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5月の人事労務お役立ち情報 |職場における学び・学び直しの「リスキリング」について

5月の人事労務お役立ち情報 |職場における学び・学び直しの「リスキリング」について

 アクタス社会保険労務士法人

■人事労務のお役立ち情報

職場における学び・学び直しの「リスキリング」について

「リスキリング」は岸田内閣の総合経済対策の一つである「構造的な賃上げ」の実現に向けた取り組みの一つとして盛り込まれたこともあり、報道で耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。今回は、昨今注目の集まる「リスキリング」について解説します。

1.リスキリングとは
英語では「Reskilling」と表記されるように、働き方の変化よって今後新たに必要となる技術やスキルを身に着けることをいい、職業能力の再開発、再教育を意味します。

2.リカレント教育とリスキリングの違い
どちらも「学び直し」としての意味合いを持つ言葉として注目されていますが、両者の概念には違いがあります。
・リカレント教育:一度仕事を離れて大学などの教育機関に戻り、専門知識や技術を習得して復職すること
・リスキリング:企業が事業戦略の一環として従業員に対して、新たな分野で必要となる知識及び技能を習得させること
つまり、リカレント教育は新しく何かを学ぶために一度キャリアを中断することが前提となるのに対して、リスキリングは仕事を続けながら新しいスキルを習得することで、会社の事業上の成果につなげることに主軸が置かれています。

3.DXとリスキリングの相関関係
DX(デジタルトランスフォーメーション)などによる産業構造や企業戦略の変化において、新たに必要となる業務・職種に対応できる人材を育成するという点でリスキリングの重要性が増しています。日本におけるリスキリングの取組みとして2022年11月に帝国データバンクによる公表では、DX取組企業のうちリスキリングの取組割合は81.8%に上るのに対し、DX未取組企業のリスキリング取組割合は32.2%となっており、DXを推進している企業の方がリスキリングにも取り組んでいるという相関関係があることが分かります。

4.リスキリングの支援
リスキリングの導入方法としては、オンライン研修やeラーニング、ワークショップが挙げられますが、2022年12月に研修費用や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度として人材開発支援助成金に新しく「事業展開等リスキリング支援コース」が創設されました。「リスキリングに興味はあるけど、コスト面でなかなか手が付けられない」という企業にとって最適な助成金といえます。活用を検討してみてはいかがでしょうか。

IT・データ分野を中心とした専門的・実践的な教育訓練講座を経済産業省大臣が認定する制度として「リスキル講座(第四次産業革命スキル習得講座)認定制度」の創設、官民一体でリスキリング機会の創出を目的とした「日本リスキリングコンソーシアム」が発足されるなど、今後、リスキリングへの関心はますます高まるものと思われます。リスキリングの普及及び動向が注目されます。

<厚生労働省ホームページ>
「人材開発支援助成金に事業展開等リスキリング支援コースを創設しました」
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001070651.pdf

<帝国データバンク>
「DX推進に関する企業の意識調査」
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p221109.html

<日本リスキリングコンソーシアム>
https://japan-reskilling-consortium.jp/

■今月の人事労務QA

賃金から社宅家賃を控除する際の注意点

【相談内容】

従業員の福利厚生の一環として社宅制度を導入することになりました。
 社宅家賃の賃料を毎月の賃金から控除することはできますか。

【社労士のアドバイス】

賃金はその全額を支払うことが原則となります(労働基準法第24条第1項本文)。
そのため、社宅家賃の賃料を賃金から控除する場合には、労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数を代表する者(労働者の過半数で組織する労働組合がない場合)との間で賃金控除の労使協定を締結し(労働基準法第24条第1項但書)、就業規則等に賃金から社宅の費用を控除する旨を定めることにより可能となります。

なお、この労使協定は時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定届)のように管轄労働基準監督署への提出は必要ありませんが、労使協定の締結なしに賃金を控除した場合には30万以下の罰金となる場合があります(労働基準法第120条第1項第1号)。
労働基準監督署の調査で発覚するケースが少なからずありますので、自社における労使協定の締結有無や控除対象となる具体的項目について確認をしておきましょう。


ホワイトペーパー「戦略人事を実現するために必要な土台の作り方」

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