リース契約におけるファイナンスリースとオペレーティングリースの選択は、重要な経営判断の一つです。ファイナンスリースとオペレーティングリースは、どちらも企業の資産管理において有効な手段であり、その違いを理解する必要があります。
ファイナンスリースは、資産を購入するのと同様の扱いとなり、資産の所有権が移転することが特徴です。一方、オペレーティングリースは、資産を借りる形となり、所有権はリース会社に留まります。これらの違いは、企業の財務状況や経営戦略に大きな影響を与えるため、慎重な検討が必要です。
そこで今回は、ファイナンスリースとオペレーティングリースの基本的な違いを比較して解説します。ぜひ参考にしてください。
まずはじめに、ファイナンスリースとオペレーティングリースの基本的な概念を解説します。
ファイナンスリースとは、リース期間中に資産の所有権がリース会社から借り手に移ることを前提としているのが特徴です。ファイナンスリースでは、リース期間終了後に、借り手が資産を購入するオプションを持つのが一般的です。
ファイナンスリースは、資産を長期間使用する予定がある場合に適しており、資産を一括購入する必要がないために初期投資を抑えられるメリットがあります。また、リース料が固定されているため、キャッシュフローの予測も容易です。
しかし、途中解約が難しく、総支払額が高くなるというデメリットがあります。
一方、オペレーティングリースでは、リース期間の終了後も資産の所有権がリース会社に留まるのが特徴です。
オペレーティングリースは、短期間で資産を使用したい場合や、常に最新の設備を利用したい場合に適しています。オペレーティングリースのメリットは、リース料が比較的低く、短期間の契約が可能であることです。また、リース期間中に資産のメンテナンスや修理がリース会社によって行われることが多いのも特徴です。
しかし、長期的に見るとコストが高くなる場合があったり、中途解約には違約金が発生したりするデメリットがあります。
以下では、ファイナンスリースとオペレーティングリースの主な違いを比較します。
ファイナンスリース |
オペレーティングリース |
|
所有権 |
リース期間終了後に移転する場合がある |
移転しない |
リース期間 |
比較的長期(5年〜10年程度) |
比較的短期(1年〜5年程度) |
解約 |
原則として中途解約不可 |
中途解約可能(違約金が発生する場合あり) |
リース料 |
資産の取得価格に基づく |
資産の使用期間に基づく |
会計処理 |
借手の資産として計上 |
借手の費用として計上 |
メンテナンス |
借手が負担 |
貸手が負担 |
利用目的 |
長期的な資産利用 |
短期的な資産利用や技術革新に対応 |
メリット |
一括購入せずに資産を利用できる 手元のキャッシュを温存できる 融資枠を使わない 長期的に資産を利用できる |
リース料金総額が低い 最新設備の利用がしやすい 短期間のリース契約が可能中途解約が可能 |
デメリット |
途中解約ができない 支払総額が割高になる |
中途解約時に違約金が発生する 長期利用には不向き |
上記のように、ファイナンスリースとオペレーティングリースは、企業が資産を取得する際の異なる方法を提供します。これらのリースの違いを理解することで、企業は自社のニーズに最適なリース方法を選択することができます。
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企業がファイナンスリース契約とオペレーティングリース契約を選択する際のポイントは以下の通りです。
ファイナンスリース契約では、リース期間終了後に資産の所有権が移転することが多く、通常は資産の耐用年数に近い長期間のリース契約です。
ファイナンスリース契約の場合は、リース資産と負債をバランスシートに計上する必要があり、リース料は資産の取得価格や諸経費のほぼ全額をカバーします。
一方、オペレーティングリース契約では、リース期間終了後も資産の所有権はリース会社に残ります。比較的短期間のリース契約が多く、リース料は経費として計上され、資産や負債として計上する必要はありません。
オペレーティングリース契約は、技術革新や市場変動に対応しやすい柔軟性の高さが特徴です。
企業がリース契約を選択する際には、財務戦略や資金繰り、資産の使用期間、技術革新の速度などを考慮することが重要です。具体的には、バランスシートの健全性を保つために、適切なリース契約の選択が求められます。
例えば、初期投資を抑えたい場合には、オペレーティングリースが有利です。一方、長期間使用する資産をリースする場合は、ファイナンスリースが適しています。
また、技術の進歩が早い分野では、短期間のオペレーティングリースの方がリスクの観点から見ても向いていると言えるでしょう。
ファイナンスリースとオペレーティングリースの会計処理にはいくつかの重要な違いがあります。それぞれの処理方法を以下にまとめます。
ファイナンスリースは、実質的に資産を購入するのと同じ扱いとなります。具体的には、以下のような処理が行われます。
リース資産とリース債務をバランスシートに計上します。リース資産は、リース料の現在価値または資産の公正価値のうち低い方で計上されます。
リース資産は耐用年数にわたって減価償却されます。所有権移転ファイナンスリースの場合は、資産の耐用年数に基づいて減価償却します。
リース債務に対する利息費用を計上します。リース料の支払いは、元本返済と利息費用に分けられます。
オペレーティングリースは、資産を借りているだけの扱いとなるため、以下のような処理が行われます。
リース料は賃貸借取引として扱われ、リース期間にわたって均等に経費として計上されます。
リース資産やリース債務はバランスシートに計上されません。リース料の支払いのみが経費として処理されます。
具体的な仕分け方法については、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:オペレーティングリースとは?仕訳方法やメリット・デメリットを解説
リース期間終了後に資産を返却するため、資産の保有リスクが低く、技術革新に対応しやすいのが特徴です。
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リース契約の選択は、企業の財務にさまざまな影響を与えます。以下に主なポイントをまとめます。
ファイナンスリースではオンバランス処理が必要で、オペレーティングリースはオフバランス処理となります。
オンバランスシートとは、リース資産とリース負債が貸借対照表に計上されることを指し、負債比率や自己資本比率などの財務指標が悪化する可能性があります。一方、オフバランスシートでは、リース資産を固定資産として計上しないため、固定比率や総資本利益率などの財務比率の悪化を防ぐことが可能です。
オペレーティングリースでは、リース料が営業費用として計上されるため、キャッシュフロー計算書の営業活動によるキャッシュフローに影響を与えます。一方、ファイナンスリースでは、リース資産の減価償却費とリース負債の利息費用が計上されるため、キャッシュフロー計算書の投資活動および財務活動によるキャッシュフローに影響を与えます。
新リース会計基準では、すべてのリース取引が原則オンバランス計上となるため、リース料支払いのみ費用処理するオペレーティングリースも、ファイナンスリース同様に減価償却費と支払利息が計上されます。これにより、財務報告における表示と開示の要件が変更され、投資家や銀行などに対して説明が必要となります。
リース契約の選択は、企業の資本構造や資金調達戦略にも影響を与えます。例えば、リースを利用することで初期投資を抑え、資金を他の戦略的投資に回すことが可能です。
上記のように、リース契約の選択は企業の財務に多大な影響を与えるため、慎重な検討が必要です。具体的な状況に応じて、どのリース契約が最適かを判断することが重要です。
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以下にファイナンスリースとオペレーティングリースの具体的な事例をそれぞれ解説します。
企業がオフィスのコピー機をファイナンスリースで導入する場合には、リース期間終了後にコピー機の所有権が企業に移転するケースが多いです。
ファイナンスリースを活用することで、初期投資を抑えつつ、長期的に使用する設備を確保できるため、資金繰りが安定しやすいのがメリットです。
製造業の企業では、高価な工作機械をファイナンスリースで導入するケースが多くあります。リース期間終了後に所有権が移転するため、実質的には分割払いで購入するのと同じです。高額な設備投資を分割払いで行うことで、キャッシュフローの負担を軽減できるのがメリットです。
また、金融機関からの借入ではなくリースを活用することで、企業の融資枠を使わずに済むことも利点と言えるでしょう。
航空会社が新しい航空機をオペレーティングリースで導入する場合、リース期間終了後に航空機をリース会社に返却します。オペレーティングリースを活用することで、大きな初期投資を避けつつ最新の航空機を利用できるため、技術革新に対応しやすくなるのがメリットです。
企業が急速に進化するIT機器(例:サーバーやパソコン)をオペレーティングリースで導入することで、リース期間終了後に機器を返却し、新しい機器に更新できます。
オペレーティングリースを活用することで、常に最新の技術を利用できるため、競争力を維持しやすくなるのがメリットです。
上記の事例を参考に、リース契約の選択が企業の財務や経営戦略にどのように影響するかを検討することが重要です。
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自社に最適なリース契約を選ぶためには、以下のポイントを考慮することが重要です。
長期的に使用する設備や機器にはファイナンスリースが適しており、リース期間終了後に所有権を自社に移転させることが可能です。ファイナンスリースは、初期投資を抑えつつ、資産を確保したい場合に有効です。
一方、短期間での利用や技術革新が早い機器には、オペレーティングリースが適しています。リース期間終了後に資産を返却するため、常に最新の設備を利用しやすいのがメリットです。
リース契約では初期投資を抑えることができますが、月々のリース料が発生します。自社のキャッシュフローや財務状況を確認し、リース料の支払いが無理なく行えるかを検討することが重要です。
長期間使用する予定の設備や機器には、基本的にファイナンスリースが適しています。一方、短期間での利用や頻繁に更新が必要な機器にはオペレーティングリースが適しています。
リース料は経費として計上できるため、税務上のメリットがあります。特にオペレーティングリースは全額を経費として計上できるため、節税効果が高いと言えるでしょう。
リース会社の信頼性やサポート体制も、重要な選定基準となります。リース期間中のメンテナンスやサポートが充実しているかを確認しましょう。
リース契約の総コストを購入と比較し、どちらが自社にとって経済的かを判断しましょう。
リース料には金利や手数料が含まれるため、総支払額が購入より高くなる場合があるため、注意が必要です。
上記のポイントを総合的に検討し、自社のニーズに最適なリース契約を選ぶことが重要です。具体的な状況やニーズに応じて、専門家のアドバイスを受けることもおすすめします。
ただし、2027年4月からは特定の企業に対して「新リース会計基準」が強制適用されるため、下記の記事を参考に、上記とは異なる会計処理が必要です。
対象となる企業の経理担当者の方は、早めに準備することをおすすめします。
関連記事:新リース会計基準の概要と改正のポイント、企業に必要な準備と対策を解説
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このように、企業がリース契約を結ぶ場合には、まずファイナンスリースとオペレーティングリースを理解することが重要です。そして、リース契約を締結した後は、適切な会計処理を行いましょう。
ただし、締結するリース契約の種類によって仕分け方法が異なるため、会計基準に基づいた処理が必要です。
また、2027年4月から強制適用される「新リース会計基準」によって、リース契約のメリットが大きく変わる可能性があるため、十分な調査と分析を行う必要があります。
そこでおすすめしたいのが、キヤノンITソリューションズの「SuperStream-NX」です。
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主な特徴は以下の通りです。
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