公認会計士 中田清穂の会計放談 2020.10.01 (UPDATE:2020.10.06)
中田 清穂(なかた せいほ)
日本商工会議所の簿記検定試験、新収益認識基準の内容から出題へ
2020年9月18日に日本商工会議所のサイトで、以下のような公表がされました。
2021年4月1日以降に施行する試験については、収益の計上方法等を具体的に定めた「収益認識に関する会計基準」(以下「収益認識基準」と略す)が日本基準採用企業を対象に2021年4月1日から本格的に適用されるため、その内容を反映した(主として1級、2級)新しい区分表に基づいて出題することとなります。 |
ざっとあげただけでも、従来とは全く異なる処理や手続きが必要になります。
「収益認識基準」を採用して会計処理をする会社は、主に、上場企業や会社法上の大会社になります。
非上場の企業でも採用することは可能ですが、あえて従来の会計処理を変える会社は少ないと思います。
日本商工会議所の簿記検定のサイトでは、「他団体との試験の違い」という項目で、以下のような説明があります。
企業規模や業種、業態などに関係なく、ビジネス実務に直結する知識やスキルを重視し、企業が必要とする人材の育成を目的に実施しており、多くの企業から高い評価と信頼を得ています。 |
重要なポイントは、「企業規模に関係なく人材育成を目的としている」ということです。
日本の会社は約400万社と言われています。そのうち、上場企業や会社法上の大会社は、たかだか1万社程度です。
ほんの一握りの会社しか使わない会計基準を、検定試験の出題範囲にするとどうなるでしょうか。
検定試験を勉強し、見事2級や1級に合格した経理担当者が、従来通り会計処理をしている実務で混乱をしないでしょうか。
また、上記のような特徴を持つ「収益認識基準」と従来の会計処理との違いを経理部長や社長に説明しても、経理部長や社長に理解されないどころか、正しい知識のない者だと判断されて、不当な評価を受けることにならないでしょうか。
いろいろな問題が発生しそうな気がしています。
今後の動向を注視していきたいと思います。
中田 清穂(なかた せいほ)
1985年青山監査法人入所。8年間監査部門に在籍後、PWCにて 連結会計システムの開発・導入および経理業務改革コンサルティングに従事。1997年株式会社ディーバ設立。2005年同社退社後、有限会社ナレッジネットワークにて、実務目線のコンサルティング活動をスタートし、会計基準の実務的な理解を進めるセミナーを中心に活動。 IFRS解説に定評があり、セミナー講演実績多数。