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第161回 設備投資に対する税制上の優遇措置

第161回 設備投資に対する税制上の優遇措置

 アクタス税理士法人


テレワークなど働き方の変化への対応やインボイス制度、電子取引などの新たな制度への対応のため、企業ではクラウドシステムなどの新たなシステムの導入や既存システムを改修する機会が増えています。企業の生産性を高めるこのような設備等の取得を支援するために国や地方自治体では、税制優遇制度や補助金などでその後押しをしています。その中から今回は、中小企業向けの設備投資税制を整理しお伝えします。

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■中小企業者等の設備投資に関する税額控除等の優遇税制

インボイス制度や電子帳簿保存法の電子取引への対応のため、会計システムや請求書発行システムなどのソフトウェアへの投資が増加しております。このようなものを含め、中小企業者等(資本金が1億円以下の普通法人などをいいます。)向けの設備投資に対する税額控除等の優遇措置は、主に次のものがあります。

 



中小企業投資促進税制 中小企業経営強化税制
適用対象法人 青色申告書を提出する中小企業者等 青色申告書を提出する経営力向上計画の認定を受けた一定の中小企業者等
適用期間 令和5年3月31日までに対象設備を取得等して指定事業(電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業、娯楽業(映画業を除く)等を除く)の用に供すること
適用対象設備
(中古資産を除く)
次のもので指定事業の用に供するもの
・機械装置:160万円以上
・測定工具及び検査工具:120万円以上
・ソフトウェア:70万円以上
・貨物自動車:3.5t以上
・内航船舶:全て
経営力向上計画に基づき取得する経営力向上に著しく資する設備等で一定の設備
・機械装置:160万円以上
・工具器具備品:30万円以上
・建物附属設備:60万円以上
・ソフトウェア:70万円以上
選択適用 特別償却 取得価額の30% 取得価額の100%(即時償却)
税額控除 7%
(資本金3千万円以下の法人に限る)
10%
(資本金3千万円超1億円以下の法人は7%
限度額 税額控除額は合計で法人税額の20%を上限(超える金額については1年間繰越可能)

インボイス制度開始後は、買手は、インボイスを発行できない免税事業者からの仕入について、経過措置(裏面Q3参照)経過後は仕入税額控除を行うことができなくなります。取引価格が変わらなければ、免税事業者からの仕入は仮払消費税が計上できない分、費用が増加することになります。

■固定資産税(一定の償却資産と事業用家屋)の課税標準の特例

適用対象法人が労働生産性を一定程度向上させるために必要となる生産や販売活動等に直接使用する一定の設備等を導入する計画を策定・申請(導入計画の申請には工業会等の証明書が必要)し、認定を受け、取得等した設備等については、固定資産税の課税標準が3年間ゼロ~1/2となる特例措置があります。(軽減率は市町村の条例で各々定められています。)

適用対象法人 中小企業者のうち、先端設備等導入計画の認定を受けた法人
適用対象設備等
(中古資産を除く)
生産性向上に資する指標が旧モデル比で年平均1%以上向上する次の設備等
①    機械装置:160万円以上 ②測定工具及び検査工具:30万円以上
③    器具備品:30万円以上④建物附属設備:60万円以上⑤構築物:120万円以上
⑥    事業用家屋:120万円以上
ソフトウェアは無形固定資産に該当するため固定資産税の対象にはなりません。

■少額減価償却資産の特例

青色申告法人である中小企業者等は、取得価額30万円未満の少額の減価償却資産につき、取得価額の全額を事業の用に供した事業年度の損金にすることができます(適用事業年度の合計額が300万円が限度)。なお、IT導入補助金など国等からの補助金を活用して固定資産を取得等した場合、取得に充てた補助金の額を取得価額から減額し30万円未満であれば、少額減価償却資産の特例の適用が可能です。

■中小企業防災・減災投資促進税制

青色申告法人である中小企業者が、令和5年3月31日までの間に事業継続力強化計画等の認定を受け、計画認定日以後1年を経過する日までに、災害への事前対策強化のための防災減災設備(自家発電設備や制震免震装置等)を取得等し事業供用した場合、取得価額の20%の特別償却が適用できます。

■Q&A

Q1.AIやクラウドシステムなどのデジタル技術への投資に対する優遇税制はありますでしょうか。

A デジタルによる企業変革(デジタルトランスフォーメーション(DX))の実現を支援するためにデジタル技術への投資に対する優遇税制として、DX投資促進税制が用意されています。この税制は、産業競争力強化法に基づく事業適応計画の認定を受け、AIやクラウド技術を活用し、データの連携や共有等、業務のデジタル化を行うために必要となる一定の資産を取得等した場合に適用を受けることができます。

適用対象法人 青色申告書を提出する個人または法人で、事業適応計画の認定を受けたもの
適用対象資産 ・ソフトウェア
・繰延資産(クラウドシステム移行に係る初期費用のみ)
・器具備品・機械装置(ソフトウェア・繰延資産と連携して使用するものに限る)
選択適用  特別償却 取得価額の30%
 税額控除  3%又は5%(法人税額又は所得税額の20%を上限)

Q2.中小企業経営強化税制と他の税制との重複適用は可能ですか。

A 同じ減価償却資産で2以上の特別償却や税額控除に係る税制の適用を受けることはできませんが、固定資産税の課税標準の軽減措置とは重複して利用することが可能です。

Q3.経営力向上計画とはどういった内容のものでしょうか。

A 「経営力向上計画」とは、経営力向上のための人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上、設備投資等により事業者の生産性を向上させるための取り組み内容を記載した事業計画です。経営力向上設備等の取得は経営力向上計画の認定後に行うことが原則ですので注意が必要です。

Q4.少額減価償却資産の特例を適用した資産に固定資産税(償却資産税)は課税されますか。

A 有形減価償却資産について少額減価償却資産の特例を適用した場合には、固定資産税(償却資産税)の課税対象となります。また、取得価額が10万円未満のものを一時に損金算入した場合や、取得価額20万円未満のものを3年で損金に算入する規定を適用した場合には、有形減価償却資産であっても固定資産税(償却資産税)の対象にはなりません。

Q4.設備投資について国からの補助金等はどのようなものがありますか。

A 中小企業や小規模事業者が、ITで業務効率化やデータ活用、インボイス制度への対応など、自社のニーズに合ったソフトウェアなどのITツールを導入する経費の一部を補助するものとしてIT導入補助金があります。インボイス制度への対応を見据え、デジタル化基盤導入枠として会計ソフトや受発注ソフト、レジの導入支援などへの支援が拡充されています。

適用対象者 中小・小規模事業者(業種・組織形態別に資本金と従業員数に応じて策定)
補助対象経費 会計ソフトや受発注ソフト等のITツールの導入/利用費用、PCやレジ等のハードウェア等
補助額 ITツール クラウドPC等 PC等 レジ等
補助額5万円~50万円以下 補助額50万円超~350万円 最大2年分の
クラウド利用料
上限額
10万円
上限額
20万円
公募期間 第17次締切:令和4年12月22日 第18次締切:令和5年1月19日

 

 

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