公認会計士 中田清穂の会計放談 2018.03.01 (UPDATE:2020.09.02)
中田 清穂(なかた せいほ)
「楽しい経理」という表現に、どのくらいの人が違和感をもつでしょうか。
非常に多くの人びとが「経理は楽しいとは思えない」と感じているように思います。
その場合の「経理」は、主に以下の業務を想定されていると思います。
などなどです。
みな地味です。
全て大変大切な業務ですし、なくてはならない業務です。
しかし、楽しくない・・・。ところで「楽しい」ってどういうことでしょうか。
「楽しい」と感じられるには、いろいろなことがあるとは思いますが、「予想すること」も楽しいことだと思います。
ドラマを見ていても、「この先どうなるか」と、ついつい考えてしまうようなドラマは、楽しいドラマ、「ハマる」ドラマですね。
競馬は、馬券(正確には勝ち馬投票券)を買ってレースが終わるまで、ドキドキです。
「自分が買った馬が勝つのか」、ドッキドキで楽しいですね。
ビジネスも最近は不確実性・不透明性がいや増し、ビジネスの将来を予測する経営者は、ドキドキしますが、楽しんではいられないかもしれません。
経営企画部門が、役員の夢を絵にしているだけの機能しか持っていない会社では、経理部門がビジネスを予測する機能を持っていれば、非常に優れた企業になるでしょう。
しかし、ほとんどの経理部門は、過去の実績把握に多くの工数を割き、将来予測をほとんど行っていないようです。
もし、経理部門が、自社のビジネス・ストーリーやビジネス・モデルを理解して、営業、製造あるいは開発部門に出向いて、現場とのコミュニケーションを密にして、適切なビジネス予測を行える部門になれば、社内での期待も高まり、経営トップだけでなく、社内のあらゆる部門から便りにされるでしょう。
そうなれば、経理はもっと楽しくなるように思います。
付け加えれば、経理部門が現場部門とコミュニケーションを取る際には、経理用語、特に勘定科目を使用しないようにすることです。
「経理が言うことはよくわからない」と言われる場合に、経理部門の担当者は、知らず知らずに、「減価償却費が・・・」とか、「固定費が・・・」とか、しまいには、「損益分岐点が・・・」などと言ってしまっているようです。
経理用語や勘定科目は、現場部門では普通使用していないので、わかりにくいものです。
それより、
「得意先への訪問回数は・・・」とか、
「提案書の提出回数は・・・」とか、
「新規顧客の来店人数は・・・」などといった、
現場の人びとが普段使っている言葉(現場のKPI)を使うと、コミュニケーションがスムーズになると思います。
そして、経営と現場を結び付けて、「非財務情報」と「財務情報」を結び付ける役割や機能を経理部門が持てるようになれば、経理部門は「なくてはならない存在」になるでしょう。
ビジネスの複雑な動きを勘定科目を中心とした会計の手法で理解する能力を持ち、数字に最もツヨい経理部門こそ、自社のビジネスの将来を予測する部門として、私が最も期待しているところです。
「過去情報」から「将来情報」に目を向け始めることが、経理が「楽しくなる」きっかけになるように思います。
中田 清穂(なかた せいほ)
1985年青山監査法人入所。8年間監査部門に在籍後、PWCにて 連結会計システムの開発・導入および経理業務改革コンサルティングに従事。1997年株式会社ディーバ設立。2005年同社退社後、有限会社ナレッジネットワークにて、実務目線のコンサルティング活動をスタートし、会計基準の実務的な理解を進めるセミナーを中心に活動。 IFRS解説に定評があり、セミナー講演実績多数。