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インボイス発行事業者の登録申請、来年3月まで様子をみる? ~意外に時間がかかる税務署の登録手続き~

インボイス発行事業者の登録申請、来年3月まで様子をみる? ~意外に時間がかかる税務署の登録手続き~

 中田 清穂(なかた せいほ)

すでに一部では、インボイス発行事業者の登録申請は、来年3月末までです。
登録申請をして、来年9月末まで登録が完了しないと、インボイス制度がスタートする、2023年10月1日以降の取引について、適格請求書等が発行できなくなることになります。
これは、このコラムの連載で触れてきたように、得意先での仕入税額控除ができなくなり、得意先に多大な迷惑になります。

■1. 2022年8月末のインボイス発行事業者の登録完了の状況

東京商工リサーチのサイトでは、以下のような情報が記載されています。

2023年10月に始まるインボイス制度への事業者側の対応が進んでいない。
国税庁は消費税の納付義務のある法人や個人企業など約300万件の課税事業者のインボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)への登録を見込んでいる。
だが、今年8月末の登録件数は100万件に満たず、国内企業等の登録率は法人42.4%、個人企業は9.9%にとどまることが東京商工リサーチ(TSR)の取材でわかった。
(出所:https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20220909_01.html

また、同じページには、以下のような情報があります。

東京商工リサーチが8月1-9日に実施したアンケート調査で、インボイス制度を「知らない」との回答は7.5%にとどまる。
インボイス制度そのものは周知されているが、フリーランスの躊躇や煩雑な手続き方法に加え、日常業務の忙殺などで申請が遅れているようだ。

インボイス発行事業者の登録申請は、昨年10月1日から受付が開始され、来年3月末までが申請の期限です。
登録申請期間は、1年6か月あったわけですが、そのうち、3分の2の1年が経過しましたが、まだ、4割ちょっとしか登録されていないようです。

■2. 登録申請をしてから登録が完了するまでどのくらいの所要期間があるか。

こんな記事を書いている、中田自身はどうしているのか!?
という「ツッコミ」にきちんとお答えするために、実は私の会社(有限会社ナレッジネットワーク)では、8月に登録申請を致しました。
そして、めでたく登録完了の通知が税務署から送付されてきました。
登録申請の方法は、e-TAXです。

以下が、実際に登録申請をした時の申請書の一部です。

1007

登録申請日は、令和4817日でした。
法人番号は、8-0108-0201-0881です。
手続きは、めちゃめちゃ単純で、東京商工リサーチに記事にあるような「煩雑な手続き」ではないと感じました。

 

そして、その後、税務署から送付されてきた通知書が以下です。
1007_2

通知が来たのは、令和4年8月26日です。
登録番号は、想定通り、自社の法人番号の前に「T」がついているだけです。
ここで何が言いたいかというと、登録申請をしたのが、8月17日。
通知が来たのが、8月26日。
ということは、e-TAXで申請して登録手続きが完了するまで、10日かかったことがわかります。
冒頭で示したように、1年間で4割ちょっとの登録ですから、まだ、殺到している状況ではないと思われます。
そしてe-TAXという電子データで申請しているにも関わらず、10日もかかるのです。

遅すぎます。
私からすると、e-TAXで申請したら、即時登録完了して、通知できてもおかしくないと思います。
どう考えても、何か人間がチェックしたり、あるいは、信じられませんが、他のシステムに、人間が転記入力しているのかもしれません。
そのくらい遅く感じられます。


■3. 登録完了までの期間は変化しているか。

実は、国税庁のサイトで、登録申請書の処理期間について、直近の情報が公表されています。
このコラムを執筆しているタイミングでは、9月30日時点での情報が、以下のように公表されていました。
1007_3

(出所:https://www.invoice-kohyo.nta.go.jp/zyuyo_oshirase/syorikikan.html

なんと、e-TAXでも約3週間になっています。
書面提出だと、1か月半もかかるようです。
私が8月中旬に申請した時には、10日でしたから、今はもう2倍以上の時間がかかっていることになります。

■4. 登録期限となる来年3月ごろにはどうなるんだろう。

まだ登録していない事業者は、おそらく来年3月ぎりぎりになって申請するような気がします。
残りの4割~5割の申請が、来年3月ごろに集中するような気がします。
その時に、申請してから登録が完了して、税務署から通知が届くまでに、どれくらいの処理期間がかかるのでしょう。

心配です。

■5. 仕入業者は、ちゃんと登録しただろうか。

インボイス制度は、自社が登録するだけの問題ではありません。
特に重要なことは、継続的に取引をしている業者が登録しているかどうかです。
仕入業者がちゃんと登録していなければ、自社が仕入税額控除を受けられなくなります。

実は、国税庁のサイトで公表されている「適格請求書発行事業者公表システムWeb-API機能」を利用すると、利用者のPCから、インターネットを経由して、国税庁の「適格請求書発行事業者公表システム」にアクセスして、公表情報を取得することができます。

通常だと、検索したい登録番号を1件ずつ入力して検索する必要があります。
このWEB-API機能を使えば、以下の利点があります。
1.1度にまとめて10件の検索・取得ができる
2.最大50日間の期間を指定して、その期間に登録した登録番号を検索・取得ができる
3.指定された日付までに登録された事業者の検索・取得ができる。
※ 「適格請求書発行事業者公表システム」に登録されている全件を取得することはできないようです。

国税庁の「適格請求書発行事業者公表システムWeb-API機能」のサイトは以下です。
https://www.invoice-kohyo.nta.go.jp/web-api/index.html#cmspagelink1

皆さんの会社の仕入先が、登録を完了しているかどうか、早めに確認することが望まれます。
そして、まだ登録が完了していないようであれば、早く登録するよう要請することが望まれます。

皆さんも早く登録すれば、得意先が安心する気持ちもわかるでしょう。

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