公認会計士 中田清穂の会計放談~RPA編~ 2019.04.01 (UPDATE:2020.12.21)
中田 清穂(なかた せいほ)
前回のコラムでは、「こまごまとした作業をどんどんロボ化することが、『使えるようになるコツ』」ではないかということを書きました。
実はこれは、私がこの2年間で気づいた大事なポイントなのです。
今さら説明するのも遅いのですが、「RPA」というのは、
言葉の通りに理解すると、「プロセス」の「自動化」ですから、「連続する作業」を自動的に実行させるということになります。
例えば、自動的に会計システムの帳票を必要とする人にメールで配信する場合、以下の一連の作業(process)をRPAのシステムに登録します。
この例では、ざっと14ステップの連続する作業(プロセス)を自動化したことになります。
ITスキルが必要ない(プログラミング知識がない)人でも、このくらいの作業であれば、1時間くらいでロボができます。
パソコンが苦手な人だと2時間かかるかもしれません。
しかし、Excelで簡単な表が作成できるレベル(高度なIF関数などは使えないレベル)であれば、1時間でできるでしょう。
RPAでロボを作り慣れてくると、20分くらいでできるようになります。
この一連の作業を「こまごまとした作業」としてロボを作るとしたら、例えば、以下のような作り方ができます。
(1)インターネット・エクスプローラーやクロームなどを立ち上げる。
(2)クラウドの会計ソフトのサイトを開く
(3)ログイン画面が開いたら、IDとパスワードを入力してログインする
(4)メインメニューが開いたら、「帳票出力」画面に変える
(5)「帳票出力」画面で、貸借対照表をCSV形式でエクスポート(出力)する
ここまでの作業だけを自動化(ロボ化)するのです。
いきなり14ステップのロボを作るより、はるかに簡単です。
「こんな短い作業を自動化してもあまり意味がない」と考える人は多いでしょう。
しかし、
(1)会計システムの帳票をダウンロードする頻度を考えてみてください。
さまざまな種類の多くの帳票をダウンロードする作業は少なくないのではないでしょうか?
(2)前日までの残高や取引高を会計システムで集計し終わる時刻を考えてみてください。
経理担当者(人間)が出社する何時間も前に集計が終わっていないでしょうか?
もし、(1)や(2)に該当する場合には、
しておいてくれれば、従来は経理担当者(人間)が出勤して、毎日やっていたことが終わっている状況が作れるのです。毎日の作業が「前倒し」でスタートできます。
「自動化する意味」を考え過ぎると、なかなか一体目のロボはできません。ここでとん挫してしまい、失敗するケースがとても多いようです。
「自動化して意味があるかどうか」よりも、「簡単に作れるかどうか」で作り始めるのがコツなのです。「簡単に作れる作業」をどんどんロボ化するのです。
別の表現で言えば、「連続する長い一連の作業(process)」を自動化するイメージではなく、「短い単発の作業(action)」を自動化するイメージです。
メール配信も同様です。
経理担当者は、実に多くの資料をエクセルやワードなどで作成しますね。
「資料を最終版として完成させる」ことは人間でしかできません。
AIは発達していますが、「資料を最終版として完成させる」ところまでは、当面無理でしょう。
ただ、完成した資料を
メール配信するのであれば、安価なRPAで簡単にできるのです。 「メールをするくらいの作業なら、いちいちロボを作らなくても、自分でやっても大した負担にならない」と考える人は多いでしょう。
しかし、メールをする頻度を考えてみてください。
さまざまなメールを一日に何回も送信していませんか?
もし、これに該当する場合には、
あるいは、メールをする時刻を考えてみてください。
海外子会社の就業時間外にメールしていませんか?時差で一日ムダにしていませんか?
もし、これに該当する場合には、
「RPAで自動化すべき業務(process)は何か」なんて考える時間があったら、「短い単発の作業(action)」を自動化し始めた方が早いのです。
そうしたら、「RPAを導入できない」なんてことにはならないでしょう。
こうすれば「誰でもできる」のです。
中田 清穂(なかた せいほ)
1985年青山監査法人入所。8年間監査部門に在籍後、PWCにて 連結会計システムの開発・導入および経理業務改革コンサルティングに従事。1997年株式会社ディーバ設立。2005年同社退社後、有限会社ナレッジネットワークにて、実務目線のコンサルティング活動をスタートし、会計基準の実務的な理解を進めるセミナーを中心に活動。 IFRS解説に定評があり、セミナー講演実績多数。