令和7年3月期の年度決算を迎えるにあたって、確認すべき税務項目の内容のうち、重要となる「賃上げ促進税制」を中心に解説します。4月以降に決算を迎える法人についても、同様に適用される内容になります。
賃上げ促進税制
●青色申告する全企業対象の賃上げ促進税制(大企業・中堅企業向け)
令和6年4月1日以後開始事業年度から、継続雇用者の給与総額を一定割合以上増加させた企業に対して、雇用者全体の給与総額の対前年度増加額の10%(最大35%)の税額控除が認められる制度となります。
- ※1 「資本金の額又は出資金の額が10億円以上かつ常時使用する従業員数が1,000人以上」又は「常時使用する従業員数が2,000人超」である法人はマルチステークホルダー方針の公表及び届出が必要となります。
- ※2 中堅企業の控除率の上乗せは、対前年度増加率4%以上の増加で15%が加算されます。
- ※3 中堅企業は、適用事業年度中にえるぼし認定(3段階目)を取得した場合でも、5%加算が適用されます。
●中小企業者等のみ対象の賃上げ促進税制(中小企業向け)
令和6年4月1日以後開始事業年度において、雇用者給与等支給額(企業全体の給与)の増加要件を満たすことで、雇用者給与等支給額の対前年度増加額の15%(最大45%)の税額控除が可能です。
【実務上のポイント】
- ○報奨金や表彰金などの給与所得として所得税が課税されているものについて、福利厚生費などの給与等以外の科目を使用した場合、その分も集計する必要があります。
- ○適用事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されるものである必要があるため、決算賞与は、損金算入事業年度に含めることとなります。
- ○5年繰越控除を適用するには、控除できなかった年度の申告で、「給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」の提出が必要となるため、未控除額を集計する必要があります。
接待飲食費等に関する見直し
令和6年4月1日以後に支出する取引先との飲食費等について、交際費等の範囲から除外される金額基準が「1人当たり 10,000円以下」に引き上げられています。交際費等から除く場合には、飲食等のあった年月日や得意先等の名称等とその関係、その飲食等に参加した者の数など、参考となるべき一定事項を記録した書類を保存する必要があります。
中小企業者等の法人税率の特例
中小企業者等の所得の金額のうち、年800万円以下の部分に適用される法人税の軽減税率15%(本則税率は19%)の適用が行われています。なお、この特例の適用対象者からは、前3事業年度の所得金額の平均額が15億円を超える法人は除かれています。
中小企業倒産防止共済事業に係る措置の見直し
中小企業倒産防止共済法の共済契約を令和6年10月1日以後に解除し、再度、共済契約を締結した場合、解除日から同日以後2年経過日までの間に支出する掛金については、損金算入が認められなくなりました。
防衛特別法人税の創設による実効税率への影響
防衛特別法人税の創設により、税効果会計の計算で用いる法定実効税率が以下へ変更となります。
※東京都23区の税率を使用しており、基礎控除額については考慮していません。
※変更となるのは、一時差異の解消事業年度が令和8年4月1日開始事業年度分からとなります。
※実効税率の計算は、決算日までに成立した法案の税率で計算されるため、成立していない場合、従前の税率となります。
企業規模別の税制優遇措置
本決算を迎えるにあたって、賃上げ促進税制以外の適用が検討される主な税制優遇措置や税制上の変更点のポイント等を、企業規模別にまとめると次のようになります。申告に際し適用漏れや計算ミスが無いように事前に適用の検討と確認をしておくことが重要になります。