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Peppolインボイスが経理の手間を省く ~最大8割の補助金も活用できる~

Peppolインボイスが経理の手間を省く ~最大8割の補助金も活用できる~

 中田 清穂(なかた せいほ)

すでに多くの方々はご存じだと思いますが、請求書をやり取りする際に「Peppol(ペポル)インボイス」というものがあります。

従来多くの企業では、請求書は「紙」でやり取りしてきましたし、今でも圧倒的多数だと思います。
しかし最近では、PDFファイルやCSVファイルなどの「電子ファイル」でやり取りするケースが増えてきています。
さらに、「Peppolインボイス」でやり取りするケースも増えてきています。
これらの業務のイメージを示したのが、以下の図です。

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(出処:キヤノンマーケティングジャパングループのサイトから筆者加筆:https://canon.jp/biz/trend/dwa-digital-invoice


Peppolインボイス」でやり取りするケースは、3番目の「標準形式データでやり取り」するケースです。

Peppolインボイス」がPDFファイルなどの「電子ファイル」でやり取りするケースと決定的に異なるのは、請求書のフォームや記載事項が標準化されていることです。
PDFファイルなどの「電子ファイル」は、「紙」と比べれば、発行側では、印刷・封緘・切手貼り・ポストに投函などの作業はなくなるので、その分は業務の効率化や残業代削減効果はあると思います。

しかし、PDFファイルなどは、作成する業者によって、フォームがバラバラだったり、請求書番号があったりなかったりして、受け取った企業として、業務の効率化には限界があります。

Peppolインボイス」は、こういった限界を一気に突破する画期的なやり方です。
Peppolインボイス」の「Peppol」というのは、国際標準なのです。
何の標準かというと、請求書のフォームや記載事項などの文書の仕様ルール、運用上のルール及びネットワークの標準規格なのです。
この「標準化」がもたらす意味は以下です。

  1. 請求書の発行側と受取側で異なるシステムが使われていても、変換や加工をする必要がなく、発行側のシステムから出力した「Peppol」データを、受取側の会計システムに仕訳登録することができます。
    この際、請求書番号も発行側と受取側で共有することができます。
    Peppolインボイス」を進めている会社では、1時間以上かかっていた請求書関連業務が数分で終わるようになった会社もあるようです。

  2. 請求書番号を発行側と受取側で共有することのさらなるメリットとして、受取側が請求書に基づく支払(振込)を行う際に、振込データに請求書番号も登録することで、発行側が請求書番号をキーにして、請求データと入金データを自動的に消込むことができるようになります。

  3. 結局、発行側も受取側も請求データを共有することになるので、振込間違いや振込漏れを探す手間も、圧倒的に少なくなります。
    発行側にも受取側にもメリットがあるのです。

  4. さらに、輸出入をしている会社は、海外の企業と請求書のやり取りが発生します。
    Peppolの導入が義務化されていたり、義務化が検討されている、EUやメキシコなどの中南米の企業と輸出入する際には、Peppolでの請求データがやり取りできないと、ビジネスに支障をきたすことになりかねません。

  5. 間違いや漏れが少ない会計帳簿が作成されることにより、税務申告の間違いも防げますし、税務調査や会計監査に対応する負担もかなり減るでしょう。

 

最近のクラウド会計ソフトでは、Peppol対応しているものが相当増えてきています。
Peppol対応していない会計ソフトを使うことは、大事な取引先や仕入業者を失いかねません。
「自社で使用する会計システムが自社のビジネスの足を引っ張る」ということになりうるでしょう。

Peppolインボイス」のメリットは他にもあります。
それは人的側面です。
標準化された仕様で請求書を作成するため、相手先ごとに異なる内容にするためのノウハウも必要ないので、「属人化」しにくく、業務の引継ぎがしやすくなります。
受取側も同様です。請求書がみな同じフォームで受け取れるので、仕訳の作成や登録、さらには支払にいたるまで、相手先ごとに異なる内容にするためのノウハウが必要なく、「属人化」しにくくなります。
経理人材の高齢化や不足が、会社の深刻な課題になっている場合には、とても大切なメリットと言えるでしょう。

ここで、「Peppolインボイス」を導入しようとしても、お金がかかるからやらない、という会社も多いようです。
しかし、現在日本では、中小企業のIT化を促進することで日本企業の間接業務の効率化を進めて、ひいては、日本経済の発展を促す方針(骨太の方針)が継続されています。
その流れで「IT補助金制度」が創設され、まだこの制度は生きています。
政府を上げて日本企業のIT化を進めているのになかなか進まないので、この「IT補助金制度」がまだ続いているのです。

しかし、最近の電子帳簿保存法やインボイス制度に関連して、「電子取引」によるエビデンスの電子保存が義務化されるなどの動きと共に、IT化を進める企業は増えています。
これらの企業の多くは、当然「IT補助金制度」を活用しています。つまり、「IT補助金制度」の予算の残りはどんどん少なくなっています。

周りの様子を見て判断すると、「Peppolインボイス」を導入しようとした時に、高額なコストが発生することも、十分にありうると思います。

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