公認会計士 中田清穂の会計放談 2021.04.06 (UPDATE:2021.04.07)
中田 清穂(なかた せいほ)
先日、経済産業省経済産業政策局企業会計室(以下、経産省)から、意見交換をしたいという依頼があり、応じました。
意見交換は、現在上場企業が開示している情報に関連して、以下の4項目について、広く意見を聞く活動の一環ということでした。
① 現行のディスクロージャー制度等に対する課題(開示に対するガバナンスを含む)
② 開示に対する経営者層の意識
③ 開示プロセスにおける企業内の横断的連携体制の実態
④ 企業が決算業務改善等の新しい取組を進めるにあたって留意すべきポイント 等
企業の情報開示は、かねてより私の研究テーマであったため、事前に私の意見をまとめた資料を14ページに渡って用意しました。
以下は、私から説明した内容です。
(1) 企業サイドと投資家サイドの間の重要な経営指標のギャップ
現行のディスクロージャー制度等に関する最大の課題は、改正されている開示制度の趣旨を、企業がきちんと理解せず、依然として、「横並び」で「画一的」な開示をし続けていることだということです。
そして、企業のこのような開示の状況について、投資家サイドも強い不満の声をあげていないということです。
企業がろくな開示をしていなくても、投資家サイドが強い不満を言えば、企業側も開示内容を改善する可能性が出てくると思いますが、投資家は沈黙しています。
しかし、企業側が中期経営計画などで開示している経営指標と、投資家が必要としている経営指標が合っていないことは、一般社団法人生命保険協会などでの調査で明らかになっています。
具体的には、企業は「売上」や「利益」を中心とした経営指標を開示しているのに対して、投資家は、ROE、ROIC、資本コストなどの経営指標を開示してほしいと考えているのです。
(2) 経営者における教育の問題
企業サイドと投資家サイドの間に重要な経営指標のギャップが生じる原因として、「教育」の問題があります。
「教育」というのは、「ビジネス実学」ともいうべき、ビジネスを行うために必要な教育です。
これが日本では満足に行われていません。
日本の大学や大学院では、「経済ビジネス系学部」として、経済学部、経営学部、商学部などがあげられます。
しかし、各学部においては、「国際金融論」や「マクロ経済学」などの専門学者が教壇に立って、自分の専門領域の講義を行います。
しかし、そういった学問が「ビジネスにどう役立つのか」「ビジネスをする上でどのように活用すれば良いのか」といったことは教えていません。
だから、日本の大学を卒業してすぐに企業できる人材はほとんどいないのです。
アメリカなどとは全く違うのです。
中田 清穂(なかた せいほ)
1985年青山監査法人入所。8年間監査部門に在籍後、PWCにて 連結会計システムの開発・導入および経理業務改革コンサルティングに従事。1997年株式会社ディーバ設立。2005年同社退社後、有限会社ナレッジネットワークにて、実務目線のコンサルティング活動をスタートし、会計基準の実務的な理解を進めるセミナーを中心に活動。 IFRS解説に定評があり、セミナー講演実績多数。