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ITで進化する請求書(その1:請求書の電子化とデジタル化)

ITで進化する請求書(その1:請求書の電子化とデジタル化)

 中田 清穂(なかた せいほ)

2023年10月にインボイス制度がスタートしました。
これにより、経理部門だけでなく、請求書や領収書を入手する、営業部門や購買部門の作業工数が増加しているという調査が、続々と発表されています。
以下は、一般社団法人日本CFO協会が2024年1月に実施したサーベイに寄せられた自由コメントの一部抜粋です。

  1. 領収書を紙送付から電子データ添付に切替えてかなり合理化されたが、インボイス制度導入後は登録事業者か否かで科目設定を変更するなど、手作業が増えて煩雑になってしまった

  2. インボイス制度に対応しているか否かの確認作業が非常に煩雑

  3. インボイス開始後は特に、確認すべき内容が増えた

  4. 提出を受けた領収書がインボイス制度上及び電帳法上適正かどうかチェックするのに時間を要する

  5. 証憑と精算内容の突合、インボイス=領収書とは限らず、インボイスとは別に領収書も提出しなければならないこと(主に水道光熱費の精算)もあり、手間が増えた

  6. 電子データとスキャンデータを分けて保存すること、インボイスとしての要件を備えた領収書(または請求書)であることの確認などの場面で、一般社員と経理担当の意識に大きな乖離が生じており、説明に時間を要すことが面倒

  7. インボイス課税免税事業者の判定のチェック、税区分入力の誤り

(出所:一般社団法人日本CFO協会:『財務マネジメント・サーベイ~インボイス制度導入後の経費精算のデジタル対応と課題』
https://forum.cfo.jp/cfoforum/?p=30399/

これらの増加した作業工数を削減する決め手として、請求書の「電子化」や「デジタル化」があげられます。

「電子化」と「デジタル化」は似て非なるものです。

本校では、請求書の「電子化」にはどのようなものがあるのか、そして「デジタル化」とはいかなる意味があるのかについて触れてみます。

請求書の作成と取引先への渡し方を整理すると以下のようになります。

  1. 「紙」で作って「紙」で渡す
  2. 「紙」で作って「電子的」に渡す
  3. 「電子的」に作って「電子的」に渡す

上記のうち、2と3が、請求書の電子化です。
少し細かく説明します。

「紙」で作って「紙」で渡すパターン

このパターンは、請求書を「エクセルやワード」で作成して、プリントアウトした「紙」の請求書に社印(角印)を押印して、封筒に「紙」の請求書を入れて郵送する方法です。
日本の会社や個人事業主に、最も多く利用されている方法です。

「紙」で作って「電子的」に渡すパターン

このパターンは、請求書を「エクセルやワード」で作成して、プリントアウトした「紙」に社印を押印した請求書を、複合機(FAXなどのできるプリンター)やドキュメントスキャナーでスキャンして、PDFファイルを作成し、PDFの請求書をメールで送付する方法です。
切手代や封筒代がかからず、封筒へのあて名書き・宛先シール張り、封緘さらには切手貼りなどの手間もなくなるので、最近増えてきている方法です。
「紙での請求書はやめてくれ」という得意先も増えているようです。得意先も「紙」で請求書をもらうと、工数がかかり、「紙」のある会社に出社しなければならないので、「紙」の請求書を嫌う会社が増えています。
このパターンは、こういった得意先の要求にも応えるかたちにもなっています。

「電子的」に作って「電子的」に渡すパターン

このパターンは、請求書を「エクセルやワード」で作成し、社印(角印)の画像を挿入してPDF形式で保存して、PDFの請求書をメールで送付する方法です。
このパターンでは、「紙」は一切プリントアウトしません。
以下がその方法です。

  1. 白地の紙(何も書いてない、まっさらな紙)に社印を押印します。

  2. (1)の紙をスキャンして、社印だけの画像ファイル(JPEG形式など)を作ります。

  3. 請求書のブランクフォーム(宛先、請求金額、請求日あるいは請求内容などがブランクになっている請求書のフォーム)を、エクセルやワードで作成します。

  4. (3)のブランクフォームに(2)の社印の画像を貼り付けておきます。

  5. 実際に送付する請求書を作成する際には、(4)の社印の画像が挿入されているブランクフォームを利用して、宛先、請求金額、請求日あるいは請求内容などを入力します。

(2)の社印の画像ファイルがあれば、もういつでもどこででも(在宅でも出張先でも)請求書を作成して送付することができるようになります。
それは「紙」では一切プリントアウトしないからです。
社印の画像ファイルを使えるPCなどがあれば、それだけで済むのです。

繰り返しになりますが、2や3でも、請求書の「電子化」止まりです。
「デジタル化」ではないのです。

請求書の「電子化」と「デジタル化」の違い、それは次回の本コラムでご説明します。
そして、「デジタル化」が及ぼす、「経理部門待望の業務改善」についてもお話します。

 

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