製造業の経理業務には、原価計算や棚卸資産の評価など、特有の複雑な処理が多数存在します。加えて、工場で発生する膨大な数の伝票処理にも時間と手間が必要です。
このような手作業が中心の業務は、人的ミスのリスクが高く、生産性の低下にもつながりやすいのが特徴です。
しかし、経理DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みが進めば、RPAやAI※などのテクノロジーを活用することで、業務の自動化や高度化を実現可能です。ただし、製造業で経理DXを進めるには、製造現場の複雑な工程データを的確に扱えるシステムの導入が不可欠となります。
なぜなら、製造業の経理DXを成功させるには、現場の実態に合わせたシステム導入と、業務フローの見直しが欠かせないからです。
そこで今回は、製造業における経理業務の課題を解決する方法と経理DXの進め方を解説します。これから経理DXを進めようとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
※RPA(Robotic Process Automation)とは、定型的で反復性の高い業務を自動化するためのソフトウェアロボットのこと。一方、AI(Artificial Intelligence)とは、人工知能と呼ばれる言語の理解や推論、問題解決などの知的行動をコンピュータに行わせる技術のことです。
経理DXとは、経理業務にデジタル技術を活用して、業務プロセスの効率化や情報の可視化、意思決定のサポートなどを行う取り組みのことを指します。
経理DXには、以下のようなメリットがあります。
経理DXで自動化された業務プロセスやデジタルツールを活用することで、経理業務の効率を向上させることが可能です。例えば、自動請求書処理や仕訳帳の自動入力、経費精算の自動化などが挙げられます。これにより、経理にかかる作業時間を短縮し、生産性を向上させることができます。
手作業で行う経理作業は、人為的ミスのリスクが高くなります。そこで経理DXを進めることで、業務プロセスの多くが自動化され、ヒューマンエラーを最小限に抑えることが可能です。これにより、正確なデータ入力や計算が保証され、信頼性が向上します。
経理DXの促進により、人件費や紙の使用などのコストを削減できます。なぜなら、自動化されたプロセスによって人員配置を最適化し、無駄な作業を削減できるからです。また、電子文書の利用により、印刷や保管コストも削減できます。
経理DXでは、データを一元的に管理し、さまざまなデータをリアルタイムで可視化して共有できる環境を提供します。クラウドベースの経理システムを活用すれば、複数の部門や拠点でのデータ共有が容易となり、迅速な意思決定に役立ちます。
経理DXを進めるには、まずは自社の課題を明確化し、適切なITツールを導入することが重要です。その後、ペーパーレス化や業務の自動化を進め、データの管理・可視化を実現することで、経理業務の変革を図ることができます。
経理DXによって、企業は競争上の優位性を確立し、経営陣のスムーズな意思決定を促進できます。
製造業の経理業務で直面する課題として、次の5つが挙げられます。
以下で、それぞれの内容と解決方法を解説します。
製造業では、製品ごとの原価計算が非常に複雑です。なぜなら、原材料費や労務費用、製造間接費などの多様なコスト要素を考慮し、正確な製品原価を算出する必要があるからです。
また、棚卸資産の評価も、市場価格の変動や在庫の質、量に応じて適切に行う必要があり、これらの作業は専門知識を要し、時間もかかります。
そこで、効果的なITツール(経理ソフトウェアやERPシステム)を活用して原価計算を自動化し、正確な評価を行いましょう。そのためには、経理担当者に原価計算の専門知識を提供し、トレーニングを行う必要があります。
製造現場では、日々大量の伝票が発生します。これらの伝票を処理するには大量のデータ入力と管理が必要で、伝票の紛失や入力ミスが発生するリスクも高まります。これにより、経理業務の効率が低下する可能性も高まるでしょう。
そこで、効果的な会計システムを導入して伝票のデジタル化と自動処理を行い、効率的に伝票を処理します。
経理業務は細かく緻密な作業が求められるため、人的ミスが発生しやすい業務の1つです。もしミスが発生した場合には、それを訂正するための追加作業が必要となり、結果として生産性が大きく低下してしまいます。
そこで、適切な会計システムを導入して自動請求書処理や仕訳帳の自動入力、経費精算の自動化などを実現し、人為的なミスを減らすことが重要です。
製造現場で発生するデータは、その性質上複雑で多岐にわたります。これらのデータを経理システムで効率的に扱うには、システムのカスタマイズや適切なデータ構造の設計が必要です。しかし、企業の特徴や業務内容に即したシステムを導入することは、現実的に難しい場合が多いでしょう。
そこで、センサーやIoTデバイスを活用し、現場のさまざまなデータをリアルタイムで経理システムに連携します。これにより、現場のデータ管理と経理業務の大幅な効率化を実現可能です。
DXは経理業務の効率化に不可欠ですが、既存の業務フローが改善されない限り、新しい技術の導入は困難です。もし、業務プロセスの見直しや改善が遅れてしまうと、DXの障壁となります。
そこで、クラウド会計システムを導入して社内のフォーマットを統一し、経理データの可視化を行いましょう。これにより、作業の自動化と正確性が高まるだけでなく、デジタル化した情報を効率的に共有できます。
RPAとAIの活用は、製造業の経理DXを進める上で、業務の効率化と精度向上に大きく貢献する重要な要素です。そこで以下では、それぞれの活用ポイントを解説します。
製造現場に適したRPAの活用ポイントには、次の4つが挙げられます。
RPAは、注文書や納品書などの伝票入力を自動化し、人的ミスを減らし、速度を上げます。
在庫データの自動更新や、在庫レベルに基づいた自動発注システムを構築できます。
定期的な財務報告や生産報告書を自動で作成し、時間を節約します。
RPAを用いて経理プロセスを標準化し、属人化を防ぎます。
製造業におけるAIを使った原価計算の自動化と高度化について、以下の4つのポイントを解説します。
AIは、IoTデバイスから収集された大量のデータを分析し、原価計算に必要な情報を提供します。これにより、原材料の使用量、機械の稼働時間、エネルギー消費などの精密な追跡が可能になり、原価計算の精度が向上します。
AIを用いて、製造プロセスにおけるバラツキを分析し、原価に影響を与える要因を特定します。回帰分析などの統計手法を活用して、原価に影響する要素とその度合いを明らかにし、原価削減のための改善点を見つけ出すことが可能です。
AIは過去のデータを基に、原価計算のための予測モデルを構築します。これにより、将来の原材料価格の変動や生産効率の変化を予測し、より正確な原価計算が可能となります。
AIとBI(ビジネス・インテリジェンス)ツールを組み合わせることで、リアルタイムな原価管理を実現可能です。これにより、製造業者が常に最新の原価情報を把握することができるようになり、迅速な意思決定が可能となります。
これらのポイントを踏まえ、AIを活用した原価計算の自動化と高度化は、製造業におけるコストの削減と効率化、そして競争力の向上に大きく貢献します。
このように、RPAが繰り返し発生するルーティンワークを自動化し、AIは複雑なデータ分析を通じて意思決定を支援するという重要な役割を果たすのです。
製造業の経理DXで実現できることとして、以下の8つの要素が挙げられます。
それぞれ解説します。
データ連携と一元管理により、生産プロセスが効率化され、無駄な作業が削減されます。これにより、生産性が大幅に向上します。
リアルタイムでのデータ分析を通じて、製造プロセスの品質管理が強化され、製品の品質が向上します。
効率化されたプロセスと改善された品質管理により、余分なコストが削減され、全体的なコストダウンが実現します。
自動化とデジタル化により、人手を要する作業が減少し、人手不足の問題が緩和されます。
データとプロセスの標準化により、個人に依存した作業から脱却し、業務の継続性と安定性が確保されます。
一元管理されたデータは、可視化されやすくなり、意思決定に必要な情報が迅速に提供されます。
生産性と品質の向上は、顧客への迅速な対応と高品質な製品提供を可能にし、顧客満足度を高めます。
上記のすべての要素が組み合わさることで、市場における競争優位性が獲得され、企業の成長と発展が促進されます。
これらのポイントは、製造業における経理DXの推進において重要な役割を果たし、企業の持続可能な成長と競争力の強化に寄与します。
キヤノンITソリューションズが提供する「SuperStream-NX」は、経理・会計業務を効率化するためにおすすめのクラウド会計システムです。以下にその理由を解説します。
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企業が経営状況をリアルタイムに把握することで、基幹システムの戦略的活用を促進し、的確な意思決定を行えるよう、強力に支援します。
過去の伝票を呼び出しコピー入力する機能や、自動的に洗替処理する機能により、入力処理が大幅に効率化されます。また、必要な仕訳項目だけを選択してCSVやPDF形式で出力できるため、Excelなどへも迅速に展開できます。
一般的なスキルだけでなく、企業独自のスキルを人事データベースで一元管理できるため、社員ごとの適切な目標設定や配置が可能となります。また、マイナンバー管理や年末調整・社会保険等の各種帳票発行機能も備えています。
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