控除額は住宅ローンの年末残高の一定割合で計算され、最大で13年間適用されます。
必要書類には、住宅ローンの年末残高証明書、登記事項証明書、不動産売買契約書などがあります。
寄附金控除は、国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対する寄附金が対象です。寄附金控除には、所得控除と税額控除の2種類があります。
所得控除は、寄附金の合計額から2,000円を引いた金額が控除されます。一方、税額控除は、寄附金の合計額の一定割合が所得税額から控除される仕組みです。
確定申告の際には、寄附金の受領証明書を添付する必要があります。
年末調整で申告し忘れた控除がある場合、確定申告でその控除を申請することが可能です。例えば、生命保険料控除や地震保険料控除、配偶者控除などが該当します。
確定申告を行うことで、払い過ぎた税金が還付される可能性があります。源泉徴収票を基に、申告し忘れた控除を確定申告書に記入しましょう。
損益通算とは、同一年度内で発生した利益と損失を相殺することです。例えば、株式取引で損失が出た場合、その損失を他の所得(不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得)と通算することで、課税所得を減らすことができます。
損益通算を行うためには、確定申告書に損益通算の適用を記載し、必要な書類を添付します。
災害や盗難、横領などで資産に損害を受けた場合、雑損控除を受けることが可能です。
雑損控除の対象となるのは、生活に通常必要な資産で、損害金額や災害関連支出の金額から保険金などで補填される金額を差し引いた額が控除されます。
確定申告の際には、損害の証明書類や支出の領収書を添付する必要があります。
年末調整を正確に行うためには、以下のチェックリストを参考にしてください。これにより、必要な書類や手続きを漏れなく確認できます。
このチェックリストを活用することで、年末調整のミスを減らし、スムーズに手続きを進めることができます。なお、年末調整に関する疑問や不明点があれば、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
労務管理における確定申告と年末調整の税務上の注意点は、以下の通りです。
年末調整は、原則として給与所得者全員が対象ですが、年間給与収入が2,000万円を超える人や、2カ所以上から給与の支払いを受けている人などは対象外となる場合があります。
従業員から提出された書類に基づき、生命保険料控除、配偶者控除、扶養控除などの各種控除を適切に適用する必要があります。
副業や不動産所得などで一定額以上の所得がある場合、医療費控除や住宅ローン控除を受ける場合など、確定申告が必要なケースを理解し、従業員に適切なアナウンスを行うことが重要です。
年末調整に必要な書類を正確に管理し、従業員からの提出漏れがないようにすることが求められます。
年末調整では、従業員の家族構成や各種控除が変化するため、提出された書類をもとに毎年処理をしていく必要があります。
年末調整は毎年12月に行われるため、事前にスケジュールを確認し、必要な書類の配布や説明を行うことが大切です。
税務上の手続きは法令に基づいて行われるため、税務署や国税庁の指導に従い、最新の情報を確認することが必要です。
これらの注意点は、労務管理において正確な税務処理を行うために非常に重要です。
A1.年末調整は、1年間の所得税額を確定させるために行われます。給与から天引きされる所得税は概算であるため、年末調整によって正確な税額を計算します。
年末調整の対象者は、1年を通じて同じ会社に勤務している人、年の途中で就職し年末まで勤務している人などです。
A2.確定申告は、年末調整で処理されない所得がある場合や、複数の収入源がある場合に必要です。また、医療費控除や寄付金控除など、年末調整では申告できない特定の控除を受けるためにも確定申告が必要です。
A3.年末調整は勤務先で行われ、給与所得者の所得税額を確定します。一方、確定申告は個人が税務署に行き、給与所得以外の所得も含めた税額を申告します。
なお、確定申告では、年末調整に比べ、より多くの控除が受けられます。
A4.年末調整では、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、保険料控除、障害者控除、ひとり親控除などの所得控除が処理されます。これにより、正確な所得税額を計算できます。
A5.確定申告では、医療費控除、寄付金控除、雑損控除、特定支出控除など、年末調整では申告できない控除を申告できます。これにより、所得税額が減少し、還付を受けることができる可能性があります。
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