税務会計業務のポイント 2023.08.31 (UPDATE:2024.11.19)
アクタス税理士法人
インボイス制度(適格請求書等保存方式)の開始が10月1日からと目前に迫り、準備も大詰めに入っているところかと思います。そこで、インボイス制度開始直前に再確認するポイントについて、「売手」側と「買手」側に分け、全2回にわたってそれぞれ解説いたします。第1回の今回は、売手側のポイントについて解説します。
インボイス制度が開始されると、買手が仕入税額控除を受けるにはインボイス発行事業者から交付を受けたインボイス及び帳簿の保存が必要となり、その他からの仕入は段階的に仕入税額控除ができなくなります。売手としては、取引先が仕入税額控除を受けるためにインボイス発行事業者となり、記載事項の要件を満たす、
というインボイス発行事業者に課される4つの義務に対応する必要があります。
インボイスには、①請求書発行者の氏名又は名称、②登録番号、③取引年月日、④取引内容(軽減税率の適用対象である旨)、税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜又は税込)及び適用税率、⑤税率ごとに区分した消費税額等、⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称を記載する必要があります。現行の区分記載請求書等保存方式による請求書に、登録番号と適用税率、税率ごとに区分した消費税額等を加える必要があります。記載事項をひとつの書類のみで満たす必要はなく、相互の関連を明確にし、取引内容を正確に認識できれば、複数の書類をもって記載事項を満たすことができます。
インボイスは、記載する「消費税額等」の計算方法が定められており、取引に係る税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額に10%又は8%(税込の場合は10/110または8/108)を乗じて1円未満の端数処理を行い算出します。そのため、端数処理は1つの適格請求書につき、税率ごとに1回行うことになり、例えば1つの請求書に記載される個々の商品ごとに消費税額等を計算、端数処理することは認められないことに注意が必要です。端数処理の方法は任意の方法とすることができ、切上げ、切捨て、四捨五入などのいずれの方法も認められます。
インボイス発行事業者は、商品の引き渡しや役務提供の完了がインボイス発行事業者登録日(インボイス制度開始から登録する場合は令和5年10月1日)以後である取引について、相手方の求めに応じてインボイスを交付する義務が生じます。売手の売上計上時期と買手の仕入計上時期が異なる場合、売手の収益認識基準に基づき登録日以後に売上が認識される取引から交付義務が発生します。
インボイス発行事業者は交付したインボイスの写しの保存義務があり、書面又は電子データでの保存が認められます。電子データで保存する場合は電子帳簿保存法に準じた保存が必要となり、「電子帳簿等保存制度」による保存、もしくは、印刷した書面を「スキャナ保存制度」による保存を行うことが可能です。また、電子インボイスを交付して電子データのまま保存する場合は、電子帳簿保存法の「電子取引に係るデータ保存制度」の要件にもとづく保存が求められます。なお、電子帳簿保存法では、申告所得税及び法人税の保存義務者は、令和6年からは電子取引は電子データのまま保存することが原則義務化されますが、消費税法ではその保存が仕入税額控除の要件になっていることから、電子データを書面出力して保存することも認められています。
|
紙発行の請求書 |
電子インボイス |
交付方法 |
書面による交付 |
1.EDI取引を通じた提供 2.電子メールによる提供 3.電子メールに添付したPDF 4.インターネット上のサイトを通じた提供 5.光ディスク等の記録用の媒体による提供 など |
保存方法 |
原則:書面出力して保存 可能:電子帳簿等保存制度に準じた保存 or出力した書面をスキャナ保存 |
原則:電子取引に係るデータ保存制度に準じた保存 可能:書面による保存(消費税法の場合) |
A. 令和5年10月1日からインボイス発行事業者の登録を受けようとする場合の「インボイス発行事業者の登録申請書」の提出期限は、令和5年度改正で実質的に令和5年9月30日まで延長されました。
申請書に令和5年10月1日から登録希望する旨を記載し、令和5年9月30日までに提出すれば、令和5年10月1日までに登録通知が届かなかった場合でも、同日から登録とみなされます。なお、現在登録から通知受領までは、e-Tax利用の場合約1カ月、書面提出の場合は約2カ月半かかる見込みです。
A. インボイス発行事業者が売上の返品、値引き等を行う場合は、記載事項を満たした返還インボイスの交付義務が発生します。返還インボイスは、返品、値引き等の単位ごとの金額が税込1万円未満である場合は交付義務が免除されています。
A. 取引先との契約関係などにより、次のようにその対応が分かれます。
A. 登録日以後の取引についてインボイスを発行することとなるため、対価の額や消費税額等の記載を登録日前の取引に係るものと登録日以後に係るものに分けて表示するなどの対応が必要です。ただし、令和5年10月1日(インボイス制度開始日)から登録し登録日をまたぐインボイスを発行する場合は、買手において登録日前後の課税仕入がいずれも仕入税額控除の対象となるため、登録日前後の取引に区分せずインボイスを交付することも認められます。
A. 令和5年10月以降の課税資産の譲渡等に対する対価について、令和5年9月30日以前に請求書を交付し受領した(前受した)場合、インボイスの交付義務への対応は次の場合によりその方法が分かれます。
アクタス税理士法人
東京と大阪を中心に計4拠点をもつアクタスグループの一員。 アクタス社会保険労務士法人、アクタスHRコンサルティング、アクタスITソリューションズと連携し、 中小ベンチャー企業から上場企業まで、顧客のニーズに合わせて、税務会計、人事労務、システム導入支援の各サービスを提供しています。