税務トピックス 2025.07.31 (UPDATE:2025.07.31)
辻󠄀・本郷 税理士法人
法人が支払った寄附金は経費になることをご存じでしょうか? じつは法人にとって寄附金は、税金対策としての役割を果たせるのです。
とはいえ、寄附したすべての支出が経費になるわけではありません。それを把握していないと、余分な出費につながってしまいます。
そこで今回は、法人が支払った寄附金が税金にどう影響するのかを解説します。
そもそもここでいう寄附金とは、どこまでが対象となるのでしょうか?
原則では、「法人が行った金銭その他の資産または経済的利益の贈与または無償の供与」 ※を寄附金として扱います。
つまり、見返りを期待しない任意的な支出のことです。具体例を挙げると、以下のようなものは寄附金となります。
■ 社会事業団体、政治団体に対する拠金
■ 神社の祭礼等の寄贈金
■ 事業に関係のない者に対する金銭贈与
ただし、以下については寄附金の対象外となりますのでご注意ください。
■ 広告宣伝や見本品として使用される費用
知名度向上、将来の売上に繋がる可能性があるため
■ 法人の役員が個人的に負担するべき支出
役員の給与としてみなされるため
その他の支出が寄附金に該当するかどうかは、個々の実態に即して判断することとなります。
※国税庁 タックスアンサー No.5281「寄附金の範囲と損金不算入額の計算」より
消費税法上では、寄附金は「不課税」として取り扱われます。つまり、消費税額には影響しないということです。
寄附金の支出は、対価を得て行われる取引ではないため、課税仕入れとはなりません。課税仕入れに該当しないということは、消費税の計算に関係がないことになります。
そのため寄附金を支払ったとしても、消費税額に変化はないのです。
法人税法上では、寄附金は「一定の金額が損金算入」されます。つまり、法人税額に影響があるということです。
ここで注意が必要なのは、寄附金の種類(寄附先)によって、損金算入の金額が変わるということです。
分類すると、以下の表のようになります。
法人が寄付した場合の税制上の優遇措置
※文部科学省「法人が寄附した場合の税制上の優遇措置」より
国や自治体、財務大臣指定の公益法人に対する寄附金は、全額が損金算入可能です。一方それ以外の寄附金については、限度額があります。
限度額算出式は、以下のようになります。
【一般の寄附金 損金算入限度額】
{(資本金等の額)×(当期の月数/12)×(2.5/1,000)+(所得の金額)×(2.5/100)}×1/4 |
【特定公益増進法人に対する寄附金 損金算入限度額】
{(資本金等の額)×(当期の月数/12)×(3.75/1,000)+(所得の金額)×(6.25/100)}×1/2 |
では具体例を挙げて考えてみましょう。普通法人、当期は12ヶ月として考えます。
例1
■ 一般の寄附金 損金算入限度額
(1,000万円 × 12/12 × 2.5/1,000 + 300万円 × 2.5/100) ×1/4
=25,000円
■ 特定公益増進法人に対する寄附金 損金算入限度額
(1,000万円 × 12/12 × 3.75/1,000 + 300万円 × 6.25/100) ×1/2
=112,500円(一般の寄附金がない場合は137,500円)
例2
■ 一般の寄附金 損金算入限度額
(5,000万円 × 12/12 × 2.5/1,000 + 1,000万円 × 2.5/100)×1/4
=93,750円
■ 特定公益増進法人に対する寄附金 損金算入限度額
(5,000万円 × 12/12 × 3.75/1,000 + 1,000万円 × 6.25/100)×1/2
=406,250円(一般の寄附金がない場合は500,000円)
上記の例ですと、寄附金の損金算入限度額はこのようになります。
法人で寄附金を支出する場面はあまり見かけませんが、寄附金を上手く活用した場合には税金対策になります。
不明な点がございましたら、辻・本郷 税理士法人にご相談ください。
参考サイト・参考文献
●【国税庁】タックスアンサー No.5281 寄附金の範囲と損金不算入額の計算辻󠄀・本郷 税理士法人