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年末調整が必要な理由、対象となる人・ならない人の違いやスケジュールを解説

年末調整が必要な理由、対象となる人・ならない人の違いやスケジュールを解説

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年末調整は、サラリーマンなど給与所得者の所得税の精算として、会社の担当者においても従業員においても年に1度処理が求められます。近年では、業務効率化が進み、時間のかかっていた年末調整をスピーディーに片付ける傾向にあります。この記事では、なぜ年末調整が必要なのか、また、年末調整には具体的にどのような手続きがあるのかなどを解説します。

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年末調整とは(年末調整が必要な理由)?

そもそも「年末調整」はなぜ必要なのでしょうか?
この基本的な問いに答えるために、給与所得に対する所得税の大まかなしくみを振り返ってみます。

所得税は、「個人の所得」に対してかかる税で、大まかに言うと、1年間の収入から所得控除を差し引いた残り(課税所得金額)に所得税の税率を掛けて所得税を求めます。

所得税 ={(収入金額 − 給与所得控除)− 各種所得控除} × 所得税の税額

このように計算したものが、1年間の給与について納付すべき所得税額(年調年税額)です。

一方、給与所得については会社では毎月の給与支払の際に、源泉徴収税額表に沿って所得税及び復興特別所得税(以下、「所得税等」といいます)を源泉徴収し、納付します。

先の年調年税額と1年間の源泉徴収額の合計額は、一致しないのが普通です。
その理由としては、源泉徴収はあくまで概算であることに加え、次のことなどが挙げられます。

  • 給与の変動があった
  • 扶養親族などに異動があった
  • 生命保険などの支払いがあった

この年税額と源泉徴収の合計額とを一致させるために、税金の過不足を調整するのが「年末調整」です。
この調整のために、従業員は会社からいくつかの申告書(内容は後述)の記載を求められます。従業員がこれらの書類を提出しないと税金の過不足が生じたままとなり、損をすることもあります。

一方、会社が年末調整を徴収しなかった場合には1年以下の懲役または50万円以下の罰金、年末調整したものの追加の徴収額を納付しなかった場合は10年以下の懲役など、源泉徴収義務者である会社に対するペナルティは大きいと言えます。

年末調整と確定申告の違い

年末調整と確定申告はともに、所得税を正しく求め、納税するための手続きです。
年末調整は、所得税について従業員の代わりに会社がまとめて行う調整手続きです。

これに対し、個人事業主などが行う確定申告は、納税者自身が税務署に対し自ら行う手続きと言えます。確定申告においても、個人事業主は予納税としてあらかじめ納めた所得税と年税額を精算調整します。

基本的に、年末調整を受けた従業員は、自ら確定申告する必要がないことがほとんどですが、例えば「医療費控除」など会社の年末調整に反映されないものについては、年末調整が終わってから確定申告をするケースもあります。

年末調整の対象となる人・ならない人

年末調整の対象となる人は、原則として会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出した人です。
この申告書は、その年の最初の給与日の前日までに提出することとされています。
会社では、給与の額とこの申告書の扶養親族の数から源泉徴収額を徴収しているのです。

年末調整の対象となる人は、年間を通じてその会社に勤務している人や、年の途中で転職してきて年末まで勤務している人など。個人、法人を問いませんので、個人事業主に雇われていても同様です。

逆に、年末調整の対象とならない人は、この申告書を出していない人であり、確定申告の対象となる人です。

ただし、例外的に給与所得でも年末調整の対象とならず、確定申告が必要な人には次のような人がいます。

  • その年中の給与収入が2,000万円を超える人
  • 2か所以上から給与を受けており、他の会社に扶養控除等申告書を提出している人
  • 非居住者(国内に住所や居所を1年以上有していない人) など

詳細は、国税庁 年末調整の対象となる人でご確認ください。

令和4年の年末調整の変更点

令和4年分の年末調整は、令和3年分からの大きな改正はありませんでしたが、次の点に注意しましょう。

  • 住宅借入金等特別控除は令和4年から控除率が変わりますが、控除適用初年度は年末調整の対象ではないため、昨年との変更はありません。
  • すでに生命保険や地震保険などの控除証明書は電子データでの控除証明書の提出が可能となっています。
    加えて令和4年分からは社会保険料控除及び小規模企業共済等掛金控除の控除証明書について電子データでの提出が可能となりました。

また、書類の取扱いについても、給与担当者においては次のようなことに注意しましょう。

  • 給与支払報告書(個人別明細書)の提出枚数が2枚から1枚へ
    今までは、一人につき2枚の給与支払報告書の提出が求められましたが、令和5年1月以降提出分からは、一人につき明細書1枚となります。
  • 民法改正により、源泉徴収票の「未成年者」欄に注意
    令和4年4月1日より成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたため、令和4年分の源泉徴収票には平成17年1月3日以降に生まれた方を「未成年者」として〇をすることになります。

年末調整の流れ(スケジュール)

年末調整の流れについて、時系列的にみていきましょう。

10月 11月 12月 1月
(1)従業員に各種申告書の配付・回収  
  (2)年調年税額の計算、過不足計算  
  (3)還付及び納付  
  (4)源泉徴収票等の提出

(1)従業員に各種申告書を配付・回収及び内容確認

この時に配付・回収する所得控除のための申告書は次のとおりです。
回収時には、添付資料が必要なものもあるため、漏れがないかをよく確認します。

  • 扶養控除等(異動)申告書(一度提出されたものですが、異動があれば書いてもらいます)
  • 基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
  • 住宅借入金等特別控除申告書(該当者のみ)

※国税庁サイトに掲載されている「令和4年分年末調整チェック表」などでチェックしましょう。

(2)年調年税額、過不足額の計算および精算

おおよそ次の順序で進めますが、申告書について不明点は従業員本人に確認します。

① 本年12月までの給与総額及び源泉徴収の合計額を集計する。

② ①の給与総額から給与所得控除後の給与を計算する。

③ 扶養、配偶者、障害者など各控除額を確認し、各種所得控除額の合計額を計算する。

④ ②、③の結果を受け、課税所得金額を計算し、年調年税額の計算をする。
   (住宅ローン2年目以降の場合、さらに住宅借入金等特別控除を税額から差し引きます。)

⑤ ①、④の結果を受け、過不足額を計算し、精算する

※精算は、通常はその年最後の給与を支払う際に調整します。

(3)過納額の還付と不足額の納付

年末調整をした月分の所得税の納付書に過不足額を反映させ、源泉徴収税を納付します。
納付額がない場合にも「所得税徴収高計算書」を税務署に提出します。
納期限は、源泉徴収の対象となる所得を支払った月の翌月10日(納期の特例の承認を受けていない場合)です。
※【例】令和4年分の納期限:令和5年1月10日(納付の特例を受けている場合は1月20日)

(4)源泉徴収票等の関係者への提出

  • 従業員に「源泉徴収票」を配付(通常は給与支払時に合わせて配付します。)
  • 所轄税務署に「源泉徴収票」及び「法定調書合計表」を提出
  • 従業員の住所地の市区町村ごとに「給与支払報告書」及び「総括表」を提出
    提出期限は翌年1月31日です。
    ※【例】令和4年分の提出期限:令和5年1月31日

なお、提出期限以降に修正などが発生した場合には、従業員自身で確定申告を行うことになります。

 

このように、年末調整は従業員を雇用する事業主において進められる所得税の精算手続きです。
所得税だけではなく、給与支払報告書で市区町村に連絡することにより、住民税にも連携しています。

さらに、弁護士や税理士、デザイナーなどに一定額以上の報酬を支払った場合には「支払調書」を提出しますし、不動産の家賃などを支払っている会社は「支払調書」をそれぞれ税務署に提出します。

コロナ禍で普及したテレワークなどに対応するため、年末調整において控除申告書を電子的に提出し、かつ、控除証明書データを積極的に利用する方法もあります。
手作業だけに頼らず、電子的な方法も取り入れて年末調整をスッキリとすませましょう。

コロナ禍で普及したテレワークなどに対応するため、年末調整において控除申告書を電子的に提出し、かつ、控除証明書データを積極的に利用する方法もあります。手作業だけに頼らず、電子的な方法も取り入れて年末調整をスッキリとすませましょう。
参考:国税庁パンフレット(年末調整を電子化しましょう)

年末調整手続きの電子化については、以下の記事で詳しく解説しています。
こちらもぜひ参考にしてください。
第134回 「年末調整手続きの電子化について」|税務会計業務のポイント

税理士コメント

従来、年末調整は個々人の世帯の状況を反映する必要があるため、非常に細やかな配慮が必要となり、神経を使う作業の代表格でした。会社によっては年末調整が繁忙期と重なることもありました。

しかしながら、年々、年末調整においても電子データ化がすすみ、取扱いも変わってきています。
それぞれの会社にあったシステムにより、効率的な年末調整作業ができると、翌年からの源泉徴収事務などにもゆとりが生まれて、さらに効率化のアイデアも湧くというものです。

【税理士プロフィール】
税理士・CFP・認定経営革新等支援機関
岡 和恵
大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。システム会社に転職。
システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士やフィナンシャルプランナー資格を取得。
2019年より税理士事務所を開業し、税務や会計に関するライティング業務も開始。
図や表などを多用したわかりやすい執筆を心掛けています。

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