トレンド情報 2023.07.10 (UPDATE:2025.03.15)
スーパーストリーム
人事管理と労務管理は、企業の事業活動を支える人材を管理する重要な業務です。しかし、管理する内容や目的が大きく異なるため、担当部署がそれぞれの違いを明確に把握する必要があります。
人事管理と労務管理の業務内容を明確にすることで、自社に最適な一元管理ツールを採用し、業務の効率化を実現できます。また、業務効率が向上するだけでなく社内リソースを最大限に活用できるようになるため、企業の業績向上にも役立つでしょう。
そこで今回は、人事管理と労務管理の業務内容の違いや、一元管理で効率化する方法を解説します。企業の人材管理に課題のある方は、ぜひ参考にしてください。
人事管理と労務管理は、ともに企業を運営する上で欠かすことのできないバックオフィス業務です。ただし、それぞれが管理する目的に大きな違いがあります。
そこで、まずは人事管理と労務管理の違いについて解説します。
人事管理とは、企業の重要な経営資源の1つである人材を管理する業務です。戦後の高度成長期における企業の経営資源は3種の神器と呼ばれた「ヒト・モノ・カネ」で構成されていましたが、近年はそこに「情報」が加わり、4つの経営資源が重視されています。
その中の「ヒト」を管理するのが「人事管理」で、企業が人材を獲得する採用活動から人材の育成、評価、人材配置など、事業を継続・発展させる上で欠かすことのできない業務を担います。
一方、労務管理とは、従業員にとって働きやすい労働環境を提供するために、給与や福利厚生、入社や退社手続き、労使関係、就業規則、安全衛生などを管理する業務を指します。
労務管理は、従業員と企業組織が良好な関係を築けるようにさまざまな相談窓口となる役割も果たすため、人事管理とは異なった視点から管理する必要があります。
人事管理と労務管理の主な違いを以下で比較します。
項目 |
人事管理 |
労務管理 |
主な目的 |
人材の活用と育成 |
労働環境の整備と法令遵守 |
対象範囲 |
個々の従業員 |
組織全体 |
主な業務内容 |
採用、配置、育成、評価、キャリア開発 |
勤怠管理、給与計算、社会保険手続き、就業規則整備 |
時間軸 |
中長期的 |
短期的・日常的 |
法的要素 |
比較的少ない |
労働法規に基づく業務が多い |
求められるスキル |
コミュニケーション力、戦略的思考 |
法律知識、事務処理能力 |
関わる部門 |
全社的 |
主に総務・経理部門 |
業務の性質 |
戦略的 |
管理的 |
上記のように、人事管理は企業の人材戦略に関わる業務を担当し、労務管理は従業員の労働環境や法令遵守に関する業務を担当します。両者は密接に関連しており、効果的な人材マネジメントのために連携が重要です。
人事管理と労務管理はともに企業の人材を有効活用し、事業を安定的に運営し、さらなる発展に寄与する重要な業務です。
近年は、企業の人材を単なる経営資源ではなく利益や価値を生み出す「人的資本」と考え、社会に好循環を生み出す仕組みを作ることが求められています。
また、労働人口の減少が続く国内企業では、企業が従業員の健康や生きがいを支援する「ウェルビーイング経営」や、生産性の向上を目指すために従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する「健康経営」にも注目が集まっています。
これらを実践するためにも、まずは人事管理と労務管理の業務内容をしっかりと理解して実践することが重要です。
上記のように、人事管理は企業の人材を有効活用するための施策で、主な業務内容として次の7つが挙げられます。
業務内容 |
解説 |
人材採用業務 |
企業に必要な人材を獲得するための活動です。求人広告の掲載、面接・選考の実施、採用計画の策定、内定・入社手続きなどを行います。 |
人事評価業務 |
従業員の業績や能力を評価するための活動です。評価制度の運用、公平な評価の実施、フィードバックの提供を通じて従業員の成長を促します。 |
労務管理業務 |
従業員の勤怠管理、給与計算、社会保険手続き、就業規則の整備など、労働環境の整備と法令遵守に関する業務を行います。 |
福利厚生管理業務 |
従業員の福利厚生制度の設計・運用、健康管理、安全衛生管理などを行い、働きやすい環境を整備します。 |
人材開発業務 |
従業員のスキルアップや能力開発を支援する活動。社内外の研修プログラムの企画・実施、キャリア開発計画の策定などを行います。 |
労使関係の調整業務 |
従業員と企業間の関係を円滑にするための活動。労働組合との交渉、個別的労使関係の調整、苦情処理などを行います。 |
組織文化の構築業務 |
企業の価値観や行動規範を形成・浸透させる活動。モチベーション管理、コミュニケーション促進、組織の一体感醸成などを行います。 |
これらの業務を通じて、人事管理は企業の人材を効果的に活用し、組織の成長と目標達成を支援します。
このように、人事管理では個々の従業員を対象とするため、人事管理システムを活用し、データを元にした、客観的かつ公平な評価体制の構築が求められます。
また、人事管理には個々の従業員に対する労務管理が含まれるため、後述する一元管理システムの活用が効果的です。
一方、労務管理は企業の人材に働きやすい環境を提供するための業務で、主な業務内容として次の9つが挙げられます。
業務内容 |
解説 |
法定三帳簿の作成 |
労働基準法で定められた「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」を作成・保管します。これらは労働条件の証明や労務管理の基礎資料として重要です。 |
雇用契約書の作成 |
雇用契約書は、従業員との労働条件を明確にし、トラブルを防ぐために作成するものです。これには、労働条件通知書なども含まれます。 |
就業規則の作成 |
従業員が10人以上の企業では、就業規則の作成が義務付けられています。労働条件や職場のルールを定めるための重要な書類です。 |
社会保険・雇用保険の手続き |
従業員の入社・退職時に必要な各種保険の加入・脱退手続きを行います。 |
勤怠管理 |
従業員の労働時間を適切に管理し、残業や有給休暇の取得状況を把握します。 |
従業員の健康管理 |
定期健康診断の実施や、メンタルヘルスケアなど、従業員の健康維持に努めます。 |
ハラスメント対策 |
セクハラやパワハラなどの防止策を講じ、問題発生時の対応体制を整えます。 |
退職手続き |
従業員の退職時に必要な書類作成や、各種保険の手続きを行います。 |
休職や異動手続き |
従業員の休職や異動に伴う手続きや、労働条件の変更などを管理します。 |
これらの業務を適切に行うことで、従業員が安心して働ける環境を整備し、企業の生産性向上や法令遵守につながります。
先述したように、労務管理は人事管理に含まれる管理業務の1つとして位置付けられます。そのため、労務管理業務を効率化するためには、人事管理と労務管理を一元管理できるシステムの導入がおすすめです。
次に、人事や労務管理業務を効率化する方法を解説します。
クラウド型の人事管理システムを導入することで、従業員データの一元管理や勤怠管理、給与計算などの業務を自動化・効率化できます。また、リモートワークにも対応できるため、どこからでもアクセスでき、業務の柔軟性が向上します。
雇用契約書、労働条件通知書、勤怠管理などの書類を電子化することで、管理・検索が容易になり、保管スペースも削減できます。また、社会保険手続きの電子申請義務化に対応し、業務効率と法令遵守を両立可能です。
現行の業務フローを可視化することで、ボトルネックを特定できます。また、業務の標準化を推進することで、共通のフォーマットや手順で業務を遂行できるようになり、作業効率が向上し、品質も均一化されるでしょう。さらに、KPIを設定し、定期的に評価することで、継続的な改善が促進されます。
専門性の高い業務や時間のかかる作業を外部の専門家に委託することで、人材不足の解消と業務の質の向上が図れます。また、法令改正への対応など、専門知識を要する業務の安定化にも効果的です。
ビジネスチャットなどのツールを導入することで、従業員とのコミュニケーションが円滑になります。情報共有の迅速化や、リモートワーク環境下での連携強化にも役立ち、労務管理の効率化につながるでしょう。
労務管理は、企業組織全体を対象とした、働く環境を最適化するための管理業務です。この点においては、人事管理と労務管理は対照的といえます。
しかし、人事管理と労務管理は、ともに優秀な人材を確保し、企業の生産性の向上を目的としています。そのため、これらの業務を「人事・労務管理」と称して同じ担当者が管理するケースも少なくありません。
そこで以下では、人事管理と労務管理の一元管理システムの導入をおすすめする理由や、導入する際のポイントを解説します。
人事管理と労務管理に一元管理システムを導入し、両方の管理業務を効率良く最適化することは、前述した企業のウェルビーイング経営や健康経営にも繋がる重要な施策といえます。
そこで以下では、人事管理と労務管理に一元管理システムの導入をおすすめする理由を解説します。
人事管理と労務管理に一元管理システムを導入することで、従業員一人ひとりの情報を紐付けながら管理できます。
従業員が多い企業では、従業員それぞれの情報を個別に管理し、適切な育成や評価を行うことが難しいケースも多いことでしょう。しかし、一元管理システムを導入することで、すべての従業員を平等に評価し、最適な教育方針を策定可能です。
このように、従業員情報を一元管理することで、企業の安定した運営と従業員エクスペリエンスの向上に期待できます。
人事管理と労務管理の一元管理システムの導入により、それぞれの業務で必要となる書類作成や提出といった煩雑な業務を自動化できます。
例えば、従業員の個人情報を紙媒体でなくクラウドシステムに直接入力してもらうことで、住所の変更や家族構成の変更手続きなどが自動化できます。また、ペーパーレス化による経費の削減と人的なミスや工数を大幅に削減可能です。
このような業務効率の向上により、自社リソースがコア業務への集中を可能にし、経営効率の最大化にも役立ちます。そして、社外のステークホルダーに対しても、良い印象や影響を与えることができるでしょう。
近年注目されているウェルビーイング経営や健康経営を実現するためには、従業員の評価シートの作成やアンケート調査が欠かせません。これらを従業員に配布して記入後に回収し、集計・管理するといった煩雑な作業は、人事担当者にとって非常に大きな負担といえるでしょう。
しかし、一元管理システムを導入することで、資料の配布から回収、集計と管理といった業務を自動化できるため、大幅な工数削減に繋がります。
このように、人事管理と労務管理は企業の基幹事業ではないものの、生産性の向上や安定した運営に欠かすことのできない重要な業務です。そこで、一元管理システムをいち早く導入し、コア業務への資本集中を実現することが重要です。
上記のように、人事管理と労務管理を一元管理することで、企業にさまざまなメリットがあります。
そこで以下では、一元管理システムをより効果的に活用するための導入ポイントを3つ紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
人事管理や労務管理をシステム化する際に注意すべきポイントとして、まず今行っている業務について、システム化によってどれだけ工数や人件費を削減でき、労働環境を改善できるかをシミュレーションしてみることが重要です。そして、そのシミュレーションの結果に基づき、どのシステムや機能を採用するべきかを総合的に判断しましょう。
また、シミュレーションを行う際は、信用できるサプライヤーやベンダーを選んで相談することが大切です。
一元管理システムを導入する際は、これまで自社で管理していたシステムやソフト、他の管理システムとの連携が可能かどうかを確認することが重要です。
例えば、現在Excelで管理している人事データをそのまま新しい一元管理システムに取り込むことができるかどうか、会計システムや経営分析システムなどとの連携が可能かどうかを確認しましょう。
そして、その管理システムを導入することによって、自社にどれだけのメリットがあるかを客観的に判断することが大切です。
管理システムを導入して効果的に活用するためには、社内で使いやすいUIやUXかどうかを確認することも重要です。
UI(ユーザーインターフェイス)とは、システムを使用する際に利用できるデバイスのことを指します。一方、UX(ユーザーエクスペリエンス)とは、導入したシステムが他社のシステムなどと比較して使いやすく体験できる利便性のことです。
一般的に良く利用されている人事や労務の管理システムは、データをクラウド管理するため初期費用が安く運用しやすいのがメリットです。しかし、よりセキュリティを強化したい場合や自社の業務に合わせたカスタマイズをしたいときには、自社サーバーを設置してシステムそのものを管理するオンプレミス型を採用するケースもあります。
上記のように、一元管理システムを導入する際は、自社に合った機能があるかどうかを慎重に確認しましょう。そのためにも、まずは信頼できるサプライヤーやベンダーに相談することが大切です。
このように、人事管理と労務管理は管理する対象や業務内容に違いがありますが、企業の生産性や従業員エクスペリエンスの向上といった最終的な目的は同じです。そこで、企業が自社リソースを適材適所に効果的に配置し、効率良く事業を最適化することが重要です。
そのためにも、人事管理と労務管理の一元管理システムを導入し、速やかにデジタル管理できる体制を整えることをおすすめします。そうすることで、従業員エクスペリエンスが向上し、社外のステークホルダーからの評価にも好影響を与えるでしょう。
人事と労務の一元管理に関する質問やお問い合わせはもちろん、自社に必要なシステムの種類や選び方がわからない場合には、いつでもキヤノンITソリューションズにご相談ください。貴社に適したソリューションを提供いたします。まずはオンラインで、お気軽に資料請求していただくことも可能です。
国内1万社以上が導入する「SuperStream-NX」。下記の動画では、タレントマネジメントの強化、人事データの一元管理、法改正対応の3つのポイントを解説しています。ぜひ度視聴ください。