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受取請求書による支払業務の課題と対策

受取請求書による支払業務の課題と対策

 中田 清穂(なかた せいほ)

取引業者から物品を購入したりサービスを利用した場合、請求書が送付されてきて支払を行う必要があります。
支払漏れや遅延は、取引業者の資金繰りにも影響するため、絶対に間違ったり遅れたりしてはいけない経理処理です。

しかし、絶対に間違ってはいけない支払業務には、多くの課題があります。
まずは、受取請求書の特徴を整理します。

受取請求書業務の特徴

受取請求書の業務には以下のような特徴があります。

(1) 形式が様々:
  1. 取引業者から送付される請求書の形式(フォーム)は一様ではなく、様々です。
  2. 宛名の位置、作成日の位置、金額の位置など、取引業者によってバラバラです。

(2) 紙が多くその枚数も多い:
  1. わが国では、請求書の電子化が少しずつ進んでいるものの、まだまだ主流は「紙」です。
  2. また、毎月購入する物品や利用するサービスも多岐にわたるため、枚数も膨大になることが多いようです。

(3) 入手部署が多い:
  1. 物品の購入やサービスを利用する部署は、工場や支社・営業所など、自社内のいろいろな部署にわたります。

(4) 8割以上が同じ業者:
  1. (2)で、取引業者からの請求書の種類も枚数も多いことに触れましたが、実は毎月同じ取引業者から物品を購入したり、サービスを利用しています。
  2. 会社にもよりますが、毎月の受取請求書のうち約8割は、同じ取引業者からの請求書である会社も多いと思います。

受取請求書業務の課題

上記の特徴から発生する、受取請求書業務の課題には以下のようなものがあります。

(1) 形式が様々であることから発生する課題:
  1. 取引業者から送付される請求書の形式(フォーム)がバラバラなので、その請求書の内容を理解するためには、一定程度の経験と知識が必要になります。
  2. このことは、支払業務の「属人化」という課題を生みます。
  3. また、フォームがバラバラなため、日付や金額の確認などが非効率になります。
  4. 「業務の非効率化」です。

(2) 紙が多くその枚数も多い:
  1. 「紙」を見ながらの業務でありかつ、枚数が多いので、確認作業工数が増大します。
  2. 当然、承認手続きにも多くの工数が発生します。
  3. また、枚数が多いことは、人為ミスも起きやすく、支払漏れや遅延の直接的な原因になります。会計処理を間違えるリスクも伴います。
  4. さらに、税務調査や会計監査などが入った際には、調査官などが要求するエビデンスを探す工数が大きいだけでなく、探すための経験と知識を要するので、ここでも「属人化」という課題が浮上します。

(3) 入手部署が多い:
  1. 物品の購入やサービスを利用する工場や支社・営業所などのいろいろな部署から、「紙」での承認を行い仕訳登録、支払を行うことは、社内での運搬、回覧、保管を行う作業が発生し、コストも発生します。
  2. これも「工数の増大」と「コストの増大」という課題を招く要因です。
  3. また、請求書が最初に送付されてくる現場は、工場や支社・営業所などなので、本社経理部門よりは、請求書の取扱いに関する重要性の意識が比較的低いこともあります。
  4. そうなると、請求書が送付されてから現場上長の承認を得て、漏れなく迅速に本社経理部門に送付することが、なかなかできない担当者や上司もいらっしゃるようです。これはやはり、支払漏れや遅延の直接的な原因になります。

(4) 8割以上が同じ業者:
  1. 毎月の受取請求書のうち約8割が、同じ取引業者からの請求書だということは、8割は毎月同じフォームの請求書だということになります。
  2. そうなると、同じような作業を毎月毎月繰り返す作業となり、作業を行う経理担当者の「モチベーションの低下」を招きかねません。
  3. このことは、経理業務の人気を下げることに繋がり、「経理人材の不足」を招きます。

以上のような、特徴と課題を関連付けた上で、受取請求書から発生する課題を整理すると以下のようになります。
  1. ① 属人化
  2. ② 非効率化
  3. ③ 工数過多
  4. ④ コスト増
  5. ⑤ 会計処理間違い
  6. ⑥ 支払漏れや支払遅延
  7. ⑦ 経理人材不足

  1. さらに、上記に加えて、経理の現場において、受取請求書業務に多くの優秀な経理人材の工数を割かざるを得ない状況では、経営意思決定のための有用な情報を作成して、経営者に報告する時間的余裕が生まれません。
  2. これは、「経営情報の質の低下」と「経営スピードの鈍化」を招きます。

次回からは、上記の課題を解決するための対応策をいくつか取り上げたいと思います。
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