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人的資本可視化指針とは?開示のメリットや義務化の対象項目を解説

人的資本可視化指針とは?開示のメリットや義務化の対象項目を解説

 スーパーストリーム

人的資本可視化指針とは、企業が人的資本に関する情報を開示し、経営の透明性や持続可能性を高めるための指針です。

人的資本の情報開示が企業価値向上のカギとなる中、上場企業を中心に「人的資本可視化指針」への対応が求められています。

人的資本の情報開示は、投資家などの利害関係者との信頼関係強化や競争力向上につながる一方で、開示項目や体制整備に課題があります。

そこで今回は、人的資本可視化指針の内容と、情報開示のメリットや義務化の対象項目について詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

人的資本可視化指針とは?

人的資本可視化指針とは、内閣官房の非財務情報可視化研究会が策定したガイドラインであり、企業の人的資本(人材投資や人材戦略など)を可視化し、情報開示するための基本的な考え方や手順を示したものです。

この指針は、人的資本への投資やその成果(インプット・アウトプット・アウトカム)を分かりやすく伝えることで、企業価値向上や投資家との信頼構築を目的としています。

有価証券報告書における開示の義務化

2023年3月期以降、上場企業を対象に有価証券報告書での人的資本情報の開示が義務化されました。この義務化により、企業は「人材育成方針」や「社内環境整備方針」、さらにこれらに関連する具体的な指標や目標、進捗状況を報告書に記載する必要があります。

この取り組みは、投資家や取引先などに対して企業の人的資本への投資状況や戦略を透明化し、信頼性を高めるのが目的です。

また、人的資本の情報開示は、企業価値向上や持続可能な成長を支援する重要な要素とされています。

指針策定の背景

人的資本可視化指針は、企業の無形資産の重要性が高まる中で、人的資本への投資を促進し、企業価値を向上させるために策定されました。特に、ESG投資の普及や労働人口減少といった社会的背景が影響しています。

この指針は、企業が人的資本を可視化し、投資家などの利害関係者との対話を深めるための具体的な手引きを提供しています。また、経営戦略と人材戦略を統合し、持続可能な成長を実現するためのフレームワークとしても機能するものです。

これにより、企業は競争力を強化し、社会的責任を果たすことが期待されています。

人的資本を可視化する方法とプロセス

以下では、人的資本を可視化する方法とプロセスを4つに分けて解説しますので、ぜひ参考にしてください。

1.基盤・体制の確立

人的資本を可視化するためには、まず基盤と体制を整えることが重要です。

そこで、経営層の同意と関与を得たうえで、取締役会や経営層レベルでの議論を行い、従業員との対話を促進しましょう。

また、部門間の連携を強化し、人的資本指標をモニタリングするための情報基盤の構築も必要です。これにより、全社的な取り組みが可能となり、可視化の基盤が整います。

2.可視化戦略の構築

次に、可視化戦略を策定します。

まずは、価値協創ガイダンス(企業と投資家の間での対話を深めるために経済産業省が策定した指針)やIIRCフレームワーク(国際統合報告評議会が策定した統合報告のための枠組み)を活用し、人的資本への投資と競争力のつながりを明確化しましょう。

さらに、目標や指標を設定し、進捗状況をモニタリングする仕組みを構築します。

この戦略により、可視化の方向性が明確になり、効果的な情報開示が可能です。

3.データ収集と分析

可視化戦略を策定したら、人的資本に関するデータを収集し、分析を行います。

従業員のスキルや経験、エンゲージメント、健康状態などのデータを統合し、可視化に必要な情報を整理しましょう。

これにより、人的資本の現状を把握し、課題や改善点を特定することが可能です。

4.情報の開示と活用

最後に、可視化した情報を有価証券報告書や統合報告書などで開示します。また、開示した情報を基に、投資家などとの対話を深め、経営戦略や人材戦略の改善に活用しましょう。

このプロセスを繰り返すことで、人的資本の可視化を継続的に更新します。

 

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人的資本可視化指針の主な開示項目

以下では、人的資本可視化指針の主な開示項目について解説します。

7分野19項目の概要

人的資本可視化指針では、人的資本の情報開示を7つの分野に分類し、19の具体的な項目を設定しています。これらは、企業が人的資本を可視化し、投資家や取引先、従業員などを含む利害関係者に対して透明性を高めるための指針です。以下に、その概要を表にして解説します。

分野

項目

人材育成

リーダーシップ育成、スキル向上、研修参加率、キャリア開発のレビュー割合など。

エンゲージメント

従業員満足度、エンゲージメントスコア、従業員の意識調査結果など。

流動性

離職率、新規採用率、定着率、後継者準備率、採用充足期間など。

ダイバーシティ

男女間賃金格差、女性管理職比率、育児休業後の復職率、属性別従業員比率など。

健康・安全

身体的健康、精神的健康、安全対策、健康診断受診率など。

労働慣行

賃金の公平性、福利厚生、児童労働防止、労働環境改善、組合との関係など。

コンプライアンス

人権問題への対応、差別事例の件数、団体労働協約の対象従業員割合など。

開示の義務化と推奨項目の違い

2023年3月期以降、有価証券報告書において人的資本情報の開示が義務化されましたが、義務化された項目は、例えば「人材育成方針」や「社内環境整備方針」、およびこれらに関連する測定可能な指標です。

一方、推奨項目は、企業が自社の特性や戦略に応じて選択的に開示する内容であり、例えば「エンゲージメントスコア」や「ダイバーシティ指標」などが含まれます。

義務項目は最低限の基準を満たすためのもので、推奨項目は企業の独自性や競争力をアピールするためのものです。

開示例と指標の選定

人的資本の開示例としては、以下のような指標が挙げられます。

人材育成

人的資本の開示例として、企業は研修プログラムの参加率や年間研修時間、研修費用を具体的に示します。

例えば、リーダーシップ育成プログラムの参加者数や成果、スキル向上の取り組みを数値で表すことで、投資家に対して人材育成への取り組みを明確に伝えることができます。

エンゲージメント

従業員エンゲージメントの開示例では、エンゲージメントスコアや従業員満足度調査の結果を公開します。

例えば、従業員の仕事への熱意や組織への共感度を測定し、改善施策の進捗状況を示すことで、企業の働きやすさや魅力をアピールできます。

ダイバーシティ

ダイバーシティの開示例として、女性管理職比率や育児休業取得率、男女間賃金格差を具体的に示します。

例えば、性別や年齢層の多様性を数値で表し、取り組みの成果を公開することで、企業の多様性推進への姿勢を明確に伝えることができます。

 

指標の選定においては、企業の経営戦略や業界特性に合致するものを選ぶことが重要です。また、企業に関わる利害関係者が理解しやすい形で、定量的かつ比較可能なデータを提供することが求められます。

これらの情報開示により、企業は人的資本の価値を最大限に引き出し、持続可能な成長を目指すことが可能です。

 

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人的資本を可視化するメリット

次に、企業が人的資本を可視化するメリットを紹介します。

投資家などの利害関係者の信頼が向上する

人的資本を可視化することで、企業の透明性が高まり、投資家や取引先からの信頼が向上します。具体的には、人材育成方針や多様性推進の取り組みを明確に示すことで、企業の持続可能性や成長性をアピールできるでしょう。

また、人的資本への投資が企業価値向上に直結することをデータで示すことで、投資家に対して説得力のある情報を提供可能です。これにより、資金調達の円滑化や株主価値の向上が期待されます。

経営戦略の明確化と組織力強化につながる

人的資本の可視化は、経営戦略と人材戦略の整合性を高め、組織全体の目標を明確化するのに役立ちます。例えば、スキルマッピングやエンゲージメントスコアを活用することで、組織の強みと弱みを把握し、適切なリソース配分が可能となります。

また、データに基づく意思決定が促進されるため、部門間の連携が強化され、組織全体のパフォーマンスの向上にも寄与するでしょう。これにより、競争力のある組織体制が構築されます。

採用力・従業員エンゲージメント向上につながる

人的資本を可視化することで、企業の魅力を明確に伝えることができ、採用力が向上します。例えば、育成プログラムや働きやすい環境をデータで示すことで、求職者にとって魅力的な企業として認識されやすくなるでしょう。

また、従業員のスキルや貢献度を可視化することで、適切な評価とフィードバックが可能となり、エンゲージメントの向上に寄与します。これにより、離職率の低下や生産性の向上が期待されるようになり、企業の持続的な成長が可能です。

 

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人的資本可視化指針への対応ポイント

企業が人的資本可視化指針へ対応する際のポイントを、以下で解説します。

経営層のリーダーシップ

人的資本可視化指針を実現するには、経営層のリーダーシップが不可欠です。なぜなら、経営層が人的資本の重要性を認識し、明確なビジョンを示すことで、全社的な取り組みが促進されるからです。

具体的には、人的資本に関する方針や目標を設定し、取締役会や経営層レベルでの議論を通じて、経営戦略と連携した取り組みを推進しましょう。また、従業員との対話を重視し、現場の声を反映させることで、組織全体の一体感を高めることが重要です。

IT・データ基盤の整備

人的資本の可視化には、データを収集・統合・分析するためのIT基盤が必要です。そこで、クラウドシステムを活用し、リアルタイムでデータ活用できる環境を整備しましょう。

また、BIツールやAIを活用した分析機能を導入することで、複雑なデータを効率的に処理し、経営判断に役立つ洞察を得ることが可能です。これにより、データの一元管理が実現し、人的資本の可視化がスムーズに進むでしょう。

社内体制とガバナンス強化

人的資本の可視化を成功させるには、社内体制とガバナンスの強化が不可欠です。部門間の連携を促進し、データの品質管理やアクセス権限の設定を徹底することで、情報の正確性と安全性を確保しましょう。

また、人的資本指標のモニタリング体制を構築し、進捗状況を定期的に評価する仕組みを整えることも重要です。これにより、企業の透明性が向上し、投資家や取引先はもちろん、従業員を含めたすべての利害関係者からの信頼を得ることができます。

 

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上場企業・大手中堅企業が注意すべき課題と対策

最後に、上場・大手・中堅企業が人的資本を開示する際に注意すべき課題と対策を解説します。

開示内容の精度と透明性

開示内容の精度と透明性は、企業の利害関係者からの信頼を得るために重要です。課題としては、情報の不正確さや不十分な説明が挙げられるでしょう。

そこで、データの正確性を確保するための内部監査体制を強化し、統一されたフォーマットで情報を提供することが重要です。また、開示内容を分かりやすくするために、グラフや図表を活用し、透明性を高めるのも効果的です。

継続的な改善とPDCAサイクル

PDCAサイクルを活用することで、継続的な改善が可能です。ただし、計画が曖昧な場合には、実行が不徹底になるという課題があります。

そこで具体的な目標を設定し、実行後の評価をデータに基づいて行うことが重要です。また、改善案を迅速に取り入れる仕組みを構築し、サイクルを回し続けることで、業務効率や成果を向上させることができるでしょう。

他社の成功事例の活用

他社の成功事例を参考にすることで、開示情報の効率的な改善が可能です。ただし、課題として、自社の状況に適合しない事例をそのまま採用してしまうリスクがあります。

そこで、業界や規模が類似した企業の成功事例を分析し、自社の課題に適した方法を選択することが重要です。また、外部の専門家やコンサルタントの助言を受けることで、より効果的な取り組みが実現できるでしょう。

 

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1.データの統合と一元管理

「SuperStream NX」は、異なる部門やシステムで分散している人的資本データを統合し、リアルタイムで一元管理する機能を備えています。これにより、データのサイロ化を防ぎ、全社横断の可視化を実現します。

2.高度な分析と見える化

このシステムには、ダッシュボードやレポート機能が搭載されており、人的資本データをグラフやチャートで視覚化することが可能です。これにより、複雑な情報を分かりやすく伝え、課題や改善点を迅速に特定できます。

3.自動化による効率化

人的資本関連の指標計算やレポート作成を自動化することで、手作業の負担を軽減します。また、正確なデータに基づくレポートが迅速に生成されるため、経営層の意思決定を強力にサポートします。

4.コンプライアンス対応力

「SuperStream NX」は、法令遵守に必要な機能を提供しており、例えば電子帳簿保存法や人的資本可視化指針の要件を満たすデータ管理が可能です。これにより、リスクを軽減しつつ、信頼性の高い情報を提供できます。

5.柔軟性と拡張性

このシステムは拡張性が高く、企業の成長や変化するニーズに柔軟に対応可能です。既存のERPや会計システムとの連携が可能で、導入後もスムーズな運用が期待できます。

 

これらの特徴により、「SuperStream NX」は、人的資本可視化を実現し、企業価値向上に貢献するための効果的なソリューションです。

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