税務会計業務のポイント 2023.06.22 (UPDATE:2024.11.20)
アクタス税理士法人
役員への給与や経済的利益の供与は、損金算入について特に厳しい取扱いが設けられています。そのため、役員に対する金銭の支給や費用負担が税務上役員給与とみなされると、法人税や所得税について思わぬ課税が発生しうるため、十分注意が必要です。
役員給与のうち、その支給時期が1月以下の一定期間ごとであり、その事業年度の支給額が同額である「定期同額給与」、支給時期と金額をあらかじめ定めその内容を税務署に届出た賞与である「事前確定届出給与」、利益状況を示す指標等を基礎として算定される「利益連動給与」、会社を退職した役員に支給する「役員退職給与」いずれにも該当しない額は損金の額に算入されません。
「定期同額給与」の要件を満たしていても、その役員給与が不相当に高額である場合は、損金の額に算入されないことがあるため注意が必要です。過大役員給与の金額は、以下の基準によって判断されます。
1.形式基準:定款や株主総会などにより定めた役員給与限度額を超える部分の金額
2.実質基準:役員の職務内容、法人の収益や従業員給与の状況、同業種・同規模の他の法人の状況などに
照らし、職務の対価として相当である額を超える部分の金額
役員賞与は原則損金とはなりません。ただし、株主総会や取締役会で支給時期と金額を事前に定め、かつ、一定の期限までに税務署長に対して届出書を提出したものは、その支給時に損金とできます。これを「事前確定届出給与」といいます。要件を満たすと損金となる事前確定届出給与ですが、「不相当な高額な部分の金額」の判定は、「定期同額給与」、「事前確定届出給与」等をそれぞれ個別に行うのではなく、総額で判定することになりますので、上記の「形式基準」、「実質基準」に含めて考えておくことがポイントとなります。
なおこの届出書は原則として、株主総会等の決議日から1月を経過する日またはその事業年度開始の日から4月を経過する日のいずれか早い日までに提出する必要があります。
退職直前の報酬月額 × 在任年数 × 役員の職責に応じた倍率(功績倍率) |
役員給与には、金銭によるもののほか、経済的利益を供与する場合も含まれます。経済的利益には、例えば、役員に安く社宅を貸与する場合も含まれますが、「賃貸料相当額」を受領していれば、給与課税されません。役員社宅の「賃貸料相当額」は、従業員社宅と異なり、床面積によって判断計算します。
(鉄筋コンクリート造)
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小規模な住宅 |
一般の住宅 |
豪華社宅 |
床面積 |
99㎡以下 |
99㎡超 |
240㎡超 ※ |
賃貸料 相当額 |
次の①~③の合計額 ①建物の固定資産税課税標準額×0.2% ②12円×(建物の総床面積÷3.3㎡) ③敷地の固定資産税課税標準額×0.22% |
【自社所有社宅】 次の①~②の合計額×1/12 ①建物の固定資産税課税標準額×10% ②敷地の固定資産税課税標準額×6% 【借上社宅】 上記と実際の賃料×50%といずれか多い金額 |
通常支払うべき使用料相当額 |
※価格や内装等から総合的に判定します。また床面積240㎡以下でも、個人の嗜好を著しく反映したものは豪華社宅とされます。
A. 役員に対し経済的な利益の供与をした場合、それが所得税法上給与課税されないものであり、かつ、法人がその役員に対する給与として経理しなかったときは、給与として扱われません。一方、給与課税されるものである場合、その額が毎月おおむね一定であるものは「定期同額給与」に該当し、その他のものは定額同額給与に該当せず、損金の額に算入されません。
A. 無利息貸付を行った場合、次の利率を用いて計算した「利息相当額」が給与として課税されます。
(1)会社が他から借り入れて貸付けた場合……その借入金の利率
(2)その他の場合……以下に掲げる利率
貸付日 |
H30~R2年 |
R3年 |
R4~R5年 |
利率 |
1.6% |
1.0% |
0.9% |
なお、「利息相当額」と実際に支払う利息の額との差額が1年間で5,000円以下である場合など、一定の場合には、「利息相当額」について給与課税しなくてもよいこととなっています。
A. 令和3年通達改正により、「所得税法上」の退職所得に該当する譲渡制限付株式であっても、「法人税法上」は退職給与として損金算入が認められなくなりました。損金算入するには「事前確定届出給与」に該当させることが必要となります。なお、①職務執行期間開始日から1月以内に取締役会等で譲渡制限付株式に係る報酬債権の額等を定め、②①の取締役会等から1月以内に譲渡制限付株式を交付するものについては、「事前確定届出給与」であっても事前の届出書の提出が不要なものとなります。
譲渡制限付株式の損金算入時期は、給与等が生ずることが確定した日の属する事業年度とされ、会計上は「役務提供期間」に応じて株式報酬費用等を計上することとなります。
A. 役員が不正行為により会社に損害を与えた場合や、著しい判断ミスなどにより株主が著しく不利益を被った場合、その責任を追及しない会社に代わって株主自身が直接役員に対して訴えを提起することができます。この訴訟費用を会社が負担した場合、判決結果により次のような取扱いとなります。
判決 |
税務の取扱い |
損金算入か否か |
役員勝訴の場合 |
会社費用 |
損金算入 |
役員敗訴の場合 |
役員賞与に該当 |
損金不算入 |
訴訟が取り下げられた場合 |
会社費用 |
損金算入 |
アクタス税理士法人
東京と大阪を中心に計4拠点をもつアクタスグループの一員。 アクタス社会保険労務士法人、アクタスHRコンサルティング、アクタスITソリューションズと連携し、 中小ベンチャー企業から上場企業まで、顧客のニーズに合わせて、税務会計、人事労務、システム導入支援の各サービスを提供しています。