公認会計士 中田清穂のインボイス制度と電子帳簿保存法の解説講座 2024.04.02 (UPDATE:2024.10.24)
中田 清穂(なかた せいほ)
2023年10月にインボイス制度がスタートしました。
これにより、経理部門だけでなく、請求書や領収書を入手する、営業部門や購買部門の作業工数が増加しているという調査が、続々と発表されています。
以下は、一般社団法人日本CFO協会が2024年1月に実施したサーベイに寄せられた自由コメントの一部抜粋です。
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(出所:一般社団法人日本CFO協会:『財務マネジメント・サーベイ~インボイス制度導入後の経費精算のデジタル対応と課題』
https://forum.cfo.jp/cfoforum/?p=30399/)
これらの増加した作業工数を削減する決め手として、請求書の「電子化」や「デジタル化」があげられます。
「電子化」と「デジタル化」は似て非なるものです。
本校では、請求書の「電子化」にはどのようなものがあるのか、そして「デジタル化」とはいかなる意味があるのかについて触れてみます。
請求書の作成と取引先への渡し方を整理すると以下のようになります。
上記のうち、2と3が、請求書の電子化です。
少し細かく説明します。
このパターンは、請求書を「エクセルやワード」で作成して、プリントアウトした「紙」の請求書に社印(角印)を押印して、封筒に「紙」の請求書を入れて郵送する方法です。
日本の会社や個人事業主に、最も多く利用されている方法です。
このパターンは、請求書を「エクセルやワード」で作成して、プリントアウトした「紙」に社印を押印した請求書を、複合機(FAXなどのできるプリンター)やドキュメントスキャナーでスキャンして、PDFファイルを作成し、PDFの請求書をメールで送付する方法です。
切手代や封筒代がかからず、封筒へのあて名書き・宛先シール張り、封緘さらには切手貼りなどの手間もなくなるので、最近増えてきている方法です。
「紙での請求書はやめてくれ」という得意先も増えているようです。得意先も「紙」で請求書をもらうと、工数がかかり、「紙」のある会社に出社しなければならないので、「紙」の請求書を嫌う会社が増えています。
このパターンは、こういった得意先の要求にも応えるかたちにもなっています。
このパターンは、請求書を「エクセルやワード」で作成し、社印(角印)の画像を挿入してPDF形式で保存して、PDFの請求書をメールで送付する方法です。
このパターンでは、「紙」は一切プリントアウトしません。
以下がその方法です。
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(2)の社印の画像ファイルがあれば、もういつでもどこででも(在宅でも出張先でも)請求書を作成して送付することができるようになります。
それは「紙」では一切プリントアウトしないからです。
社印の画像ファイルを使えるPCなどがあれば、それだけで済むのです。
繰り返しになりますが、2や3でも、請求書の「電子化」止まりです。
「デジタル化」ではないのです。
請求書の「電子化」と「デジタル化」の違い、それは次回の本コラムでご説明します。
そして、「デジタル化」が及ぼす、「経理部門待望の業務改善」についてもお話します。
中田 清穂(なかた せいほ)
1985年青山監査法人入所。8年間監査部門に在籍後、PWCにて 連結会計システムの開発・導入および経理業務改革コンサルティングに従事。1997年株式会社ディーバ設立。2005年同社退社後、有限会社ナレッジネットワークにて、実務目線のコンサルティング活動をスタートし、会計基準の実務的な理解を進めるセミナーを中心に活動。 IFRS解説に定評があり、セミナー講演実績多数。