人的資本の情報開示についてのポイント 2024.07.04 (UPDATE:2024.10.24)
深瀬勝範(ふかせ かつのり)
常時雇用する労働者数が101人以上の企業は、女性活躍推進法に基づく「一般事業主行動計画」を策定し、それを都道府県労働局に届け出ることが義務付けられています。この計画策定にあたり、事業主は、女性活躍に関する状況把握、課題分析のため、行政指針に定められた「基礎項目」を算出しなければなりません。
今回のコラムは、基礎項目の算出方法及びこれらを算出するときのポイント等について説明します。
「一般事業主行動計画」とは、特定の取組みに関する数値目標や具体的施策等を定めた計画書で、法令に基づき、事業主が策定します。現在、法令によって、労働者数101人以上の企業には、2種類の行動計画の策定・届出が義務付けられています。(それぞれの行動計画の届出書式は、参照URLから入手できます。)
なお、これら2つの計画をまとめた「一体型」の計画を策定し、都道府県労働局に届け出ることも可能です。ここでは、「(1) 女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画」を策定するときに、事業主が算出しなければならない「基礎項目」について説明します。
「事業主行動計画策定指針」に示された基礎項目及び各項目の算出方法と判断の目安(例)は、【図表1】のとおりです。
【図表1】一般事業主行動計画の策定時に把握しなければならない基礎項目
判断の目安(例)を下回る基礎項目については、その状況を生み出している要因を探るために、さらなる課題分析を行います。事業主は、この状況把握と課題分析の結果を踏まえて、自社の女性活躍推進に向けた数値目標、取組内容、取組の実施期間等をまとめた「行動計画」を策定します。
なお、事業主は、策定した計画を社内に周知、社外に公表すると同時に、その計画を都道府県労働局に届け出ることが義務付けられています。
一般事業主行動計画は、おおむね2~5年ごとに見直すこととされています。したがって、行動計画を策定するうえで必要となる基礎項目の算出は、少なくとも2~5年おきに実施しなければなりません。
ただし、女性活躍推進法により、労働者数101人以上の事業主は、年1回以上、女性活躍に関する情報を公表することが義務付けられている※ことから、その対象企業は、基礎項目の全部または一部を、毎年、算出することが必要になります。
女性活躍に関する基礎項目の算出と課題分析は、もはや、人事部門が年1回実施する定例業務になっているものと捉えられます。ですから、人事部門は、その業務を、毎年忘れずに、かつ効率的に行っていかなければなりません。そうするためのポイントとしては、次の2点が挙げられます。
女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定・変更、そして、この計画策定のために基礎項目を算出することは、人事部門の新たな「年中行事」となっています。このコラムを参考にして、皆さんの会社でも、これらの業務を効率的に行うことができる工夫を施すようにしてみてください。
※常時雇用する労働者数が301人以上の事業主は、【図表2】の①と②の区分ごとに1項目以上を選択し、また、労働者数300人以下101人以上の事業主は①と②の全項目から1項目以上選択し、自社のホームページに掲載する等して、年1回以上、情報を公表することが義務付けられています。
【図表2】 女性活躍推進法により公表が求められている情報項目
深瀬勝範(ふかせ かつのり)
Fフロンティア株式会社
代表取締役 人事コンサルタント 社会保険労務士
一橋大学卒業後、大手電機メーカーに入社、その後、金融機関系シンクタンク、上場企業人事部長等を経て独立。
現在、経営コンサルタントとして人事制度設計、事業計画の策定などのコンサルティングを行うとともに執筆・講演活動などで幅広く活躍中。
主な著書に『はじめて人事担当者になったとき知っておくべき、7の基本。8つの主な役割』
『Excelでできる 戦略人事のデータ分析入門』(いずれも労務行政)ほか多数。