リスキリングと人事DXの進め方 2025.01.30 (UPDATE:2025.01.30)
深瀬勝範(ふかせ かつのり)
リスキリング(学び直し)に対する関心が高まっています。
環境変化が進む中、企業は、リスキリングにより従業員一人ひとりのスキルを高めて、生産性を向上させることが必要になっています。一方、労働者は、より高い職務と報酬を得るためには、リスキリングによって専門的な知識・技術を習得していくことが必要になっています。
今や、リスキリングは、企業と労働者双方にとって最重要課題になっていると言えるでしょう。
このコラムでは、これから12回に分けて、リスキリングおよびスキルデータを活用して人事管理を行う「人事DX(デジタルトランスフォーメーション)」の進め方や事例について解説していきます。
リスキリングは、これまでに企業が行ってきた教育訓練とは大きく異なります。(【図表1】参照)
これまでの教育訓練は、「現在、担当している仕事の質を高める」ことを目的として、企業が実施するものでした。学ぶことは、主に「(社内で使用される)業務知識・技術」などであるため、日常業務の中で先輩社員が後輩を指導するOJT(職場内訓練)を中心に実施されました。一方、リスキリングは、「これから必要となる、新しい仕事に対応する」ことを目的とするため、企業と労働者の双方が挑戦意欲を持って主体的に取組むことが必要となります。学ぶことは「(社外でも通用する)専門知識・技術」や「ITスキル」などになるため、日常業務から離れた特別な研修(OFF-JT)を実施していかなければなりません。
なお、リスキリングを効果的に行うためには、キャリア開発や人的資本の情報開示などの施策との連動が必要であり、それを可能にする人事データの有効活用(人事DX)も並行して進めていくべきです。
【図表1】従来の教育訓練とリスキリングとの違い
このように社会全体で見れば、リスキリングは動き出したものの、「現時点では取組みを行っていない」という企業がいまだに数多く存在します。
これらの企業では、なぜ、リスキリングが進まないのでしょうか?
次回のコラムでは、この「リスキリングが進まない理由」について説明します。
深瀬勝範(ふかせ かつのり)
Fフロンティア株式会社
代表取締役 人事コンサルタント 社会保険労務士
一橋大学卒業後、大手電機メーカーに入社、その後、金融機関系シンクタンク、上場企業人事部長等を経て独立。
現在、経営コンサルタントとして人事制度設計、事業計画の策定などのコンサルティングを行うとともに執筆・講演活動などで幅広く活躍中。
主な著書に『はじめて人事担当者になったとき知っておくべき、7の基本。8つの主な役割』
『Excelでできる 戦略人事のデータ分析入門』(いずれも労務行政)ほか多数。