人的資本の情報開示についてのポイント 2024.06.17 (UPDATE:2024.10.24)
深瀬勝範(ふかせ かつのり)
2022年4月、女性活躍推進法が改正され、この法律に基づく一般事業主行動計画の策定や情報公表の義務が、従業員数301人以上の事業主から101人以上の事業主にまで拡大されました。これに伴い、従業員101人以上の事業主は、毎年、次の4項目について把握・分析することが義務付けられました。
これらのうち「女性管理職比率」については、上場企業は有価証券報告書への記載が求められ、また、多くの企業が情報公表を行っており、実質的に、毎年、算出・公表することが必要な項目となっています。
今回のコラムは、この「女性管理職比率」の算出方法及びその改善の仕方について説明します。
女性管理職比率は、女性活躍の推進状況を示す指標で、次の式で算出されます。
女性の管理職数※÷管理職数×100 (%)
※「管理職」とは、「課長級」と「課長級より上位の役職(役員を除く)」にある労働者の合計をいいます
なお、「課長級」とは、2係以上の組織または10人以上の従業員で構成される「課」を管理している者、または職務内容および責任の程度がそれと同等の者を指します。
女性管理職比率と似ている指標として「女性労働者に占める管理職の割合(=女性の管理職数÷女性労働者数×100(%)」があり、これは、女性の管理職へのなりやすさ・なりにくさを示すものとして使われています。この2つの指標を混同しないように注意してください。
厚生労働省「雇用機会均等調査(2022年度)」によると、日本企業の女性管理職比率は12.7%であり、5年前(2017年度)の11.5%と比較すると1.2ポイント改善されています。それでも、アメリカ(41.0%)、シンガポール(40.3%)、フランス(39.9%)、ドイツ(28.9%)※と比べると大幅に低く、日本の女性活躍推進が諸外国と比べて遅れていることが分かります。
※労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2024」
(https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/databook/2024/documents/Databook2024.pdf)から引用
【図表1】女性管理職比率の推移(2009~2022年度)
慢性的な労働力不足に陥っている日本では、女性労働者を積極的に活用していくことが必要です。また、世界的にダイバーシティが進む中、女性活躍推進が遅れている日本企業は、海外の投資家や労働者から見離されてしまう危険性があります。このような観点から、日本企業にとって、女性活躍推進に積極的に取り組み、女性管理職比率を改善していくことは、重要な経営課題となっています。
女性管理職比率を改善するための取組みとして、次の3つの施策が挙げられます。
このような施策をすべて実施しても、女性管理職比率の改善には、最低でも3年間はかかるものと考えるべきです。したがって、会社は、「焦らず、少しずつ、着実に」進めていかなければなりません。
女性管理職比率の改善は、今や、多くの日本企業によって重要な経営課題となっています。このコラムを参考にして、皆さんの会社でも、女性管理職比率の算出および改善に取り組んでみてください。
深瀬勝範(ふかせ かつのり)
Fフロンティア株式会社
代表取締役 人事コンサルタント 社会保険労務士
一橋大学卒業後、大手電機メーカーに入社、その後、金融機関系シンクタンク、上場企業人事部長等を経て独立。
現在、経営コンサルタントとして人事制度設計、事業計画の策定などのコンサルティングを行うとともに執筆・講演活動などで幅広く活躍中。
主な著書に『はじめて人事担当者になったとき知っておくべき、7の基本。8つの主な役割』
『Excelでできる 戦略人事のデータ分析入門』(いずれも労務行政)ほか多数。