会計システムのリプレイスとは？進め方と注意点、目的やメリットを解説

会計システムのリプレイスは、企業の財務管理を最適化し、経営戦略を支える重要な取り組みです。しかし、その実施には綿密な計画と慎重な実行が不可欠です。

会計システムのリプレイスを適切に行えば、業務効率の向上やコスト削減、リアルタイムな経営判断の実現につながります。一方で、データ移行や業務プロセスの変更に伴うリスクを理解しておくことも重要な要素です。

本記事では、会計システムリプレイスの目的やメリット、効果的な進め方、そして注意すべきポイントを詳細に解説します。特に、大手企業のリプレイスに成功するためのプロセスを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

会計システムのリプレイスとは？

会計システムのリプレイスとは、企業が使用している既存の会計システムを新しいシステムに置き換えることです。

これは単なるアップグレードではなく、システム全体を刷新し、最新の技術や機能を導入することを意味します。

会計システムのリプレイスが必要な理由

会計システムのリプレイスが必要な理由として、主に次の5つが挙げられます。

1.財務諸表作成の重要性

会計システムは、監査対象となる財務諸表を作成する最重要基幹システムです。企業においては、不正や誤謬のない財務諸表の作成・開示が求められるため、信頼性の高いシステムが必要です。

2.IT統制への対応

上場企業では内部統制の基本的要素として「ITへの対応」が求められています。多くの企業がIPO前に内部統制を想定していない簡易なシステムから、IT統制に対応したシステムへの移行が必要となります。

3.監査難民問題への対応

監査法人の人手不足により、監査契約が困難になる企業が増加しています。信頼性の高い会計システムを導入することで、監査法人との契約可能性を高めることが可能です。

4.技術的老朽化への対応

既存のシステムが技術的に時代遅れになり、現在のビジネスニーズに対応できなくなった場合、リプレイスが必要となります。

5.データの一元管理と意思決定の迅速化

新しい会計システムでは、各業務に分散するデータを集約して一元管理できるようになります。これにより、経営状況を的確に把握し、迅速な意思決定が可能となります。

関連記事：システムリプレイスとは？目的とメリット、進め方や注意点を徹底解説

会計システムをリプレイスする目的

会計システムをリプレイスする目的について、次の3つの観点から解説します。以下の目的を達成することで、企業は競争力を維持し、業務効率を大幅に向上させることができるでしょう。

業務効率の向上

会計システムをリプレイスする目的の一つは、業務効率を大幅に向上させることです。

新しいシステムでは、在庫管理や注文処理の自動化が可能となり、手動入力のミスが減少し、処理時間が短縮されます。これにより、従業員はより付加価値の高い業務に時間を割くことができ、生産性が向上します。

また、部門間でのデータの一元管理が可能となり、リアルタイムでの情報アクセスと部門間の連携強化を実現可能です。

コスト削減

コストの削減も、会計システムをリプレイスする目的の一つです。古い会計システムの維持管理費用は高額になりがちですが、リプレイスにより総合的な運用コストを削減可能です。

新しいシステムはメンテナンスが容易で、運用コストの低減に寄与します。また、業務プロセスの効率化による人件費の削減も期待できるでしょう。

さらに、クラウド型システムに切り替えることで、メンテナンスやバックアップ、バージョンアップにかかる工数の大幅な削減にも期待ができます。

法令遵守と規制対応

会計システムは、監査の対象となる財務諸表を作成する、重要な基幹システムです。

新しいシステムを導入することで、不正や誤謬のない信頼性の高い財務諸表の作成と開示が可能となります。

また、法改正に対応するために大規模なシステム改修が必要になる場合がありますが、新しいシステムではこれらの対応がより容易です。

特に、上場企業ではIT統制への対応も求められるため、内部統制を想定したシステムへの移行が重要です。

会計システムリプレイスの進め方

会計システムリプレイスの進め方について、次の4つの段階に分けて解説します。以下のステップを慎重に進めることで、会計システムのリプレイスを効果的に実施できます。

1.現状分析と要件定義

まず、既存の会計システムの現状を詳細に分析し、課題やボトルネックを洗い出しましょう。具体的には、各部門からフィードバックを収集し、システム上の問題点や非効率なプロセスを特定します。

次に、新しいシステムに求める要件を定義します。業務プロセスの効率化、データ統合、セキュリティ強化など、具体的な要件を明確にし、全社的な合意を得ることが重要です。

2.移行計画の立案

要件定義が完了したら、具体的な移行計画を策定します。

移行期間やデータの範囲を明確に定義し、各部署や担当者間で認識の相違が生じないよう、詳細なスケジュールと計画を共有することが重要です。

また、新しい会計システムに合わせて業務フローの見直しを行い、業務の標準化と効率化を図りましょう。

3.選定と評価

移行計画に基づき、適切な会計システムを選定します。

複数のシステム開発会社に問い合わせて概算の見積もりを取得し、比較評価を行うことが大切です。選定基準には、機能性、拡張性、コスト、サポート体制などを含めます。

また、プロジェクトの予算を確保し、社内の承認プロセスを経ることも重要です。

4.実行段階とリポート

システム選定後、実際の移行作業を開始します。

データ移行、システム構築、テストなどの各フェーズを計画に沿って実施しましょう。移行作業中は定期的に進捗を確認し、必要に応じて計画を調整する柔軟性が必要です。

新システムの試運用を行い、最終的に問題がないことを確認した上で、本格運用を開始します。また、運用開始後も、継続的にシステムの評価とフィードバックを行い、必要に応じて改善をくり返すことが重要です。

会計システムをリプレイスする際の注意点

会計システムをリプレイスする際は、次の点に留意することで、移行プロセスをより安全かつ効率的に進めることができます。

データの移行リスクと対策

データの移行は最も重要かつリスクの高い部分です。主なリスクとしては、データの移行漏れや不一致が生じる可能性が挙げられます。

これに対する対策として、次の点に注意しましょう。

移行計画の段階から業務現場の有識者を交えて、移行データの要件定義を綿密に行うことが重要です。
移行前後のデータを突合し、整合性を確認しましょう。特に総勘定元帳の合計額や貸借対照表の貸方・借方が新旧システムで一致しているかを確認します。
既存システムのデータを確認し、移行するデータとしないデータを決定します。また、移行するデータに優先順位をつけ、重要なデータから移行を進めましょう。

業務の中断を最小限に抑える方法

システム移行時には業務中断のリスクがあります。これを最小限に抑えるために、次の点に注意が必要です。

一度にすべてのデータや機能を移行するのではなく、重要度や複雑さに応じて段階的に移行することが大切です。
移行中は、新旧のシステムを並行して運用しましょう。通常、最初の1〜3ヶ月間を並行運用期間として両システムで同じ取引を処理し、機能に過不足がないか確認していきます。
移行期間中の業務処理方法についてのガイドラインを策定し、全社員に周知することが重要です。

スタッフのトレーニングとサポート

新システムへの移行には、スタッフのトレーニングとサポートが不可欠です。

並行運用期間中にスタッフトレーニングを実施します。新システムの操作に慣れることで、本格運用への移行がスムーズになります。
トレーニングプログラムを段階的に実施し、スタッフが新システムに徐々に慣れるようにしましょう。
ヘルプデスクやサポート体制を整備し、移行後も継続的なサポートを提供することが重要です。

新しい会計システムへ移行するメリット

新しい会計システムへの移行は、企業の競争力強化と業務効率化に大きく貢献する重要な取り組みです。そこで、新しい会計システムへ移行する主なメリットを、次の3つの観点から解説します。

リアルタイムのデータ分析

新しい会計システムでは、リアルタイムでの財務データ収集と分析が可能です。これにより、以下のようなメリットが得られるでしょう。

最新の財務データに基づく迅速かつ正確な意思決定が可能
月次や四半期の業績が目標に達していない場合、その原因を即座に特定し、必要な施策を講じることができる
売上高のトレンド、材料費や外注費の増減をタイムリーに把握し、機を逸することのない対策を講じられる
資金繰りの透明性が向上し、経営リスクを軽減できる

自動化による手間削減

新しい会計システムでは、多くの業務を自動化することが可能です。これにより、以下のようなメリットが得られるでしょう。

伝票処理、仕訳作成、会計データの集計などを迅速かつ正確に実行できる
銀行口座連携機能により、取引データの手動入力が不要になる
自動仕訳機能により、複雑な仕訳の作成を簡略化できる
請求書発行と入金消込作業の一部を自動化できる
経理担当者の業務負担が大幅に削減され、より付加価値の高い業務に注力できる

セキュリティ強化

新しい会計システムは、セキュリティ機能が強化されています。これにより、以下のようなメリットが得られるでしょう。

データの抽出、転送を自動化することで、安全かつ迅速にデータを送信できる
リアルタイムなデータ自動連携により、決算処理における仕訳入力の遅延や伝票の修正回数など、財務数値が積み上げられるプロセスの遅延や誤りを早期に発見できる
異常な取引や不正に対する感度を向上させ、財務報告リスクを最小限に抑えることができる
内部統制の改善につながり、より強固なリスクマネジメント体制を構築できる

新しい会計システムにリプレイスした成功事例

ここでは、約20年間使い続けたレガシーシステムから脱却し、新システム「SuperStream-NX Cloud」を導入し、柔軟な連携と出力方法で業務プロセスを改善した事例を紹介します。

パイラック・レースウェイ・ケーブルラック等の電設資材の研究開発・製造・販売を行うネグロス電工株式会社（様）では、会計システムを約20年使い続けていたことで、不十分な周辺システムとの連携や、法制度改正による業務工数の増加、日常的なサーバー管理の負担などの課題を抱えていました。

そこで、キヤノンITソリューションズが提供する「SuperStream-NX」を導入したことで、上記の改善はもちろん、AI-OCRの活用による請求書情報の入力作業の自動化や、財務会計と固定資産管理の連携による二重管理の削減、減価償却等の計上時にリアルタイムで正確な数値を確認できるといった効果を得ることができました。

キヤノンITソリューションズのWebサイトでは、その他の導入事例を多数掲載し、詳細な内容を解説していますので、ぜひ参考にしてください。