利益率とは、企業の収益力を表す指標の1つです。売上高に対する利益の割合を示すことで、企業の経営効率や競争力を評価できます。
しかし、利益率には種類があり、計算方法も異なります。また、業種によっても利益率の目安となる水準も変わります。そのため、利益率を正しく理解し、自社の状況に合わせて改善策を考えることが、経営の成功につながる秘訣です。
そこで今回は、利益率の種類と計算方法、業種別の目安と高めるためのポイントを解説します。自社の利益率を改善したいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
利益率とは、売上高に対する利益の割合を示す指標であり、企業がどれだけ効率的に利益を生み出しているかを把握するための基本的な尺度です。
利益率は経営効率やコスト構造の健全性を測るために不可欠であり、経営戦略の立案や資源配分、将来の投資判断などにも大きく関わります。
利益率は、企業の収益性や競争力を客観的に評価するための重要な指標です。
利益率が高いほど、少ないコストで多くの利益を上げていることを意味し、企業の財務体質や投資余力にも好影響を与えます。
また、利益率の推移や同業他社との比較を通じて、自社の経営状況や改善点を明確にできます。
利益率にはいくつか種類があり、その一つが粗利率(売上総利益率)です。
粗利率は売上高に占める売上総利益(売上高-売上原価)の割合を示し、商品やサービスそのものの収益力を測ります。
一方、利益率全体は営業利益率や純利益率なども含み、企業活動全体の収益性を多面的に評価する指標です。
利益には、主に「売上総利益(粗利益)」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」の5つの種類があります。これらを理解することは、自社事業の業績を測る上で、非常に重要な要素です。
以下では、利益率の種類5つが表す意味を解説します。
売上総利益とは、粗利益とも呼ばれる、売上高から売上原価を引いた利益のことです。売上総利益は、商品やサービスの付加価値や魅力度を表します。
営業利益とは、売上総利益から販売費や一般管理費を引いた利益です。営業利益は、営業活動の効率や収益力を表します。
経常利益とは、営業利益に営業外収益や営業外費用を加減した利益です。経常利益は、企業全体の収益力や安定度を表します。
税引前当期純利益とは、経常利益に特別損益を加減した利益です。税引前当期純利益は、税金を支払う前の最終利益のことです。
当期純利益とは、税引前当期純利益から法人税等を引いた利益です。当期純利益は、税金を支払った後の最終利益のことです。
上記で解説したそれぞれの利益率の計算方法は、以下のとおりです。
売上総利益率(粗利率)=売上総利益(粗利)÷売上高×100%
売上高営業利益率=営業利益÷売上高×100%
経常利益率=経常利益÷売上高×100%
税引前当期純利益率=税引前当期純利益÷売上高×100%
当期純利益率=当期純利益÷売上高×100%
次に、上記の式を使って、利益率の計算をしてみましょう。例として、以下のような損益計算書があるとします。
項目 |
金額(単位:万円) |
売上高 |
10,000 |
売上原価 |
4,000 |
売上総利益(粗利) |
6,000 |
販売費 |
1,000 |
一般管理費 |
1,000 |
営業利益 |
4,000 |
営業外収益 |
200 |
営業外費用 |
100 |
経常利益 |
4,000 |
特別損益 |
▲100 |
税引前当期純利益 |
4,000 |
法人税等 |
1,000 |
当期純利益 |
3,000 |
上記の場合、各利益率は以下のように計算できます。
1.売上総利益率(粗利率)=6,000÷10,000×100=60%
2.売上高営業利益率=4,000÷10,000×100=40%
3.売上高経常利益率=4,100÷10,000×100= 41%
4.売上高税引前当期純利益率=4,000÷10,000×100= 40%
5.売上高当期純利益率=3,000÷10,000×100=30%
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利益率の目安は、業種によって異なります。そこで、以下では、さまざまな業種別の営業利益の平均値を一覧表で見てみましょう。
なお、近年は新型コロナウィルスの影響が強くみられるため、2018年から2022年までの数値を挙げてみました。ぜひ参考にしてください。
2018 |
2019 |
2020 |
2021 |
2022 |
対象企業数 |
|
水産・農林業 |
5.1 |
5.1 |
4.7 |
5.6 |
5.4 |
11 |
卸売業 |
3.7 |
3.9 |
2.8 |
2.2 |
2.6 |
325 |
食料品 |
4.3 |
3.5 |
3.8 |
3.9 |
4.3 |
125 |
建設業 |
6.1 |
5.6 |
6.0 |
6.1 |
5.9 |
163 |
非鉄金属 |
5.8 |
4.7 |
1.7 |
4.1 |
5.5 |
34 |
鉱業 |
14.7 |
15.9 |
13.5 |
14.0 |
24.2 |
6 |
機械 |
9.5 |
8.2 |
7.2 |
5.9 |
8.2 |
230 |
サービス業 |
7.7 |
8.4 |
5.2 |
2.4 |
6.1 |
544 |
金属製品 |
7.3 |
7.0 |
6.0 |
6.0 |
6.8 |
92 |
情報・通信業 |
8.9 |
8.3 |
7.8 |
7.1 |
7.6 |
567 |
医薬品 |
-399.3 |
-276.1 |
-745.9 |
-3191.3 |
-2230.0 |
72 |
不動産業 |
11.9 |
10.6 |
9.2 |
5.8 |
9.7 |
141 |
陸運業 |
7.9 |
8.0 |
7.3 |
0.0 |
4.0 |
64 |
小売業 |
4.2 |
4.0 |
2.9 |
-0.3 |
3.4 |
337 |
化学 |
8.4 |
7.7 |
7.3 |
8.2 |
9.1 |
213 |
繊維製品 |
5.9 |
5.3 |
3.4 |
1.9 |
5.2 |
50 |
電気機器 |
6.6 |
6.1 |
5.5 |
5.6 |
6.6 |
244 |
ガラス・土石製品 |
8.4 |
8.1 |
6.4 |
7.5 |
8.1 |
57 |
輸送用機器 |
4.5 |
4.6 |
3.4 |
2.2 |
3.7 |
87 |
石油・石炭製品 |
6.9 |
6.0 |
3.5 |
6.7 |
5.8 |
10 |
パルプ・紙 |
4.6 |
4.8 |
5.6 |
5.6 |
6.7 |
25 |
その他製品 |
6.4 |
5.0 |
4.6 |
6.1 |
7.8 |
111 |
精密機器 |
-7.0 |
-12.1 |
-7.4 |
-7.5 |
-5.8 |
49 |
ゴム製品 |
9.8 |
7.5 |
5.9 |
6.1 |
6.9 |
19 |
鉄鋼 |
6.1 |
5.4 |
5.5 |
4.5 |
7.5 |
42 |
倉庫・運輸関連 |
5.9 |
6.2 |
5.9 |
5.4 |
7.0 |
39 |
海運業 |
5.5 |
5.6 |
4.2 |
7.7 |
27.7 |
11 |
空運業 |
7.8 |
7.3 |
5.4 |
-19.8 |
-5.0 |
5 |
電気・ガス業 |
8.3 |
7.5 |
8.3 |
7.0 |
4.2 |
25 |
※上記の数値は、各上場企業の有価証券報告書を元に算出しています。(単位%)
製造業・小売業・サービス業など主要業種における利益率には明確な傾向があります。
製造業は全体的に営業利益率が平均3.4%程度と低めですが、業種ごとに差があり、金属製品製造業(鉄鋼など)は営業利益率5%超と比較的高い一方、食料品や衣服・繊維製品はコスト高や競争激化で低い傾向です。
小売業は大量仕入れによる原価低減や効率的な流通が利益率向上の要因ですが、営業利益率は1~3%台と薄利多売型が多く、規模や業態によっても差が出ます。
一方、サービス業は他業種より利益率が高い企業が多く、2025年度の増益率ランキングでもサービス業の好調が目立ちます。これは、人件費や固定費の管理次第で収益性を高めやすいことが要因です。
このように、業種ごとの市場特性やコスト構造が利益率に大きく影響しています。
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それでは次に、利益率を高めるためのポイントを解説します。
利益率を高めるためには、売上を上げるかコストを下げるかのどちらか、もしくは両方を行う必要があります。
具体的には、以下の3つのポイントに注力するのが効果的です。
それぞれの方法とその効果について、詳しく解説していきます。
単なる値下げではなく、製品やサービスの付加価値を高めることが利益率向上のポイントです。
市場や顧客ニーズを分析し、差別化できる機能やサービスを追加することで、適正な価格設定が可能となります。
また、ターゲット層を明確化し、ブランド力やアフターサービスなど無形価値を訴求することで、価格競争に巻き込まれずに利益率を維持・向上できます。
販売単価を上げる方法としては、以下のようなものが挙げられます。
これらの方法は、顧客のニーズや満足度に応じて、適切な価格設定を行うことがポイントです。ただし、価格を上げる際には、顧客離れを起こさないように、タイミングや価格差を考慮する必要があります。
利益率向上のためには、原価管理とコスト削減が不可欠です。
具体策としては、ABC(活動基準原価計算)や標準原価計算によるコスト構造の見直し、材料費削減のための仕入れ先交渉や一括調達、在庫管理の最適化、製造プロセスの標準化・自動化、設備投資の最適化などが挙げられます。
これらの取り組みにより、無駄なコストを排除し、利益率を着実に高めることが可能です。
売上原価を下げる方法としては、以下のようなものが挙げられます。
これらの方法は、商品やサービスの品質や顧客満足度を維持しながら、コストを抑えることができます。ただし、コストダウンのために、品質やサービスが低下することは避けなければなりません。
業務プロセスの見直しやITシステムの導入は、利益率向上に直結する重要な要素です。
原価管理システムや生産管理システムの活用で、材料費や工数、在庫などのデータを一元管理し、無駄な作業や人的ミスを削減できます。
自動化や標準化による業務効率化は、間接費や人件費の削減につながり、全体の収益性を高める効果があります。
業務効率化やIT活用によって利益率を向上させる方法としては、以下のようなものが挙げられます。
これらの方法は、無駄なコストを削減するだけでなく、従業員のモチベーションや生産性を高めることにもつながります。ただし、コスト削減のために、従業員の負担や不満が増えることは避けなければなりません。
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以下では、利益率分析の活用と経営判断への応用方法について解説します。
利益率の推移を時系列で分析することで、企業の収益性が向上しているのか、低下しているのかを明確に把握できます。
例えば、過去3年間の営業利益率が上昇していれば、コスト削減や収益拡大策が効果を発揮していると判断できます。逆に低下傾向が続く場合は、原価高騰や販売費増加などの要因を特定し、抜本的な対策が必要です。
このような推移分析は、経営戦略の見直しや新たな投資判断、事業ポートフォリオの再構築など、長期的な経営方針の策定に直結します。
利益率分析では、自社の数値だけでなく、同業他社や業界平均との比較が重要です。
業界の優良企業と比較することで、自社の競争力や収益構造の強み・弱みが明確になります。また、なぜ他社の利益率が高いのか要因を分析することで、自社の改善ポイントや差別化戦略のヒントを得られます。
過去実績との比較では、一時的な変動要因(原材料費の高騰や一過性のコスト増減)を考慮し、長期的なトレンドを把握することが重要です。
利益率改善には、具体的なKPI(重要業績評価指標)の設定と継続的なモニタリングが不可欠です。例えば、売上総利益率や営業利益率、部門別利益率などをKPIとして数値目標を明確にし、定期的に進捗をチェックします。KPIの達成度をモニタリングすることで、現場の課題や成功要因を素早く把握でき、必要に応じて戦略や施策を柔軟に修正できます。
これにより、利益率向上の取り組みを着実かつ継続的に推進することが可能です。
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最後に、利益率向上に役立つERPや会計システムの選び方を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
利益率管理に優れたERPシステムは、売上・仕入・原価・経費などのデータをリアルタイムに一元管理し、プロジェクトや商品別の収支を自動集計できる点が特徴です。
部門間の情報連携やデータの自動連携により、転記ミスや二重入力を防止し、利益率の見える化と迅速な経営判断をサポートします。
ERPの選定では、業種ごとの業務特性や自社の規模に合わせて必要な機能を見極めることが重要です。
製造業なら原価管理や生産管理、小売業なら在庫・販売管理、サービス業ならプロジェクト収支管理など、業種特化型ERPが効果的です。
また中堅・大企業では、拡張性やグローバル対応も重視しましょう。
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リアルタイム集計やKPIダッシュボード機能により、利益率の推移や異常値も即座に把握でき、経営判断や改善施策の迅速化に貢献します。
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上記のように、利益率は、会社の収益性を測る重要な指標です。利益率の目安は業界の特性や競争環境によって異なりますが、一般的に資本集約型の業界では利益率が低く、知的集約型の業界では利益率が高い傾向にあります。
利益率の業種別の目安を知ることは、自社の収益力を業界の平均と比較することや、他社の収益力を分析するのに役立つでしょう。
このように、利益率を管理することは、経営の成功につながります。それは、利益率を管理することで、自社の収益力や競争力を把握し、経営判断や経営戦略を立てることができるからです。
また、利益率を管理することで、業務の効率化やコスト削減、付加価値の向上などの改善策を実施できます。
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