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利益剰余金とは?計算と仕訳の方法、内部留保や当期純利益との違いを解説

利益剰余金とは?計算と仕訳の方法、内部留保や当期純利益との違いを解説

 スーパーストリーム

利益剰余金とは、会社が稼いだ利益の中で配当や設備投資に回されずに会社内に残される金額を指す言葉で、企業経営において重要な指標の一つとなります。

しかし、利益剰余金が持つ意味や計算方法、そして内部留保や当期純利益とどう違うのかについては、経営者の方はもちろん、経理担当者の方にとっても分かりにくく、複雑な問題かもしれません。

また、利益剰余金に関する正確な仕訳方法を理解し、適切に管理することは、企業の健全な財務状態を維持する上で不可欠な要素です。

そこで今回は、利益剰余金について、内部留保や当期純利益との違いや、適切な仕訳方法を徹底解説します。企業の経営に携わる方はもちろん、経理を担当する方も、ぜひ参考にしてください。

利益剰余金とは?基本的な概念と役割を解説

利益剰余金とは、会社が事業活動を通じて生み出した利益を内部に蓄積したお金のことで、一般に「内部留保」とも呼ばれます。

利益剰余金は、貸借対照表の純資産の部に区分され、会社の財務体質の強化や株主への配当原資として重要な役割を果たします。

利益剰余金の構成要素

利益剰余金は、主に次の3つの要素から構成されます。

  1. 利益準備金:法定準備金の一部で、配当金額の10分の1以上を積み立てることが会社法によって義務付けられています。
  2. 任意積立金:会社が独自の判断で積み立てる金額で、特定の目的のために設定されることがあります。
  3. 繰越利益剰余金:過年度の利益の積み重ねに、当期の利益(または損失)を加算した金額です。

利益剰余金の役割

利益剰余金は、企業にとって以下のような役割を果たします。

  • 財務体質の強化:利益剰余金が増えると自己資本も増え、会社の安全性が高まります。
  • 株主への配当の原資:利益剰余金は株主配当の原資になり、増配や株主優待の拡充に利用されることがあります。

利益剰余金の配当と処分

次に、利益剰余金の配当と処分について解説します。

利益剰余金の配当とは

利益剰余金の配当とは、会社が獲得した利益を株主に分配することを指します。これは、会社の財産が株主に流出することを意味し、利益剰余金がその原資となります。

利益剰余金の処分とは

利益剰余金の処分とは、利益剰余金を会社内で留保することで、利益準備金の積立や任意積立金の積立などが含まれます。これにより、会社の財務体質の強化や将来の投資資金としての内部留保が可能になります。

具体的な処理方法は以下の通りです。

利益準備金の積立

会社法では、配当金額の10分の1以上を利益準備金として積立てることが義務付けられています。また、利益準備金と資本準備金の合計が資本金の4分の1に達するまで、配当金の10分の1を利益準備金として積み立てる必要があります。

任意積立金の積立

会社が任意で積み立てる金額で、特定の目的のために設定される積立金です。これには、修繕積立金や退職給付積立金など、特定の目的のために積み立てるものや、特に目的を限定しないものがあります。

繰越利益剰余金

過年度の利益の積み重ねに当期の利益(または損失)を加算した金額です。なお、繰越利益剰余金の配当や処分には、株主総会や取締役会の決議が必要です。

これらの処理は、会社の財務状態や経営の安定性を示す重要な指標となり、適切な管理と活用が企業の財務戦略において重要な役割を果たします。また、利益剰余金の配当と処分は、株主の利益還元と会社の持続可能な成長のバランスを保つために不可欠です。

このように、利益剰余金は会社の持続的な成長と安定、株主への利益還元のために存在し、経営の健全性を示す重要な指標の一つです。また、利益剰余金がマイナスになると、一般的に業績が悪化していることを示し、経営上の警告信号となる場合があります。

 

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利益剰余金の計算方法

利益剰余金の計算方法は、以下の式で表されます。

利益剰余金=(当期純利益+繰越利益剰余金)−配当額−利益準備金−別途積立金

なお、各項目の意味は次のとおりです。

  • 当期純利益は、その年度の最終的な利益です。
  • 繰越利益剰余金は、前期から繰り越された利益の蓄積額です。
  • 配当額は、株主への配当に使用される金額です。
  • 利益準備金は、法定準備金として積み立てられる金額です。
  • 別途積立金は、任意積立金や特定の目的のために設定された積立金です。

この計算により、会社が内部に蓄積した利益の総額を把握することができます。

このように、利益剰余金は会社の財務状態を示す重要な指標であり、経営の健全性や将来の投資・配当の可能性を判断するために用いられます。

利益剰余金の仕訳方法

次に、利益剰余金の仕訳方法について、具体的な例を交えて解説します。

仕訳の基本的な流れは以下の通りです。

当期純利益を計上する際の仕訳

当期の事業活動によって得られた純利益を「損益」として計上します。

【借方】損益

【貸方】繰越利益剰余金

利益準備金を積立てる際の仕訳

法定準備金として、配当金額の10分の1以上を利益準備金として積立てます。

【借方】繰越利益剰余金

【貸方】未払配当金と利益準備金

配当を支払う際の仕訳

利益剰余金から株主への配当を支払う場合、配当可能な利益剰余金から配当金を支払います。

【借方】繰越利益剰余金

【貸方】未払配当金

任意積立金を設定する際の仕訳

会社の判断で任意積立金を設定する場合、以下のように仕訳します。

【借方】繰越利益剰余金

【貸方】任意積立金

これらの仕訳は、会社の決算処理の一環として行われ、会社の財務状態や株主への配当政策に基づいて決定されます。利益剰余金の適切な管理は、会社の財務健全性を維持し、株主価値を高めるために重要です。

また、仕訳の詳細は会社の会計基準や内部規定によって異なる場合があるため、具体的な仕訳方法については、会計士や専門家のアドバイスを参考にすることをおすすめします。

 

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利益剰余金と内部留保の違い

利益剰余金とは、企業が過去に稼いだ利益の累積額で、配当や税金を支払った後に会社内部に残される金額です。これは貸借対照表の自己資本の部分に表示され、企業の成長のための原動力となります。

一方、内部留保は会計上の正確な用語ではなく、利益剰余金を指すことが多い非公式な表現です。内部留保は、企業が未来の投資や不測の事態に備えて保持する利益のことを指し、企業の財務安定性や成長潜力の指標とされます。

要するに、利益剰余金は企業が実際に蓄積した利益の金額を指し、内部留保はその利益をどのように使用するか(または使用しないか)という戦略的な観点からの表現と言えるでしょう。利益剰余金は具体的な数値を示すのに対し、内部留保はより抽象的な概念であり、企業の財政戦略や経営方針を反映しています。

簡単に言えば、利益剰余金は「企業が稼いだ利益の累計」であり、内部留保は「その利益をどう活用するか」に関する考え方です。利益剰余金は財務報告で具体的な数字として表されますが、内部留保は企業の戦略的な選択を示すため、必ずしも数字で表されるわけではありません。企業がどれだけの利益を再投資に回すか、またはどれだけの資金を保有しているかという点で、内部留保は重要な意味を持ちます。利益剰余金は企業の過去の成功を示し、内部留保は未来への準備を示します。どちらも企業の健全性と将来性を評価する上で重要な指標です。

利益剰余金と当期純利益の違い

利益剰余金と当期純利益は、企業の財務報告において重要な役割を果たしますが、それぞれ異なる概念です。

当期純利益は、特定の会計期間(通常は1年)における企業の最終的な利益です。売上からコストや費用を差し引いた後の、その期間における純利益のことを指します。損益計算書に記載され、企業のその年のパフォーマンスを反映しています。

一方、利益剰余金は、過去に獲得した当期純利益の累積額から配当などで支払われた金額を差し引いたものです。これは貸借対照表の自己資本部分に表示され、企業が将来のために内部に留保している利益の総額を示します。

簡単に言うと、当期純利益は「その年に稼いだ純利益」であり、利益剰余金は「過去に稼いだ純利益の蓄積」です。

当期純利益は年度ごとに計算され、利益剰余金はそれが積み重なったものと考えることができます。一方、利益剰余金は企業が未来の投資や事業拡大、または不測の事態に備えて保持する利益であり、企業の財務安定性や成長潜力の指標となります。

このように、当期純利益と利益剰余金は、企業の財務状態を理解する上で非常に重要な要素であり、それぞれが企業の短期的および長期的な財務健全性を示す指標となっています。

 

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利益剰余金が増えるメリットとデメリット

以下では、利益剰余金が増えるメリットとデメリットについて、企業の視点に立って解説します。

利益剰余金が増えるメリット3つ

企業側の視点から見た利益剰余金が増えるメリットは、次のとおりです。

1.財務安定性が向上すること

利益剰余金が増えることで、企業の財務安定性が向上します。なぜなら、利益剰余金は企業の内部資金であり、外部からの借入に依存せずに運営資金を確保できるからです。

例えば、利益剰余金が多い企業は、景気の変動や予期せぬ支出に対しても安定した経営を続けることができます。

そのため、利益剰余金が増えることは財務安定性の向上に寄与します。

2.内部留保が増加すること

利益剰余金が増えることで、内部留保が増加します。そして、この内部留保は企業の将来の投資や成長のための資金源となります。

例えば、新しい設備投資や研究開発に内部留保を活用することで、企業の競争力を高めることが可能です。

このように、利益剰余金が増えることは内部留保の増加に繋がります。

3.信用力が向上すること

利益剰余金が増えることで、企業の信用力が向上します。なぜなら、利益剰余金が多い企業は財務的に健全であると評価されやすく、取引先や金融機関からの信頼を得やすくなるからです。

例えば、利益剰余金が多い企業は、銀行からの融資を受けやすくなり、事業拡大のための資金調達がスムーズに行えます。

このように、利益剰余金が増えることは信用力の向上に寄与します。

利益剰余金が増えるデメリット3つ

一方で、企業側の視点から見た利益剰余金が増えるデメリットには、以下のようなものが挙げられます。

1.過剰な内部留保に対する株主の不満が高まる

過剰な内部留保は株主の不満を引き起こす可能性があります。なぜなら、株主は企業の利益を配当として受け取ることを期待していますが、利益剰余金が過剰に積み上がると、その期待が裏切られることになるからです。

例えば、ある企業が大きな利益を上げたにもかかわらず、配当を増やさずに内部留保を増やし続けると、株主はその企業の経営方針に不満を持つでしょう。

このように、過剰な内部留保は株主の信頼を損ない、企業の評判にも悪影響を及ぼす可能性があるため、バランスの取れた配分を行うことが重要です。

2.投資機会の損失に繋がる可能性がある

利益剰余金が増えると、投資機会を逃すリスクが高まります。なぜなら、利益剰余金を積み上げることに集中しすぎると、新たな投資や成長機会に資金を投入する余裕がなくなる可能性があるからです。

例えば、競争が激しい市場で新しい技術や製品に投資しないと、他社に遅れを取るリスクがあります。

そのため、適切なバランスを保ち、利益剰余金を有効に活用することが重要です。

3.税務上の注意する必要がある

利益剰余金が増えると、税務上のリスクが増加します。なぜなら、利益剰余金が多いと、税務当局からの監査や調査の対象になる可能性が高まるからです。

例えば、利益剰余金が過剰に積み上がっている企業は、税務当局から「利益の隠匿」や「適切な税務処理が行われていない」と見なされるリスクがあります。

したがって、利益剰余金の管理には慎重を期し、適切な税務対策を講じることが必要です。

 

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利益剰余金の管理にはキヤノンITソリューションズのクラウド会計システム「SuperStream-NX」がおすすめ

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テレワークにも対応できること

SuperStream-NXでは、テレワークの実現に向けたクラウドサービスを提供しており、自宅での業務遂行も可能です。これにより、どこからでも利益剰余金の状況を確認し、管理することができます。

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