トレンド情報 2023.03.24 (UPDATE:2024.11.20)
スーパーストリーム
従業員に対して法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて労働を行わせる場合には、36協定を締結し、労働基準監督署長に届け出ることが必要です。
また、法定労働時間を超える労働時間である時間外労働時間(残業時間)には、上限が設けられており、無制限に行わせることはできません。
ここでは、これらの「残業時間の上限規制」についてわかりやすく解説します。
労働基準法では、残業時間の限度として、「1か月において45時間」「1年について360時間」という制限を設けています。
また、3か月を超える期間を対象とする1年単位の変形労働時間制を採用する場合は、「1か月について42時間」、「1年について320時間」が上限となります。
また、残業時間について法律による上限が設けられているのは、法定労働時間を超える法定外残業時間です。所定労働時間を超え、法定労働時間の範囲内の労働時間である法定内残業時間には、上限が設けられていません。
突発的に業務量が増加してしまい、残業時間の上限である1か月45時間、1年について360時間の枠内では、業務が処理しきれない場合も考えられます。例えば、製品不具合によるリコール対応など、予測することのできない業務量の大幅な増加が起きれば、上限時間を超過してしまうこともあり得るでしょう。
労働基準法では、予測不能な業務量の大幅な増加への対応として、特別条項と呼ばれる制度を設けています。
特別条項として限度時間を超える臨時的で特別の事情を具体的に示した「36協定(特別条項付き36協定)」を締結することで、限度時間を超えて労働を行わせることが可能です。
残業時間の上限を超える労働が可能となるのは、あくまでも特別の事情がある場合に限られます。
特別の事情とは、単に「業務繁忙の時」「業務上必要な時」のように漠然としたものであってはなりません。
特別の事情は、次のように具体的に特定する必要があります。
特別条項付き36協定を締結したとしても、残業時間は年720時間以内でなければならず、残業時間と休日労働時間を合算した時間については、次のような制限が設けられています。
6か月を平均して80時間以内であれば良いわけではなく、2か月平均、3か月平均、4か月平均、5か月平均、6か月平均のいずれも時間内に収める必要があることに注意してください。また、上限時間を超えることができるのは、年間で6回(6か月)までとなっています。
年720時間以内や単月100時間未満といった上限規制は、全ての業種が対象となっているわけではありません。
次の業種は、2024年4月1日まで上限規制の対象外となっています。
また、新技術・新商品の開発業務に従事する場合は、期間を問わず上限規制の対象とはなりません。
ただし、使用者である会社には、労働契約法によって、従業員の安全に配慮する義務が課せられています。そのため、新技術・新商品の開発業務であっても、労働時間が一定以上となった場合には、面接指導など長時間労働による健康障害防止のために必要な措置を講じることが必要です。
上限規制には、実効性担保のために罰則が設けられています。罰則の内容は、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金となっており、知らなかったでは済まされないため注意してください。また、違法な長時間労働を行わせている企業は、厚生労働省によって、企業名が公表される場合もあります。
長時間労働やサービス残業によって引き起こされる過労死をはじめとする問題は、大きな社会的注目を受けています。
長時間労働と過労死には強い因果関係があり、労働時間が長くなればなるほど、過労死に繋がる可能性も高くなります。
そして残業と長時間労働は密接不可分な関係にあるため、適切に残業時間を管理し、長時間労働に繋がらないようにする必要があります。もちろん法律で許された範囲内の残業時間であっても、従業員の心身の健康の確保や、人件費の抑制のために可能な限り削減することが必要です。
残業時間削減のためには、どの程度残業が行われているのかを正確に把握しなければ始まりません。そのうえで、無駄な残業時間を洗い出すことによって業務の効率化を図り、必要であれば、時差出勤やノー残業デーなど、新たな社内制度を構築することも必要です。
また、裁量労働制やフレックスタイム制を活用することで、残業時間削減に繋がる場合もあります。
残業時間削減には、残業を命じる経営層や管理職の意識改革も必要となります。
残業することを当たり前とする社内認識から、残業は可能な限り避けるものであるとする認識へ変えるためには、まず経営層や管理職が率先して退社時刻を早めたり、部下へ退社を促す声掛けを行ったりすることが必要です。
どのような手段を用いて残業時間の削減を行うにしても、まず正確な残業時間の把握が必要です。
そのために必要となる適切な残業管理方法について、次項から解説を行っていきます。
正確に残業時間を把握し、残業管理を行うためには、残業を許可制にすることが有効な手段です。
許可を受けない残業を排除することで、正確な残業時間の把握に繋がり、長時間労働の抑制も可能となります。また、残業の必要がないにも関わらず、残業手当を目的として会社に居残る、偽装残業とも呼べる状態をなくすことにも繋がります。
残業の許可制には、残業申請を行う従業員の意識変化が望めるメリットも存在します。
必要と判断されない残業は、上司から却下されることになるため、自ずと社員も「この残業は本当に必要か」と残業の必要性について考える必要が生じるでしょう。残業の必要性について考えることは、業務の無駄を見直し、効率化のヒントを得ることにも繋がります。
残業の許可制を導入するためには、許可をする管理職の教育研修も欠かせません。
必要となる残業を判断するためには、業務について深い理解が必要となるだけでなく、残業時間の上限規制など残業に関する法令の知識も必要となってきます。許可をする管理職の業務や法令に関する知識が曖昧なままでは、適正な残業許可制の運用は望むべくもありません。
適正な許可制運用には、許可申請書の様式や許可基準など手続面での統一を図ることも必要となってきます。
一貫した許可基準を設け、不公平感をなくすとともに、いつどのような様式の申請書を提出すれば良いか社内にしっかりと周知しましょう。
また、残業時間を含めた労働時間の正確な把握は、賃金未払いといった労使間トラブルを未然に防ぐことにも繋がります。
適切に労働時間を管理する方法については、次の記事で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
参考:適切に労働時間管理をするための3つのポイントと管理方法を解説
残業時間を管理する方法としては、Excelの使用やタイムカード、勤怠管理ツールなど様々な方法があります。
正確に残業時間が把握できるのであれば、どのような方法を取ることも自由ですが、勤怠管理ツールを使った残業管理が特におすすめです。
Excelでの残業管理では、入力作業に手間が掛かってしまい、負担が大きくなってしまいます。また、タイムカードによる管理は、代理打刻など不正打刻の問題を避けて通れません。
これに対して勤怠管理ツールを使った残業管理では、生体認証の利用により、本人以外の打刻を防止することができます。
また、日々の打刻から自動的に集計を行うため、入力の手間を省き、集計ミスを減らすことも可能です。
また、勤怠管理ツールは、最新の法令に対応しており、法令を遵守した残業管理が可能となります。
スマホを用いた打刻も可能であるため、時と場所を選ばず利用可能なのも大きなメリットです。特に法改正への対応は、企業にとって頭の痛い問題であり、ツール側が対応してくれることは、大きな助けとなるでしょう。
勤怠管理ツールは、初期費用や月額費用などが掛かる場合もあり、従業員が操作に慣れるまで時間が掛かってしまうなど、デメリットといえる面も存在します。
しかし、導入による勤怠管理の効率化や不正防止、法改正への対応などがもたらすメリットは、デメリットを上回ります。残業管理に課題を感じているのであれば、勤怠管理ツールを活用してみてください。
勤怠管理ツール・ソリューションの「SuperStream-NX 勤怠管理」は、基本的な打刻管理・勤怠管理はもちろん、休暇管理や残業管理にも対応しています。また、アラート機能で処理漏れを防止できるのも導入するメリットです。全機能がモバイルに対応しており、場所や時間を選ばず作業することができるので、ぜひ導入を検討してみてください。
「SuperStream-NX 勤怠管理」について詳しくはこちらのページをご覧ください。
参考:SuperStream-NX 勤怠管理
従業員の心身の健康確保や、人件費の抑制のためには、残業時間の管理が欠かせません。残業時間の上限規制違反には、罰則も予定されており、適切な残業時間の管理は企業にとって必要不可欠なものとなっています。 当記事では、残業時間の上限規制の内容や、適切な残業管理の方法などについて解説を行ってきました。残業管理について悩みを抱える人事労務担当者は、当記事を参考にして、自社に合った適切な残業管理を行ってください。
2020年4月1日から大企業だけでなく、中小企業においても残業時間の上限規制が適用されています。既に適用開始からかなりの時間が経過していますが、未だに上限規制を遵守した残業時間管理に苦労している企業も多いのではないでしょうか。
残業時間規制に違反した場合には、懲役や罰金といった罰則が予定されており、企業名が公表される場合もあります。仮に罰則の適用や企業名が公表されなくても、長時間の残業は、労働者の心身を確実に蝕みます。長時間残業による心身の故障は、生産性の低下に繋がり、ひいては、過労死という痛ましい結果を生みかねません。そのような事態を避けるためにも、しっかりと残業管理を行い、長時間残業を抑制するように努めましょう。
また、上限規制の適用を猶予されている建設業や、自動車運転の業務なども、猶予期限である2024年3月31日までもう間がありません。猶予期限までまだ時間があるなどと考えずに、早めに上限規制への対応を行うことが必要です。
【税理士プロフィール】
社会保険労務士 涌井好文
(涌井社会保険労務士事務所代表)
平成26年より神奈川県で社会保険労務士として開業登録を行い、以後地域における企業の人事労務や給与計算のアドバイザーとして活動を行う。
近時はインターネット上でも活発に活動しており、クラウドソーシングサイトやSNSを通した記事執筆や監修を中心に行っている。
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