公認会計士 中田清穂の会計放談 2020.07.07 (UPDATE:2020.10.03)
中田 清穂(なかた せいほ)
先日、あるパネルディスカッションのイベントに関して、事前打ち合わせがありました。
その際に、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、リモートワークが推奨されたことから、ある大手通信会社の管理部門の責任者の方に、 その会社での対応状況について、聞いてみました。
その会社では、「ほとんど」の経理・決算業務をリモートで実行することができたというお答えでした。
「ほとんど」というのは、「完全に」ということではないので、やはり会社に出社しなければならない業務があったということです。
その点をさらに問いかけてみると、固定資産税の納付手続きのために、出社せざるを得ないということでした。
請求書などが『紙』で会社に届けられるので、そのために出社されたのかと思い込んでいたら、請求書はまずPDFで送付してもらって、 出社自粛が解除された時に後から郵送してもらうことにしたそうです。
その他にも、財務会計システムはクラウド化して、自宅からでも財務会計システムを利用できるようにしていたので、
特にリモートワークに移行することに障害はなかったそうです。
それでも、固定資産税の納付手続きは、出社して上長の承認印や銀行届出印を押印して、固定資産税の納付書を銀行に持参して、納付する必要があります。
言うまでもなく、固定資産税は、「国税」ではなく「地方税」ですね。つまり、各自治体の管轄になります。
したがって、固定資産税の計算も各自治体が行い、自治体ごとに異なるシステムで計算されて、自治体ごとに異なるフォームの固定資産税通知書が、 みなさんのところに郵送されてくるわけです。
各自治体の固定資産税を納付する方法として、ネットで納付できるかどうかも、自治体によって異なります。
全国に支社・営業所や工場・倉庫などで固定資産を持っている企業では、場合によっては、おびただしい数の、
しかもフォームもばらばらの固定資産税通知書が届いてきます。
さらに困った問題として、各自治体の固定資産税の計算に間違いが多いという問題があります。
いわゆる「固定資産税の過誤納問題」です。
最近の多額の計算間違いとして報道されたのが、「横浜市7億円過大徴税」事案です。
この横浜市の事案では、「建物は鉄骨鉄筋コンクリート造りと鉄骨造りの複合構造建築物だったが、鉄骨鉄筋コンクリート造りのみの評価基準を適用したため、 課税額が多くなった」とあります。
建物が何でできているのか、どのくらいの重さの材料を使っているのかを、正確に反映して計算しないといけません。
このように、固定資産税の計算は非常に複雑で、企業誘致のための固定資産税の減免措置なども計算を複雑にしています。
さらに、自治体の人事異動で、固定資産税の計算担当がころころ変わってしまうことも、ミスを招いている原因であると言われています。
しかし、圧倒的多数の人は、「役所が計算するものだから間違いはない」と思い込んでいます。通知書の金額を、何の疑いもなく納付しています。
しかし、ちょっと高額の固定資産税を納付している物件については、一度確かめてみる価値があります。
ちなみに、自治体が「過誤納」であったことを認めても、何年遡って還付してくれるかも、自治体によってバラバラなのです。
「そんなバカな!!」と叫びたくなりますね。
中田 清穂(なかた せいほ)
1985年青山監査法人入所。8年間監査部門に在籍後、PWCにて 連結会計システムの開発・導入および経理業務改革コンサルティングに従事。1997年株式会社ディーバ設立。2005年同社退社後、有限会社ナレッジネットワークにて、実務目線のコンサルティング活動をスタートし、会計基準の実務的な理解を進めるセミナーを中心に活動。 IFRS解説に定評があり、セミナー講演実績多数。