公認会計士 中田清穂のIFRS徹底解説
中田 清穂(なかた せいほ)
平成25年3月26日、自民党政権になって初めての企業会計審議会(企画調整部会)が開催されました。
何も決定された事項はありませんでした。
しかし、私が注目したのは、経団連の委員の発言です。
経団連の委員は、『国際会計基準(IFRS)への当面の対応について』という配布資料を読み上げたようです。
その発言の中でもポイントになると感じたのが以下の2項目です。
(1)任意適用を予定している企業にとっては、適用の円滑化に向けた方策の方向性が、最終判断時期に影響を与える。 (2)任意適用をまったく予定しない企業(日本基準、米国基準の適用を継続する予定の企業)にとっては、今後も現行の枠組みが維持されることの明確化が必要となる。 |
ここから感じたのは、経団連はIFRSの任意適用について、必ずしも慎重な立場ばかりではなさそうだということです。
(2)の「任意適用を全く予定しない企業」にとっては、IFRSは全く関係ない話であることを明確にしていくことを強調しています。
しかし、(1)の「任意適用を予定している企業」については、もっとIFRSを円滑に適用できるようにすることが重要であり、さらに踏み込んで、その円滑化をどうやっていくのかということが、さらなるIFRS適用企業の拡大の動きに、重要な影響を与えるということです。
つまり経団連は、「任意適用予定企業」と「任意適用を全く予定しない企業」に対応する「2方面作戦」だということです。
従来経団連は、(1)の「任意適用を予定している企業」の動きに触れたことはありませんでした。
それが今回はさらに、今後どうなるかを企業がわかるように(予見可能性を高めるように)、審議会のロードマップを要求することにまで踏み込んだことは、今回の審議会の最大の特徴だと考えています。
経団連も金融庁も、日本でIFRSの任意適用を拡大することが、IASBへの発言力を高める上で重要であるとの認識で一致していると感じます。
企業会計審議会で配布された資料『国際会計基準(IFRS)への当面の対応について』は、以下のサイトでダウンロードできますので、参考にしてください。
『資料5』として配布されています。
http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/siryou/soukai/20130326.html
さらに、2013年4月3日までにIFRSを適用したり、任意適用を表明したりした企業を以下にまとめましたので、参考にしてください。
1.すでにIFRSの任意適用を行い、有価証券報告書や四半期報告書で開示している企業(8社)
会社名 | 運用開始時期 |
---|---|
日本電波工業 | 2010年03月期4Q |
住友商事 | 2011年03月期4Q |
HOYA | 2011年03月期4Q |
日本板硝子 | 2012年03月期4Q |
日本たばこ産業 | 2012年03月期4Q |
ディー・エヌ・エー | 2013年03月期4Q |
アンリツ | 2013年03月期4Q |
SBIホールディングス | 2013年03月期4Q |
2.まだIFRSでの開示は行っていないが、任意適用を行うことを表明している企業(13社)
会社名 | 運用開始時期 |
---|---|
トーセイ | 2013年11期1Q |
楽天 | 2013年12月期1Q |
中外製薬 | 2013年12月期1Q |
双日 | 2013年03月期4Q |
マネックスグループ | 2013年03月期4Q |
三菱商事 | 2013年03月期4Q |
丸紅 | 2014年03月期1Q |
ソフトバンク | 2014年03月期1Q |
旭硝子 | 2013年12月期4Q |
アステラス製薬 | 2014年03月期4Q |
武田薬品工業 | 2014年03月期4Q |
三井物産 | 2014年03月期4Q |
電通 | 2015年03月期4Q |
3.正式な公表はしていないが、新聞等で任意適用を行う企業として報道等された企業(9社)
会社名 | 報道等の日付 |
---|---|
SUMCO | 会社発表:2013/03/26 |
日本電産 | 日経新聞:2011/07/14 |
伊藤忠商事 | 日経新聞:2011/07/14 |
エーザイ | 日経新聞:2012/06/19 |
第一三共 | 日経新聞:2012/06/19 |
豊田通商 | 日経新聞:2012/06/30 |
本多技研工業 | 日経新聞:2012/08/17 |
セイコーエプソン | 日経新聞:2012/08/31 |
リコー | 日経新聞:2012/10/16 |
以上
中田 清穂(なかた せいほ)
1985年青山監査法人入所。8年間監査部門に在籍後、PWCにて 連結会計システムの開発・導入および経理業務改革コンサルティングに従事。1997年株式会社ディーバ設立。2005年同社退社後、有限会社ナレッジネットワークにて、実務目線のコンサルティング活動をスタートし、会計基準の実務的な理解を進めるセミナーを中心に活動。 IFRS解説に定評があり、セミナー講演実績多数。