2026年以降※に改正が予定されている「新しいリース会計基準案(以下・新リース会計基準)」の導入は、国際財務報告基準(IFRS)の理解を深め、企業運営における透明性を高めるための重要な要素です。
この基準は、企業の財務諸表におけるリース取引の表示方法に大きな変更をもたらします。特に、オフバランスシート(貸借対照表に計上しない)取引の扱いや、資産と負債の認識に関する新たな要件は、企業にとって注目すべきポイントです。
これらの変更は、投資家やステークホルダーに対する情報の透明性を向上させる一方で、企業の財務戦略や業績評価にも影響を及ぼします。
そこで今回は、新リース会計基準におけるIFRSの重要性とポイント、企業への影響を解説します。リース会計の処理が必要となる企業の担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
※新リース会計基準の適用時期については、2027年以降に延期されるとの見解もあります。
新しいリース会計基準は、企業がリースを利用した際に採用する会計基準であり、リース契約に関連する資産と負債を計上するための基準です。2026年以降に、このリース会計基準が改正される見込みです。
以下に、新リース会計基準についての詳細を説明します。
リース会計基準は、企業がリース契約を締結して、機械装置などの高額な固定資産を導入する際に採用する会計基準です。
日本では、リース会計基準が1993年に初めて公表・適用されました。その後、企業がリース契約を採用するケースが増えたことから、2007年に大幅な改正が行われ、現在に至っています。
なお、日本の会計基準は、国際会計基準(IFRS)とアメリカの会計基準を参考にしています。
新リース会計基準では、オペレーティングリース取引の対象物を資産、リース料を負債として計上することが求められます。これは従来までの賃借料やリース料での処理とは異なるものです。
ただし、すべてのリース契約が資産や負債に計上されるわけではありません。重要性に乏しいリース契約は、引き続き賃借料かリース料として計上することが認められています。
新リース会計基準の改正により、以下の影響が考えられます。
リース契約に伴う資産除去債務の計上やリース料の処理が複雑になります。
資産と負債の計上により、自己資本比率が変動する可能性があります。
税法との整合性を保つために、リース契約の取り扱いに注意が必要です。
国際財務報告基準 (IFRS) は、国際会計基準審議会(IASB)が策定した会計基準であり、企業がリース契約を締結して、機械装置などの高額な固定資産を導入する際に採用する基準です。IFRSは、国ごとに異なる会計基準の収斂を目指したもので、2001年にIASB発足に伴い策定されました。
以下は、IFRSの概要と重要なポイントです。
IFRS(International Financial Reporting Standards)は、IASBが策定する国際的な会計基準です。
前身の国際会計基準委員会(IASC)時代に作られた会計基準は「国際会計基準(IAS)」と呼ばれていました。IASは一部が現在も有効ですが、IASBに継承されています。
IFRSは、企業の財務諸表の作成・公表に関する基準です。
国際的な連携を念頭に置きつつ、世界的な基準を目指しています。
欧州連合(EU)がEU域内上場企業の連結財務諸表にIFRSの適用を義務付け、世界的に「アドプション」ないし「フル・コンバージェンス」への方向転換が加速化しています。
米国や日本でもIFRSの採用に向けた議論が進行中です。
新リース会計基準の適用により、リースのメリットにいくつかの変化が生じます。以下に詳細を解説します。
新リース会計基準では、ほとんどのリース取引を原則としてオンバランス処理しなければなりません。つまり、リース資産とリース債務が財務諸表上に表示されることになります。
これにより、企業の財務状況がより正確に反映され、投資家やステークホルダーが適切な投資や意思決定を行うことが可能となります。
新リース会計基準は、投資家が企業の経営実態を正しく把握できるようにすることを目的としています。
これにより、企業のリース取引に対する財務影響がより明確になり、投資判断に役立ちます。
国際会計基準(IFRS)や米国会計基準でも既にリース取引のオンバランス処理が義務づけられており、日本も足並みをそろえています。
新リース会計基準では、日本の会計基準を使う上場企業も対象となるため、企業の経営実態を国際的な基準に合わせて報告できるようになります。
新リース会計基準の適用には準備期間が必要であり、一部の業界からは2026年からの適用に異論が出ています。これは、実態が変わらないのに資産が増えることで、企業の財務指標(例:総資産利益率)が悪化する可能性があるためです。そこで、新リース会計基準の適用時期について、慎重な対応が求められている状況です。
ただし、企業においては新リース会計基準の適用に向けて適切な準備を行い、正確な情報を提供できるよう努めるべき段階にあると言えるでしょう。
新リース会計基準の適用においては、IFRSの要件との整合性が非常に重要です。そこで以下では、主要となる新リース会計基準の適用ポイントについて解説します。
新基準では、リースを含む契約を特定し、リース取引として会計処理するかどうかの判断が必要です。これは、特定された資産の使用から生じる経済的利益のほとんどを享受し、その使用を支配する権利が顧客に移転しているかどうかに基づきます。
新基準では、借手のリース分類が廃止され、すべてのリースが原則としてオンバランス処理されます。これにより、貸借対照表上でのリース資産とリース債務の表示が増加します。
リース開始日には、リース負債の算定と使用権資産の取得原価の算定が行われます。このプロセスには、割引率の適用や前払いリース料、付随費用、原状回復費などの考慮が含まれます。
特定の短期リースや少額リース資産については、例外的にオフバランス処理が許可されています。これにより、一部のリース取引はオンバランス処理の対象外となる可能性があります。
新リース基準は、現行のIFRS第16号「リース」(リース取引に関する国際財務報告基準)との整合性を重視しており、国際的な会計基準との調和を図っています。これにより、グローバルな会計基準への適応が促進されます。
これらのポイントを理解し、適切に適用することで、企業の財務報告の透明性が向上し、投資家やステークホルダーに対する信頼性が高まるでしょう。また、国際的なビジネス環境においても、会計処理の一貫性が保たれることになります。
このように、企業においては、新基準の適用に向けた十分な準備と理解が求められます。
新リース会計基準を実務に応用するためには、以下のような項目を確認する必要があります。
まずは、自社にリース契約が存在するかどうかを確認します。リースとサービス契約の区別を明確にしましょう。
リースされる資産が特定されているか、または特定の資産の使用権が顧客側に与えられているかを確認します。
リース期間を正確に決定し、延長オプションの可能性を考慮に入れます。
リース料の計算方法を理解し、変動リース料が含まれる場合の取り扱いを確認します。
リース負債の現在価値を計算するための割引率を決定します。
リース開始日におけるリース資産とリース負債の初期計測を行います。
リース資産と負債の減価償却および利息費用の計算方法を確認します。
リース期間やリース料の変更があった場合の再評価のプロセスを確認します。
財務諸表におけるリース取引の開示要件を確認し、適切な情報を開示します。
リース会計基準に関連する内部統制の確立と維持を行います。
リース会計基準の適用に必要なシステムやプロセスを整備します。
関連するスタッフに対して、新リース会計基準の知識と適用に関する教育とトレーニングを実施します。
上記のチェックリストは、企業が新リース会計基準の適用に向けて適切な準備を行い、正確な情報を提供できるよう努めるためのガイドラインとなります。ただ、実務上の論点や留意点については、専門家の意見を求めることも重要です。
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