中田清穂の会計放談 2024.10.08 (UPDATE:2025.04.17)
中田 清穂(なかた せいほ)
今年7月末に、国際財務報告基準審議会(以下、IASB)が、「財務諸表における気候関連及びその他の不確実性の報告を改善するための設例」の提案をしています。
IASBと記載しましたが、書き間違いではありません。
これはISSB(国際サステナビリティ基準審議会)ではなく、会計基準を作成するIASBからの公開草案です。
つまり「会計基準」に関する会計基準です。
IASBが財務諸表における気候関連及びその他の不確実性の報告を改善するための設例を提案
結論からお話すると、サステナビリティ開示は、「非財務情報」にとどまらず、「財務情報」として取り扱うことになります。
具体的には、有価証券報告書の「事業の状況」で「サステナビリティに関する考え方及び取組」に開示することが義務となりましたが、それに加えて、「経理の状況」でも開示しなければならなくなる可能性が出てきたということです。
私は、この公開草案が、日本の上場企業に与える影響が少なくないのではないかと感じました。
少し具体的に説明します。
近年、日本だけでなく世界中の企業で、気候変動を始めとするサステナビリティに関する情報を、CSRや有価証券報告書で開示しています。
しかし、企業がこのようなサステナビリティ開示をしていても、財務諸表に与える影響までは、ほとんど開示されていません。
IASBは、企業が「気候関連の移行計画」などを開示している以上、その計画に沿った企業活動をしていけば、財務諸表に影響を与えることを検討するのは当然だという見解を公表することで、より適切な財務諸表が作成されるであろうことを期待しているのです。
公開草案には、8つの具体例が記載されています。
その一つが以下のような内容です。
「Example 7—Disclosure about decommissioning and restoration provisions」では、石油化学施設のプラントの除去タイミングが、気候変動の影響を受けて早まることで、割引現在価値が大きくなり、重要性が増加することへの影響を取り上げています。
IAS第37号「引当金、偶発負債および偶発資産」の開示要求を満たす必要があるかどうかを例示していると思われます。
つまり、資産除去債務に関する注記の例示だと思われます。
この他にも、減損会計の回収可能額の算定への影響などが例示されています。
中田 清穂(なかた せいほ)
1985年青山監査法人入所。8年間監査部門に在籍後、PWCにて 連結会計システムの開発・導入および経理業務改革コンサルティングに従事。1997年株式会社ディーバ設立。2005年同社退社後、有限会社ナレッジネットワークにて、実務目線のコンサルティング活動をスタートし、会計基準の実務的な理解を進めるセミナーを中心に活動。 IFRS解説に定評があり、セミナー講演実績多数。
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