公認会計士 中田清穂のインボイス制度と電子帳簿保存法の解説講座 2022.10.07 (UPDATE:2024.11.20)
中田 清穂(なかた せいほ)
東京商工リサーチのサイトでは、以下のような情報が記載されています。
2023年10月に始まるインボイス制度への事業者側の対応が進んでいない。 国税庁は消費税の納付義務のある法人や個人企業など約300万件の課税事業者のインボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)への登録を見込んでいる。 だが、今年8月末の登録件数は100万件に満たず、国内企業等の登録率は法人42.4%、個人企業は9.9%にとどまることが東京商工リサーチ(TSR)の取材でわかった。 |
また、同じページには、以下のような情報があります。
東京商工リサーチが8月1-9日に実施したアンケート調査で、インボイス制度を「知らない」との回答は7.5%にとどまる。 インボイス制度そのものは周知されているが、フリーランスの躊躇や煩雑な手続き方法に加え、日常業務の忙殺などで申請が遅れているようだ。 |
インボイス発行事業者の登録申請は、昨年10月1日から受付が開始され、来年3月末までが申請の期限です。
登録申請期間は、1年6か月あったわけですが、そのうち、3分の2の1年が経過しましたが、まだ、4割ちょっとしか登録されていないようです。
こんな記事を書いている、中田自身はどうしているのか!?
という「ツッコミ」にきちんとお答えするために、実は私の会社(有限会社ナレッジネットワーク)では、8月に登録申請を致しました。
そして、めでたく登録完了の通知が税務署から送付されてきました。
登録申請の方法は、e-TAXです。
以下が、実際に登録申請をした時の申請書の一部です。
登録申請日は、令和4年8月17日でした。
法人番号は、8-0108-0201-0881です。
手続きは、めちゃめちゃ単純で、東京商工リサーチに記事にあるような「煩雑な手続き」ではないと感じました。
そして、その後、税務署から送付されてきた通知書が以下です。
通知が来たのは、令和4年8月26日です。
登録番号は、想定通り、自社の法人番号の前に「T」がついているだけです。
ここで何が言いたいかというと、登録申請をしたのが、8月17日。
通知が来たのが、8月26日。
ということは、e-TAXで申請して登録手続きが完了するまで、10日かかったことがわかります。
冒頭で示したように、1年間で4割ちょっとの登録ですから、まだ、殺到している状況ではないと思われます。
そしてe-TAXという電子データで申請しているにも関わらず、10日もかかるのです。
遅すぎます。
私からすると、e-TAXで申請したら、即時登録完了して、通知できてもおかしくないと思います。
どう考えても、何か人間がチェックしたり、あるいは、信じられませんが、他のシステムに、人間が転記入力しているのかもしれません。
そのくらい遅く感じられます。
実は、国税庁のサイトで、登録申請書の処理期間について、直近の情報が公表されています。
このコラムを執筆しているタイミングでは、9月30日時点での情報が、以下のように公表されていました。
(出所:https://www.invoice-kohyo.nta.go.jp/zyuyo_oshirase/syorikikan.html)
なんと、e-TAXでも約3週間になっています。
書面提出だと、1か月半もかかるようです。
私が8月中旬に申請した時には、10日でしたから、今はもう2倍以上の時間がかかっていることになります。
まだ登録していない事業者は、おそらく来年3月ぎりぎりになって申請するような気がします。
残りの4割~5割の申請が、来年3月ごろに集中するような気がします。
その時に、申請してから登録が完了して、税務署から通知が届くまでに、どれくらいの処理期間がかかるのでしょう。
心配です。
インボイス制度は、自社が登録するだけの問題ではありません。
特に重要なことは、継続的に取引をしている業者が登録しているかどうかです。
仕入業者がちゃんと登録していなければ、自社が仕入税額控除を受けられなくなります。
実は、国税庁のサイトで公表されている「適格請求書発行事業者公表システムWeb-API機能」を利用すると、利用者のPCから、インターネットを経由して、国税庁の「適格請求書発行事業者公表システム」にアクセスして、公表情報を取得することができます。
通常だと、検索したい登録番号を1件ずつ入力して検索する必要があります。
このWEB-API機能を使えば、以下の利点があります。
1.1度にまとめて10件の検索・取得ができる
2.最大50日間の期間を指定して、その期間に登録した登録番号を検索・取得ができる
3.指定された日付までに登録された事業者の検索・取得ができる。
※ 「適格請求書発行事業者公表システム」に登録されている全件を取得することはできないようです。
国税庁の「適格請求書発行事業者公表システムWeb-API機能」のサイトは以下です。
https://www.invoice-kohyo.nta.go.jp/web-api/index.html#cmspagelink1
皆さんの会社の仕入先が、登録を完了しているかどうか、早めに確認することが望まれます。
そして、まだ登録が完了していないようであれば、早く登録するよう要請することが望まれます。
皆さんも早く登録すれば、得意先が安心する気持ちもわかるでしょう。
中田 清穂(なかた せいほ)
1985年青山監査法人入所。8年間監査部門に在籍後、PWCにて 連結会計システムの開発・導入および経理業務改革コンサルティングに従事。1997年株式会社ディーバ設立。2005年同社退社後、有限会社ナレッジネットワークにて、実務目線のコンサルティング活動をスタートし、会計基準の実務的な理解を進めるセミナーを中心に活動。 IFRS解説に定評があり、セミナー講演実績多数。