公認会計士 中田清穂の会計放談 2020.05.12 (UPDATE:2020.10.02)
中田 清穂(なかた せいほ)
新型コロナウイルスの感染拡大で、緊急事態宣言が延長され、自宅で仕事をされることも多くなってきたかと思います。
特に3月決算の会社では、他の部署が出社を控えている中で、やむを得ず出社して決算作業をするとしても、毎日出社ではなく、何日かは自宅で作業をするように指示を受けている方々もいらっしゃると思います。
これは自宅にいるとは言え、お仕事であって休暇ではありません。
しかし、会社で仕事をするのと比べると、「自分の時間を作りやすい」のではないでしょうか。
話は変わりますが、『アイザック・ニュートン』という人は、みなさんご存じでしょう。
ニュートンの三大業績と言われているのが以下です。
そしてこの3つの業績が生まれた背景に、「疫病による感染症の拡大」があったのです。
この当時の疫病は、ペストでした。
ペストの大流行で、ニュートンが在籍していたケンブリッジ大学が閉鎖されました。
ニュートンは、ペスト禍を逃れて故郷の田舎に戻りました。
休暇は18か月間でした。
この18ヶ月の休暇中に、上記「三大業績」に関わる研究と実験に没頭したのです。
ニュートンが大学の「雑務」に追われ、まとまった時間を得られなければ、微分積分も、プリズムの分光も、万有引力も、きちんとした成果としては、後世に残せなかったかもしれません。
何よりも、ニュートンがペストによる感染で死ななかったことは、人類にとって、幸運だったと思います。
この18か月間のことは「創造的休暇」と言われているようです。
みなさん!!
「創造的休暇」ですよ!
「創造的休暇」です!!
今回の新型コロナウイルスの感染拡大は、多くの人々にとって、「災難」と言えるでしょう。
しかし、これは別の見方をすれば、「紙が与え給うた時」とも言えます。
「自粛」の中で生まれた時間をどのように生かすのか、それはみなさん個人個人の自由です。
しかし、この時間を生かさなければ、新薬やワクチンが開発され、いずれ感染拡大が終息した後、「元に戻る」ことになるでしょう。
今、ネットや各種報道では、「アフターコロナで世界が変わる」と騒がれています。
アフターコロナで経理部門は変わるでしょうか。
私は、アフターコロナで経理部門が変わる確率は、50%、つまり半々だと感じています。
結構悲観的です。
その考えの根拠は、そもそも経理部門は「変化を疎んじてきた」ということです。
「エビデンスの電子化」、「スキャナ保存制度の活用」、「ワークフロー・システムの導入」、「電子契約」、「子会社や監査人とのコミュニケーション・ツール」など、これまで着々と対応していれば、「実査・立ち合い」などの監査対応を除けば、ほとんど出社しなくても、決算ができていたと思います。
このようなIT対応は、従来「費用対効果が明確でない」ということで、疎んじられてきたのです。
しかし、今回、在宅勤務を余儀なくされた経理担当の方々は、IT対応の目的は、「費用対効果」ではなく、「生産性の向上」であったり、社員、監査人及び社会の人々の「健康と安全」を確保することだったりするのだ、ということを理解しやすくなったのではないでしょうか。
今回「与えられた時間」に、経理部門のIT対応について、じっくり研究と検討をしてみることは、アフターコロナで経理部門を変化に対応させる上で、とても重要だと思います。
「創造的『自粛』」にするかどうかは、みなさん自身の問題です。
中田 清穂(なかた せいほ)
1985年青山監査法人入所。8年間監査部門に在籍後、PWCにて 連結会計システムの開発・導入および経理業務改革コンサルティングに従事。1997年株式会社ディーバ設立。2005年同社退社後、有限会社ナレッジネットワークにて、実務目線のコンサルティング活動をスタートし、会計基準の実務的な理解を進めるセミナーを中心に活動。 IFRS解説に定評があり、セミナー講演実績多数。