税務会計業務のポイント 2025.07.16 (UPDATE:2025.07.16)
アクタス税理士法人
近年、iDeCo(個人型確定拠出年金)を活用して資産形成を行う方が増えています。iDeCoで積み立てた資産は、60歳以降に「一時金」又は「年金」として受け取れます。令和7年度税制改正では、iDeCo等の「拠出限度額の引き上げ」と「退職所得控除規定等の見直し」が行われました。今回は、改正点のポイントを解説します。
老後資産形成の促進や勤務先の企業年金の有無等による拠出限度額の差異を解消する観点から、確定拠出年金(DC)の拠出限度額が引き上げられます。具体的には会社員等(下図の第2号)について、iDeCo独自の限度額がそれぞれ廃止され、企業年金への拠出額との合計に対する拠出限度額に一本化され、会社員等の共通拠出限度が月額5.5万円から月額6.2万円に引き上げられます。これによりiDeCoによる支援が最も必要となる企業年金のない会社員等については、年間で約28万円が拠出限度だったものが約75万円となります。また、国民年金第1号被保険者の国民年金基金とiDeCoの共通拠出限度額については、会社員等との公平性の観点から、7,000円の引上げが行われ月額7.5万円となります。
出典:令和6年12月厚生労働省 令和7年度 税制改正の概要(厚生労働省関係)
(1) 退職所得の概要
退職所得の算式は、「(退職金の収入金額-退職所得控除)×1/2=退職所得」となり、下記のとおり、勤続年数に応じた控除を受けることができます。これを「退職所得控除」といいます。
(2) 退職所得控除規定等の見直し
会社からの退職金とiDeCoの一時金を受け取る場合、両者に重複する勤続期間があると、退職所得控除額の調整が必要になります。従来は、退職金とiDeCoの一時金受取順序によって控除額の調整方法が異なり、課税の公平性に課題がありました。定年延長などにより、65歳以降に退職金を受け取るケースが増加していることを踏まえ、今回の改正では、勤続期間の重複排除に関する特例の適用期間が見直されました。
(3) 勤続期間の重複排除に関する特例とは
勤続期間の重複排除とは、同じ働いた期間に対して、退職所得控除を複数回受けることを回避するために設けられた特例になります。この勤続期間の重複排除の対象期間内に退職金やiDeCoの一時金受け取り(DC一時金)をすると勤続期間が重複している分、退職所得控除が減額します。
今回の改正ではiDeCoの一時金受け取りの後に退職金を受け取る際の調整規定が「前年以前4年以内」から「前年以前9年以内」に改正となりました。
(4) 退職所得控除に関する3つのルール
退職所得控除額の計算において、勤続期間の重複は、以下のルールに基づき控除額が調整されます。
A. 以下は、iDeCoと退職金の受取順序とタイミングによる調整対象の有無を示した例です。
A.他にも企業型DC(企業型確定拠出年金)が対象となります。また、小規模企業共済に係る解約手当金は退職金と同じ扱いのため、退職金と小規模企業共済を受け取る場合、5年ルールに注意が必要です。
それぞれ退職所得控除を満額利用するためには下表の通りに受給する必要があります。
(※) 小規模企業共済に係る解約手当金が調整対象となります。
A.短期退職所得については、「2分の1課税」が適用できない場合があります。
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