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電子保存の対象となる「帳簿」や「エビデンス」

電子保存の対象となる「帳簿」や「エビデンス」

 中田 清穂(なかた せいほ)

■税務上、保存することが規定されている帳簿とエビデンス(書類)

青色申告の承認を受けている法人は、法人が行った取引を記録した「帳簿」と、その取引等に関して作成したり受け取ったりした「書類」を保存しなければなりません(法人税法第126条、同第150条の2、法人税法施行規則第54条)。

「帳簿」には、例えば総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳などがあります(法人税法施行規則第54条、同59条及び同別表21)。
法人税法施行規則第54条には、総勘定元帳と仕訳帳は、明確に示されていますが、そのほかの「帳簿」は、法人税法施行規則第59条第1項で、「法人の資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引に関して作成されたその他の帳簿」という表現だけで、明確にはわかりません。
しかし、「別表21」を見れば、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳などが必要になることがわかります。

「書類」には、例えば棚卸表、貸借対照表、損益計算書などの「決算関係書類」の他に、注文書、契約書、領収書などのエビデンスがあります(法人税法施行規則第67条)。

■帳簿と書類の保存期間

「帳簿」と「書類」を保存する期間も、税法で決められています。
保存期間は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間です(法人税法施行規則第59条)。
なお、青色申告書を提出した事業年度で欠損金額(青色繰越欠損金)が生じた事業年度、または青色申告書を提出しなかった事業年度で災害損失金額が生じた事業年度においては、10年間(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年間)となります(法人税法施行規則第26条の3)。

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■電子的に保存しなければならない帳簿と書類

(1)帳簿の電子保存

  1. 「帳簿」については、電子的に保存する「義務」はありません。
  2. クラウドやソフトウェアなどで「会計システム」を使って、仕訳帳や総勘定元帳を作成していても、紙」に出力して保存すれば問題ありません。ただ、「紙」に出力するための用紙代や人件費などを節減するなどの目的で、「紙」ではなく、「電子的」に保存することも認められています。
  3. 今まで帳簿を「紙」で出力していて、今後「電子的」に保存する方法に変更する場合には、税務署への申請手続きは必要ありません。「電子保存」に変更しようと決めたときから、電子帳簿保存法の要件に従って保存していけば良いのです。
  4. 「帳簿」を電子的に保存するための要件は、電子帳簿保存法施行規則第3条第1項で、以下のように規定されています。

  5. ①訂正・削除履歴の確保(施行規則第3条第1項第1号)
  6.  帳簿に係るコンピューターでの処理に、次の要件を満たすシステムを使用すること。
    1. (イ) 帳簿に係る電磁的記録に係る記録事項について訂正又は削除を行った場合には、
    2.   これらの事実及び内容を確 認することができること
    1. (ロ) 帳簿に係る記録事項の入力をその業務の処理に係る通常の期間を経過した後に行った場合には、
    2.   その事実を確認することができること
    3.  
  1. ②相互関連性の確保(施行規則第3条第1項第2号)
  2.  帳簿に係る電磁的記録の記録事項とその帳簿に関連する他の帳簿の記録事項との間において、
  3.  相互にその関連性を確認できるようにしておくこと

  4. ③関係書類等の備付け(施行規則第3条第1項第3号)
  5.  帳簿に係る電磁的記録の保存等に併せて、
     システム関係書類等(システム概要書、システム仕様書、操作説明書、事務処理マニュアル等)の備付けを行うこと

  6. ④見読可能性の確保(施行規則第3条第1項第4号)
  7.  帳簿に係る電磁的記録の保存等をする場所に、その電磁的記録での処理ができる、
     コンピューター、プログラム、ディスプレイ及びプリンタ並びにこれらの操作説明書を備え付け、
     その電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で、
     速やかに出力できるようにしておくこと

  8. ⑤検索機能の確保(施行規則第3条第1項第5号)
  9.  帳簿にかかる電磁的記録について、次の要件を満たす検索機能を確保しておくこと
    1. (イ)取引年月日、勘定科目、取引金額その他の
        その帳簿の種類に応じた主要な記録項目を検索条件として設定できること
    2. (ロ)日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること
    3. (ハ)二つ以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること
    4.  

(2)書類の電子保存

  1. 書類については、電子的に保存する「義務」があるケースと、「義務」がないケースがあります。

  2. ①電子的に保存する「義務」があるケース
  3.  以下のような方法で書類を入手したり作成したりするケースでは、「電子的」に保存する必要があります
    1. (ア)    電子メールでのやりとり
    2. (イ)    インターネットのホームページからのダウンロードによる入手
    3.    (Amazon、楽天、ネット通販、スマホ代、交通系ID決済、クレジットカード支払明細などなど)
    4. (ウ)    ホームページ上やメール本文に表示される請求書や領収書等
    5. (エ)    ファイル保存機能のあるFAXでのやりとり
    6. (オ)    EDI取引でのやりとり
    7. (カ)    クラウドサービスを利用したやりとり
  4. 上記(ア)から(カ)はすべて「電子取引」による書類の入手とされています。
  5. そして、これら「電子取引」によって入手された書類は、「電子的に保存」する義務があるのです。
  6. ただ、2023年12月31日までは「宥恕措置」があり、また2024年1月1日以降には、「猶予措置」や「緩和措置」があるので、書類をやりとりするタイミングと各措置との関連を正確に把握しておく必要があります。
  7. これらの措置については、次回以降に整理して説明します。

  8. ②電子的に保存する「義務」がないケース
  9. 上記①のような、電子的にやりとりするのではなく、相手先との間で「紙」でエビデンスをやり取りするケースでは、「電子的」に保存する必要はありません。
    「紙」でやりとりするエビデンスは、「紙」で保存すれば良いのです。
  10. ただ、「紙」をファイリングする事務用品代や人件費などを節減するなどの目的で、「紙」ではなく、「電子的」に保存することも認められています。
  11. 「紙」でやりとりするエビデンスを「電子的」に保存する方法を、「スキャナ保存」と言います。
  12. 今までエビデンスを「紙」のまま保存していて、今後「スキャナ保存」に変更する場合には、税務署への申請手続きは必要ありません。「スキャナ保存」に変更しようと決めたときから、電子帳簿保存法の要件に従って保存していけば良いのです。

  13. 「スキャナ保存」を行うための要件も電子帳簿保存法に規定がありますが、次回以降に別途説明します。

 

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