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2月の人事労務お役立ち情報 「賃金のデジタル払いが2023年4月に解禁されます」

2月の人事労務お役立ち情報 「賃金のデジタル払いが2023年4月に解禁されます」

 アクタス社会保険労務士法人

■人事労務のお役立ち情報

賃金のデジタル払いが2023年4月に解禁されます!

賃金の支払方法について労働基準法第24条では通貨払いが原則となっていますが、
例外として労働者の同意を得た場合には労働者が指定した銀行口座や証券総合口座に振り込むことが認められています。
この度、労働基準法施行規則の一部を改正する省令が公布され、2023年4月より資金移動業者(〇〇Pay等)への資金移動による賃金支払い(賃金のデジタル払い)も認められることとなりました。
ここでは、今後、会社に求められる対応について解説いたします。

デジタル払いができる資金移動業者とは
賃金のデジタル払いとは、給与を現金や銀行口座への振込によらず
資金移動業者の口座へ資金(給与)を移動することにより賃金を支払う方法です。
資金移動業者とは、銀行等以外のものが為替取引(現金輸送によらない送金)を業として行うものであり内閣総理大臣の登録を受けなければなりません。
賃金のデジタル払いでは、この内、一定の要件を満たす厚生労働大臣の指定を受けた「指定資金移動業者」に限り、
従業員が口座として指定することが可能となります。

■会社に求められる対応は
 (1)労使協定の締結
  労働組合または労働者の過半数を代表する者と対象となる従業員や対象となる賃金や金額の範囲、
  実施開始時期などについて労使協定を締結することが必要です。
 
 (2)従業員への賃金支払い口座の選択肢の提示
  資金移動業者の口座への賃金支払いを強制することはできません。
  また、資金移動業者の口座のみを提示することも禁止されており、
  労働者が銀行口座または証券総合口座への賃金支払いも併せて選択できるようにする必要があります。
 
 (3)従業員への説明
  銀行との違いや具体的な仕組みや留意事項(口座の上限額や破綻時の補償、
  アカウントの有効期限)などについて従業員に説明することが求められます。

 (4)従業員の同意取得
  従業員が資金移動業者の口座への支払いを希望する場合、同意書を取る必要があります。

給与のデジタル払いはあくまでも選択肢の一つであり会社にデジタル払いを強制するものではありませんが、キャッシュレス決済の普及や送金サービスの多様化が進む中で、賃金のデジタル払いのニーズは高まっていくことが予想されます。
導入するかどうかの検討を含め、随時、最新情報に注視しながら早めに対策を講じるようにしましょう。
  
(厚生労働省 資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03_00028.html

■今月の人事労務相談室

出生時育児休業中の就業と雇用保険給付金について

【相談内容】

従業員から出生時育児休業中の給付金について問い合わせがありました。
休業中の就業を検討していますが、雇用保険給付金への影響を心配しているようです。
給付の対象となる範囲を教えてください。

【社労士のアドバイス】

2022年10月の法改正により出生育児休業制度が新設されたことに伴い、
雇用保険法が改正され、新たに「出生時育児休業給付金」が創設されました。
これにより、雇用保険の被保険者が出生時育児休業を取得し一定の要件を満たす場合には、
「出生時育児休業給付金」の支給を受けることができるようになりましたが、
休業期間中の就業日数(または就業時間)には上限が定められており、下記の範囲内であるときに支給の対象となります。

 ■出生時育児休業の日数が28日の場合
  就業日数の上限は原則10日となります。10日を超える場合は上限80時間となります。
  ただし、これは出生時育児休業を最大日数となる28日間取得した場合の上限であり、
  休業日数が28日より短い場合は 次によります。

 ■出生時育児休業の日数が28日より短い場合
  就業日数の上限は休業日数に比例して変動します。
  具体的には次の計算式によって上限日数および上限時間を算出します。

  【上限日数の計算式】
   10日×(休業日数÷28日)=上限日数(1日未満の端数は切上)
   【上限時間の計算式】
   80時間×(休業日数÷28日)=上限時間(1分単位未満は切捨)
 
  例えば出生時育児休業を14日取得した場合、
  「出生時育児休業給付金」の支給対象となる日数の上限は「10日×(14日÷28日)=5日」となり、
  給付金を受給するためには就労日数を5日以下に抑える必要があります。

 なお、休業期間中に賃金が支払われた場合の給付金の調整は、現行の育児休業給付金のしくみと同様です。
 支払われた賃金額に応じて給付金が減額または不支給となる場合があります。
    
 休業する従業員にとって給付金は関心の高い事項となります。
 「出生時育児休業」と「育児休業」の取り扱いの違いについて正しく理解した上で、
 丁寧な説明を心がけると良いでしょう。

 (厚生労働省「育児休業給付についてのパンフレット」)
 https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000986158.pdf

ホワイトペーパー「戦略人事を実現するために必要な土台の作り方」

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