公認会計士 中田清穂のIFRS徹底解説
中田 清穂(なかた せいほ)
グループ会計方針を作成する上で、重要性の判断規準について、どのように進めるのか、どのように取り扱うのかが、問題になります。
監査法人主導のプロジェクトでは、後回しになりがちです。
重要かどうかは、決算の都度判断したいからです。
しかし、IFRSは『原則主義』なので、重要性の判断規準に関する明文規定や実務指針はほとんどありません。したがって、グループ会計方針として、自社のための重要性の判断規準を定めておく必要があります。
そうしないと、決算の都度、会計監査人の判断に振り回されることになるのです。
特に、会計監査人は、自らの責任をできるだけ回避できるようにするために、重要性の判断規準を厳しくしたがるでしょう。これが、『厳格主義』につながるのです。
企業が自社のための重要性の判断規準を確立することは、『厳格主義』に対抗する上で、非常に重要な意味を持つのです。
それでは、企業が自社のための重要性の判断規準を確立するためには、どのようなアプローチがあるでしょうか。つまり、重要性の判断規準をどうやって策定すれば良いかということです。
このアプローチには、以下の2つがあります。(いずれも中田による造語)
このアプローチは、従来の日本の会計制度で規定されている重要性の判断に関するものをかき集めて、それをグループ会計方針書に反映するやり方です。
これには以下のメリットがあります。
ただし、このアプローチには、以下のデメリットがあります。
従来の日本の会計制度で規定されている重要性の判断規準とは全く別のものとして、IFRSの概念フレームワークの考え方に沿うような規定を自ら作り上げて、グループ会計方針書に反映するやり方です。
これには以下のメリットがあります。
ただし、このアプローチには、以下のデメリットがあります。
2の独自規定創造アプローチは、難易度も高くいばらの道とも言えるでしょう。
実際、これができないとなると、残念ながら1の従来規定引用アプローチを基本に検討するしかないと思います。
以上
中田 清穂(なかた せいほ)
1985年青山監査法人入所。8年間監査部門に在籍後、PWCにて 連結会計システムの開発・導入および経理業務改革コンサルティングに従事。1997年株式会社ディーバ設立。2005年同社退社後、有限会社ナレッジネットワークにて、実務目線のコンサルティング活動をスタートし、会計基準の実務的な理解を進めるセミナーを中心に活動。 IFRS解説に定評があり、セミナー講演実績多数。