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データドリブン経営 第1回:データドリブン経営って経理部門と関係あるの?

データドリブン経営 第1回:データドリブン経営って経理部門と関係あるの?

 中田 清穂(なかた せいほ)

最近の記事など、「データドリブン経営」という言葉が多く使われるようになっているようです。私にも「データドリブン経営」をテーマにしセミナー講演をして欲しいというお声がかかるようになってきました。 

私のセミナー視聴者のほとんどの方が経理部門の関係者です。 
日本の経理部門の最大の責務は、会社の実績をきちんと固めることだと思います。 
つまり財務諸表を適切に作成することですね。 
したがって、「データドリブン経営」という言葉を聞いても、実績固め中心の経理部門の方にとっては、「データドリブン経営なんて自分たちには関係ない」と感じておられる方も少なくないと思います。 

しかし、「データドリブン経営」が予算管理や予実分析に重要な関連を持っていると言えば、少しは見方が変わるかもしれません。 

ここで、「データドリブン経営」という言葉の意味を確認したいと思います。

 

キヤノンITソリューションズ株式会社のサイトのコラムでは、以下のように解説されています。
(https://www.superstream.canon-its.co.jp/column/trend_data-driven-management-importance)

データドリブン経営とは、蓄積されたデータを基に意思決定や戦略策定を行う経営手法です。 
従来の経験や勘に頼る方法とは異なり、客観的なデータを活用することで、迅速かつ正確な判断が可能となります。

この表現で最も重要なところは、「蓄積されたデータを基に」というところでしょう。 

この「蓄積されたデータを基に」という表現を解説したのが、その後に続く「従来の経験や勘に頼る方法とは異なり、客観的なデータを活用する」という文章です。 

すなわち、「蓄積されたデータに基づく」ということは「従来の経験や勘に頼る方法とは異なり、客観的なデータを活用する」ということです。 

ここでほとんどの企業が策定している「予算」について考えてみたいと思います。 
なぜなら「予算」は、経営者が意思決定や戦略策定を行う上で、最も利用している指標だからです。 

日本企業における「予算」については、あまり良い評判が聞かれません。 
具体的には以下のような声をよく聞きます。 

  • 営業部や事業部などの現場に予算を作ってもらっても、根拠がわからない。
  • どのように策定したのか、質問してもきちんと説明してもらえない。 
  • 実績が固まったときに、予算と比較して予実差が発生した際に、その原因を現場部門に調べてもらっても、納得できるような明確な原因が示されない。 
  • そもそも年初に予算が策定されても、その瞬間から「実現不可能だ」という声が社内から沸き起こる。つまり自社の予算には信頼性がない。 
  • 毎年多額の予実差異が発生し、現行の予算を作成する意味がないように感じる。 

予算に信頼性がないとか、作成することに疑念があるということはどういうことでしょうか。 

そもそも予算を作成する目的は何なのか。 
毎年作成するものなので、いちいち考えることもないと思いますが、目的をきちんと理解しないで作業をすると意味のない作業になります。 

予算は、ヒト・モノ・カネなどの経営資源を最適に配置して企業の売上・利益目標を達成するために作成します。 
別の表現で表すと、利益が最大になるように、儲かる活動に経営資源を投入して、儲からない活動にはあまり投入しないということになります。 
そうなると重要になるのは、企業活動の中で儲かる活動とはどの活動なのかを見極めることです。 
事業部長や営業部長が、会社から与えられた人員・資産・資金をどのように使えば利益を最大化できるか、ということを真剣に考えていれば、売上や利益の予測ができる可能性はあります。

しかし、過去からのやり方だけを繰り返している部門長にはできません。 
「会社の計画が毎年20%成長だから、自分の部門の売上や利益も去年の20%増にしよう」という感じで予算を作成している部門長では、利益の最大化は望めないでしょう。 

「従来の経験や勘に頼る方法とは異なり、客観的なデータを活用して意思決定や戦略策定を行う」ことができないからです。 

では、「従来の経験や勘に頼る方法とは異なり、客観的なデータを活用して意思決定や戦略策定を行う」ことができるようになるには、どのような考え方で、どのような進め方をすればよいのか、次回以降のコラムで解説したいと思います。 

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