トレンド情報 2024.02.18 (UPDATE:2024.11.15)
スーパーストリーム
デジタル給与とは、従業員の給与をデジタル通貨で支払うことです。2023年10月にデジタル給与に関連する法改正が行われ、日本でもデジタル給与の解禁が見込まれています。
デジタル給与が解禁されれば、振り込みにかかる手数料の負担が軽減されたり、企業イメージが向上するといったメリットが考えられるでしょう。しかし、その一方で、デジタル給与にはデメリットや課題があるのも事実です。それは、デジタル通貨の価格変動や税務処理、セキュリティなどの問題です。そのため、デジタル給与を導入する際は、これらの点に対応する必要があります。
そこで今回は、デジタル給与の解禁と導入のメリット・デメリット、対応方法を徹底解説します。これからデジタル給与の導入をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
デジタル給与とは、従業員の給与を電子マネーやスマートフォンの決済アプリで支払う制度のことです。2023年4月1日から施行された労働基準法の一部改正により、銀行振込や現金支払いに加えて、デジタル給与の支払いが可能となりました。
デジタル給与は、使用者である企業と従業員の同意があれば、厚生労働大臣が指定した資金移動業者(たとえばPayPayや楽天ペイ、d払いなどのサービス)の口座に給与を振り込むことができることで、銀行口座を介さずに企業から従業員へ、資金を移動できるという仕組みです。
デジタル給与の解禁日は、2023年4月1日です。ただし、会社でデジタル給与の仕組みを採用するには、会社単位で労使協定を締結する必要があります。
また、デジタル給与には上限額があり、100万円です。資金移動業者の口座残高が100万円を超えると、自動的に、事前に登録した銀行口座へ資金が移動されます。その場合、送金手数料が従業員の口座から差し引かれることがあるため、口座残高が100万円を超えないよう調整しなければなりません。
デジタル給与が解禁された背景と理由には、主に次の2つがあります。
経済産業省は、2025年までにキャッシュレス決済比率を4割程度まで引き上げ、将来的には世界最高水準の80%まで上昇させることを目指しています。
そこで、デジタル給与を活用し、キャッシュレス決済の利便性を向上させようとしているのです。
公正取引委員会の調査では、資金移動業者のアカウントに対して賃金の支払が行えるようになった場合、自身が利用するコード決済のアカウントに賃金の一部を振り込むことを検討する人が約40%いることが分かりました。また、別の調査では、デジタル給与を利用したい人の割合が約32%というデータもあります。
これらの結果から、デジタル給与には、一定の需要があることがわかります。
デジタル給与の指定資金移動業者として、現在(2024年1月22日時点)指定されている、主要な資金移動業者と特徴を解説します。
事業者名 |
特徴 |
PayPay |
ヤフーとソフトバンクが提供するスマホ決済サービスです。 QRコードやバーコードでの支払いが可能です。 PayPayボーナスやPayPayボーナスライトというポイントが貯まります。PayPayマネーという電子マネーをチャージして使うこともできます。 PayPayマネーを銀行口座へ出金できるのも特徴です。 |
LINE Pay |
LINEが提供するスマホ決済サービスです。 QRコードやバーコードで支払いが可能で、LINEポイントも貯まります。 LINE Pay残高という電子マネーをチャージして使うことも可能です。 LINE Pay残高は銀行口座への出金も可能です。 |
d払い |
NTTドコモが提供するスマホ決済サービスです。 QRコードやバーコードで支払いができ、dポイントが貯まります。 ドコモ口座という電子マネーをチャージして使うこともできます。 ドコモ口座は銀行口座への出金も可能です。 |
au PAY |
KDDIが提供するスマホ決済サービスです。 QRコードやバーコードで支払いができ、au WALLETポイントが貯まります。 au WALLET残高という電子マネーをチャージして使うこともできます。 au WALLET残高は銀行口座への出金も可能です。 |
メルペイ |
メルカリが提供するスマホ決済サービスです。 QRコードやバーコードで支払いができ、メルペイポイントが貯まります。 メルペイ残高という電子マネーをチャージして使うこともできます。 メルペイ残高は銀行口座への出金も可能です。 |
楽天ペイ |
楽天が提供するスマホ決済サービスです。 QRコードやバーコードで支払いができ、楽天ポイントが貯まります。 楽天ペイ残高という電子マネーをチャージして使うこともできます。 楽天ペイ残高は銀行口座への出金も可能です。 |
Kyash |
Kyashが提供するスマホ決済サービスです。 QRコードやバーコードで支払いができ、Kyashポイントが貯まります。 Kyash残高という電子マネーをチャージして使うこともできます。 Kyash残高は銀行口座への出金も可能です。 |
デジタル給与は2023年4月1日に解禁されているものの、現時点ではほとんど導入されていないのが現状です。
デジタル給与の導入には、企業側と従業員側のそれぞれにメリットとデメリットがあるため、以下で解説します。
まず、企業側のメリットとしては、口座振込と比較して、手数料が安い、もしくはかからない可能性がある点です。また、利便性の高さから、さまざまな人材の雇用機会の増加につながる可能性があります。
一方、企業側のデメリットとしては、デジタル払いと口座振込の二重運用による人的負担や管理コストの増加が懸念されます。
次に、従業員側のメリットとして、キャッシュレス決済を利用する際の利便性が上がることや、給与の一部をデジタル給与払いにできるため、便利です。
一方、従業員側のデメリットとしては、各従業員が希望する資金移動業者を使えない可能性があることや、資金移動業者の口座は入金できる上限が100万円までとなっている点です。また、スマートフォンなどのデバイスを活用する際の、高いセキュリティ対策も必要となります。
デジタル給与を導入するには、次の手順を踏む必要があります。
それぞれ解説します。
まずは、企業と従業員代表の間で、デジタル給与払いの対象となる従業員や賃金、指定資金移動業者、実施開始時期などの事項を定めた労使協定を書面で締結します。
次に、デジタル給与払いの内容やメリット・デメリット、注意点などを従業員に対して説明します。
説明を行った後、デジタル給与払いを希望する従業員に対して、書面による同意を得ましょう。同意書には、従業員が指定する資金移動業者や賃金の範囲・金額、代替口座などの事項を記載します。
従業員が指定した資金移動業者の口座が、厚生労働大臣によって指定されたものかどうかを確認しましょう。指定されていない口座には、デジタル給与を支払うことができないため、注意が必要です。
デジタル給与を導入する前に必要な準備には、以下のようなものがあります。
デジタル給与の資金移動業者については、厚生労働省が指定した資金移動業者の中から、自社の給与支払いに適したものを選ぶ必要があります。
デジタル給与払いを導入するには、就業規則の給与規定を改正する必要があります。給与支払い方法の変更について、従業員の同意を得るか、労働基準監督署に届出をする必要があります。
デジタル給与払いを行うには、各事業場で労使協定を締結する必要があります。労使協定には、デジタル給与払いの対象者や金額、資金移動業者の詳細などを記載しなければなりません。
デジタル給与払いを希望する従業員に対して、その内容やメリット・デメリット、注意点などを説明し、書面による同意を得ます。同意書には、資金移動業者の口座や賃金の範囲・金額、代替口座などの事項を記載する必要があります。
デジタル給与払いに対応するために、給与計算や支払いのシステムを改修しなければならない可能性があります。例えば、資金移動業者の口座への振込や、口座の上限額を超えた場合の銀行口座への振込といった仕様変更を行う必要があるでしょう。
そこで、現在使用している給与管理システムがデジタル給与に対応できるかを、事前に確認しておくことが重要です。
このように、デジタル給与の導入に関しては、手数料が安くなったり、新たな雇用機会が増えるといったメリットが考えられます。ただし、デジタル給与を管理する上でのセキュリティ対策や、個々の従業員ごとに対応するための負担増といった問題や課題があるのも事実です。
そこで、デジタル給与を導入する際は、まず法令やガイドラインに従い、手続きや注意点を確認するようにしましょう。
また、デジタル給与に関しては、指定資金移動業者の登録申請が始まったばかりであり、審査の完了にも時間がかかることが想定されている状況です。そのため各ベンダーの対応や方針の確定にも時間を要すると考えられます。
そこで、まずは現有システムが給与デジタル払いに対応可能かどうかや、ベンダーからの情報を定期的に確認しながら、従業員の意見やメリット・デメリットを整理することが重要です。
また、給与管理システムについてわからないことがある場合には、いつでもスーパーストリームにご相談ください。貴社に最適なソリューションを提供いたします。