企業がグローバル化を進める中では、会計基準の国際化も避けて通れない重要な課題の一つです。特に、IFRS(国際会計基準)と日本会計基準の違いは、企業の財務報告に大きな影響を与えるため、しっかりと確認する必要があります。
ただ、IFRSの導入は国際的な競争力を高める一方で、導入にはコストや手間がかかることも事実です。そこで、日本会計基準との違いを理解し、適切な導入方法を選ぶことが重要です。
本記事では、IFRSと日本会計基準の違いや導入方法、メリット・デメリットを解説しますので、ぜひ参考にしてください。
IFRS(国際財務報告基準)とは、国際会計基準審議会(IASB)が策定する会計基準の総称です。これらの基準は、世界中の企業が財務報告を行う際に一貫性と透明性を確保するために設けられています。
以下では、IFRSの基本的なポイントを4つ紹介します。
IFRSは、特定の国や地域に依存せず、国際的に適用されることを目指しています。
IFRSは具体的なルールよりも、原則に基づいて財務報告を行うことを重視しています。これにより、企業は自社の状況に応じた柔軟な対応が可能です。
IFRSでは、損益計算書よりも貸借対照表を重視し、資産と負債の公正な評価を重視しています。
IFRSの導入により、異なる国の企業間で財務情報の比較が容易となり、投資家やその他の利害関係者(ステークホルダー)に対して一貫性のある情報を提供できます。
「公認会計士 中田清穂のIFRS徹底解説」のコラムではさらに詳しい内容を解説していますので、ぜひご参照ください。
日本では現在、上場企業の一部がIFRSを任意で適用している状況です。企業がIFRSを導入することで、国際的な資金調達の機会が広がり、グローバルなビジネス展開がしやすくなると考えられています。
関連記事:ASBJ(企業会計基準委員会)とは?組織を設立した目的や役割を徹底解説
下記の資料では、IFRS第18号「財務諸表における表示及び開示」について、公認会計士がわかりやすく解説しています。無料でダウンロードできますので、ぜひ参考にしてください。
IFRSは「原則主義」を採用しており、基本的な会計原則を示すにとどめ、具体的な数値基準や判断基準は企業に委ねられているのが特徴です。一方、日本の会計基準は「細則主義」で、詳細な数値基準や判断基準が明確に定められています。
また、IFRSでは貸借対照表を重視し、資産と負債の評価を時価で行うことが多いのに対し、日本基準では取得原価を基準とすることが一般的です。さらに、IFRSには特別損益の概念がなく、すべての収益と費用を包括利益として扱いますが、日本基準では特別損益が存在し、通常の営業活動とは別に報告されます。
これらの違いにより、IFRSはグローバルな財務報告に適しており、日本基準は国内の法規制や税務に対応していると言えるでしょう。
以下では、IFRSと日本会計基準との主な違いを比較します。
IFRS |
日本会計基準(JGAAP) |
|
基準の性質 |
原則主義 |
細則主義 |
収益認識 |
履行義務が充足された時点で収益を認識 |
収益が実現した時点で計上(実現主義) |
貸借対照表の評価 |
時価評価 |
取得原価 |
のれんの処理 |
非償却 |
20年以内で定額償却 |
固定資産の耐用年数 |
企業が使用する予定の期間 |
法人税法の耐用年数 |
研究開発費 |
研究費は発生時に費用処理、開発費は要件を満たす場合のみ資産計上 |
すべて発生時に費用処理 |
特別損益 |
特別損益の概念なし |
特別損益の概念あり |
関連記事:新リース会計基準におけるIFRSの重要性とポイント、企業への影響を解説
IFRS(国際財務報告基準)を導入することには、いくつかの重要なメリットがあります。以下に主なメリットをまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
IFRSは世界中で広く採用されているため、企業の財務情報が国際的に比較しやすくなります。これにより、海外の競合他社との比較が容易となります。
IFRSを採用することで、海外の投資家からの資金調達がしやすくなります。国際的な基準に基づいた財務報告は、投資家にとって信頼性が高く、理解しやすいからです。
海外に子会社や支店を持つ企業にとって、IFRSを採用することで、グループ全体の財務情報を統一して管理しやすくなります。これにより、経営判断が迅速かつ正確に行えるようになるでしょう。
IFRSを導入することで、企業の透明性と信頼性が向上し、投資家や取引先からの評価が高まると考えられます。
IFRSは公正価値の計測や包括的な情報開示を求めるため、企業の実態に即した財務状況を把握しやすくなります。
上記のように、IFRSの導入は、特にグローバルに展開する企業にとって大きなメリットがあると言えるでしょう。
下記の資料では、経理・財務部門で日常業務に活用している「Excel」に着目し、会計システムとExcelの併用がもたらす効率的な連携方法のポイントをまとめています。無料でダウンロードできますので、ぜひ参考にしてください。
一方で、IFRSを導入することには、次のようなデメリットも存在します。
IFRSへの移行には、システムの変更やスタッフのトレーニングなど、多大なコストがかかる可能性があります。
IFRSは原則主義を採用しているため、具体的なルールが少なく、企業ごとに解釈や適用が異なる場合があります。これにより、会計処理が複雑化する場合があります。
IFRSでは詳細な注記や開示が求められるため、財務報告に必要な事務作業が増加します。
日本では、IFRSと日本会計基準(JGAAP)の両方で財務諸表を作成する必要がある場合があり、これが追加の負担となる可能性があります。
IFRSは定期的に改訂されるため、最新の基準に対応するための継続的な努力が求められます。
上記のデメリットを考慮しつつ、企業は自社の状況に応じてIFRSの導入を検討する必要があります。
IFRS(国際財務報告基準)を導入する際の手順は、一般的に以下のステップに分けられます。
まずは、IFRS導入の目的やスコープを明確にし、プロジェクトチームを編成します。そして、現行の日本基準(J-GAAP)とIFRSの差異を分析し、影響を評価します。
次に、IFRSに基づく会計方針を策定し、グループ全体で統一します。必要なシステムやプロセスの変更を行い、IFRSに対応できる環境を整えましょう。
新たなシステム環境が整ったら、関係者に対する教育やトレーニングを実施し、IFRSの理解を深めます。IFRSに基づく試行決算を行い、実際の運用に向けた準備を整えましょう。
実際に運用する段階では、IFRSとJ-GAAPの両方で財務諸表を作成し、比較・検証を行います。そして、運用中に発生する課題を解決し、プロセスの改善を続けましょう。
これらのステップを通じて、企業はIFRSの導入をスムーズに進めることができます。具体的な手順や詳細は、企業の規模や業種によって異なる場合がありますので、専門家のアドバイスを受けるのがおすすめです。
下記の資料では、多岐に渡る業務のなかで常にスピード感と質の両軸が求められている経理・財務部門の主な「11の課題」について、どのような対応が必要かを分かりやすく解説します。無料でダウンロードできますので、ぜひ参考にしてください。
IFRSの導入にはいくつかの課題がありますが、それぞれに対する解決策も存在します。以下に主要な課題とその解決策をまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
IFRSに対応するためには、既存の社内管理体制を見直す必要があります。特に、会計システムやプロセスの変更が求められます。
そこで、専門家のアドバイスを受けながら、段階的にシステムやプロセスを更新しましょう。また、社内の会計チームに対するトレーニングを実施し、IFRSに対応できるスキルを身につけさせることが重要です。
経営者層がIFRSの重要性や影響を十分に理解していない場合には、導入がスムーズに進まないことがあります。
そこで、経営者向けのセミナーやワークショップを開催し、IFRSのメリットや導入の必要性を説明します。経営者が積極的に関与することで、全社的なサポートが得られやすくなるでしょう。
過去の財務データをIFRS基準に基づいて再計算する必要がありますが、これには多大な労力がかかります。
そこで、専門のコンサルタントを活用し、効率的に過去データの再計算を行います。また、必要に応じて外部の会計事務所などと連携するのも有効です。
IFRSと日本の税法との間には差異があるため、調整が必要です。
そこで、税務専門家と協力し、IFRS導入後の税務処理について詳細に検討します。必要に応じて、税務当局との協議を行い、適切な対応策を講じることが重要です。
上記のように、IFRS導入には多くの課題が伴いますが、適切な準備と対応を行うことで、これらの課題を克服することが可能です。企業全体で協力し、段階的に導入を進めることが成功のポイントとなります。
下記の資料では、累計10,345社以上が導入している「経理部・人事部ファースト」の思想に基づいて開発された、圧倒的な使いやすさを実現している「SuperStream-NX Cloud」について解説しています。無料でダウンロードできますので、ぜひ参考にしてください。
以下では、IFRSに関するよくある質問をQ&A形式で紹介します。ぜひ参考にしてください。
A1.IFRS(国際財務報告基準)は、国際会計基準審議会(IASB)が発行する会計基準で、企業の財務報告を国際的に統一することを目的としています。
A2.IFRSと日本の会計基準の主な違いには、収益認識、減損会計、のれんの会計処理などが挙げられます。例えば、IFRSでは収益認識が原則ベースで行われるのに対し、日本基準ではルールベースで行われることが多いです。
A3.IFRSへの移行により、国際的な投資家に対する透明性が向上し、資金調達が容易になることが期待されます。また、複数の国で事業を展開する企業にとっては、会計基準の統一により報告の効率が向上します。
A4.IFRSでは、資産の減損を早期に認識することが求められます。具体的には、資産の回収可能価額が帳簿価額を下回る場合、その差額を減損損失として計上します。
A5.IFRSでは、のれんは償却されず、毎年減損テストが行われます。これにより、のれんの価値が適切に反映されるようにしています。
※「のれん」とは、企業買収や合併の際に発生する無形資産の一つで、買収価格が企業の純資産価値を上回る部分を指します。具体的には、企業のブランド力、技術力、顧客ネットワーク、立地条件など、目に見えない資産価値を表すものです。
のれんは会計上、無形固定資産として扱われ、通常は一定期間にわたって償却されますが、国際会計基準(IFRS)では償却せず、定期的に減損テストを行うことが求められます。
ビジネスの進化において、会計システムのリプレイスは決して軽視できない重要な決断です。そこで下記の資料では、経理・財務部門と情報システム部門の方たちに向けて、リプレイス時に組織全体を見直す戦略的アプローチを提案しています。無料でダウンロードできますので、ぜひ参考にしてください。
このように、IFRSと日本会計基準には大きな違いがあることがわかります。そのため、大手企業においても、IFRSの導入になかなか着手できないとお悩みの方も多いのではないでしょうか。
そこでおすすめしたいのが、キヤノンITソリューションズの「SuperStream-NX」です。
キヤノンITソリューションズの「SuperStream-NX」は、IFRS(国際会計基準)の導入において非常に有用なソリューションです。
SuperStream-NXは、日本基準とIFRSの両方に対応しており、異なる会計基準を採用する企業でも柔軟に対応できます。さらに、固定資産管理機能が充実しており、減価償却費や耐用年数の設定をそれぞれの基準に適合させることが可能です。
保守契約を締結している場合、IFRS対応の機能追加やパッチ提供が無償で行われるため、追加費用を抑えることができます。また、最新バージョンへのアップデートもスムーズに行えるため、常に最新の会計基準に対応したシステムを維持できます。
このような理由から、SuperStream-NXはIFRSの導入において、コストパフォーマンスと機能性の両面で優れた選択肢となるでしょう。
下記のページでは、「経営基盤ソリューション SuperStream-NX」の詳しい内容を解説しています。登録なしでご覧いただけますので、この機会にぜひご参照ください。
経理業務のDXを進めたいとお考えの方は、オンラインでお気軽に資料請求してみてください。
また、自社に必要なシステムの種類や選び方がわからない場合は、いつでもキヤノンITソリューションズにご相談ください。貴社に適したソリューションを提供いたします。
国内1万社以上が導入する「SuperStream-NX」。下記の動画では、クラウド活用、システム連携、法改正対応の3つのポイントを解説しています。ぜひご視聴ください。