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第174回 令和6年度 税制改正について

第174回 令和6年度 税制改正について

 アクタス税理士法人

 12月14日に「令和6年度税制改正大綱」が公表されました。今回の改正では、デフレ脱却を最優先課題と位置付け、物価上昇を上回る賃金の上昇を実現するために、所得税・住民税の定額減税や賃上げ減税の拡充等が行われることになります。また戦略分野への投資促進やイノベーション活性化による生産性向上を後押しするなどの経済成長の牽引に資する税制も整備されます。

法人課税

 法人課税では、賃上げ減税の拡充や、戦略分野への投資減税創設などを通じて、企業の内部留保活用と賃金引上げを促す施策が強化されます。

項目

内容

適用期日等

賃上げ促進税制
【見直し】

減税

※ページ下部に賃上げ促進税制を一覧表にまとめています

 

 

 

 

 

 

○賃上げの促進に係る税制の改組の概要

  1. 大企業(資本金1億円超、常時使用従業員数2,000人超)

    ①給与支給額が前年比3%以上増加している場合、控除率10
    4%以上増加している場合、控除率を5%上乗せ(控除率15%)
    5%以上増加している場合、控除率を10%上乗せ(控除率20%)
    7%以上増加している場合、控除率を15%上乗せ(控除率25%)
    ⑤控除率加算の教育訓練費の要件緩和と新たな加算条件
    ⑥最大控除率は35
    ※マルチステークホルダー方針を公表しなければならない企業の範囲に従業員数2,000人超の企業を追加
  2. 中堅企業(資本金1億円超、常時使用従業員数2,000人以下 ※)

    (新設)※グループ全体で1万人を超える場合は大企業に分類
    ①給与支給額が前年比3%以上増加している場合、控除率10
    4%以上増加している場合、控除率を15%上乗せ(控除率25%)
    ③控除率加算の教育訓練費の要件緩和と新たな加算条件
    ④最大控除率は35%
  3. 中小企業

    ①控除率は現行制度
    ②控除率加算の教育訓練費の要件緩和と新たな加算条件
    ③最大控除率は45%
    控除しきれない額を5年間繰り越せる繰越控除を新設

令和641日~令和9331日までの間に開始する各事業年度

3年間)

 

 

戦略分野国内生産促進税制

【創設】

減税

 

 

 

 

○産業競争力強化法の「事業適応計画」に基づく設備等を取得して、事業の用に供した場合の税額控除

【適用法人】次の全ての要件を満たす法人

①青色申告法人であること
②産業競争力強化法の事業適応計画の認定を受けること
③産業競争力基盤強化商品生産用資産の取得等をし、国内事業の用に供する

【対象資産】

産業競争力基盤強化商品生産用資産

【税額控除】

税額控除:いずれか小さい金額

  1. 産業競争力基盤強化商品の対象期間において販売数量に応じた金額
  2. 産業競争力基盤強化商品生産用資産(仮称)の取得価額を基礎にした金額

控除限度DX投資促進税制、カーボンニュートラル促進税制の税額控除額と合計で法人税額×40%(半導体生産用資産は20%)を限度)
     ※控除限度を超えた部分は、4年間(半導体生産用資産は3年間の繰越ができる)

【産業競争力基盤強化商品(仮称)とは】

半導体、電気自動車等、鉄鋼、基礎科学品、航空機燃料など総事業費が大きく、特に生産段階のコストが高いものなどが対象

産業競争力強化法の事業適応計画の認定の日以後10年以内の日を含む各事業年度

 

 

 

 

イノベーションボックス税制

【創設】

減税

 

○イノベーションを創出する民間による無形資産投資を後押しするため、税制上の支援策としてイノベーションボックス税制が創設

【損金算入】

特許権譲渡等を行った場合に、その事業から発生する一定の所得
金額の30%相当額を損金算入

令和741日~令和14331日までの間に開始する各事業年度

7年間)

 

外形標準課税における対象法人

【見直し】

増税

 

 

 

 

 

 

 

○会計上の資本金から資本剰余金への項目振替の減資で外形標準課税の対象から外れる問題への対応策としての見直し

【対象法人の拡大】

現行基準に加え、追加基準が加わる

  • 減資対応
    前事業年度※に外形標準課税の対象であり、当事業年度に減資し、資本金1億円以下資本金と資本剰余金の合計が10億円超の法人を新たに対象に

    ※公布日を含む事業年度の前事業年度をいう(公布日前日に資本金1億円以下となっていた場合には、公布日以後最初に修了する事業年度)

    例:仮に公布日が令和6331日の3月決算法人であった場合
      ▶ 令和441日~令和5331
       公布日の前日(令和6330日)までに資本金1億円以下になっていた場合

 ▶ 令和541日~令和6331
  公布日(令和6331)以後最初に修了する事業年度

  • 100%子法人等への対応

資本金と資本剰余金の合計額が 50 億円を超える親法人の100%子法人で資本金1億円以下資本金と資本剰余金の合計が2億円超の法人も対象に

  • ※激変緩和措置
    新たに外形標準課税の対象となる子法人等について軽減措置
    初年度:従来の方式との増差税額の3分の2を控除
    次年度:従来の方式との増差税額の3分の1を控除

 

 

 

減資対応:

令和741日以後に開始する事業年度から適用

 

 

 

 

100%子法人等への対応:

令和841日以後に開始する事業年度から適用

 

主要規定の延長措置

 

 

 

中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例制度
(一定の法人のうち、常時使用する従業員数が300人超える社を除外)

○中小企業者等以外の法人の欠損金の繰戻還付の不適用措置

○海外投資等損失準備金制度

○国家戦略特別区域、国家戦略総合特別区域における機械等を取得した場合の特別償却制度又は税額控除制度

○交際費等の損金不算入制度
 交際費等から除外される1人あたり5,000円以下飲食費について、金額要件を10,000円以下に引き上げ

令和8331日まで2年延長

 

 

 

 

令和9331日まで3年延長

 

個人所得課税

 所得課税では所得税・住民税の定額減税、住宅減税関係を含む子育て世帯への支持拡充になります。

項目

内容

適用期日等

所得税・個人住民税の定額減税

減税

○賃金上昇が物価高に追い付いていない負担を緩和する一時措置

  • 【対象者】
    令和6年分の所得税の合計所得金額が1805万円以下
    (給与収入の場合には2000万円以下)である納税者
    ※高額所得者(給与所得者で年収2,000万円超)は除外
  • 【定額減税額】
    所得税:本人3万円 + (同一生計配偶者+扶養親族)数×3万円
    住民税:本人1万円 + (控除対象配偶者+扶養親族)数×1万円
  • 【実施時期】
    令和66月以降、源泉徴収や予定納税から順次減税
  • 【減税の実施方法】
     ①給与所得者
      所得税: 6月以後最初に支払いを受ける給与等の源泉徴収税額
          から減税額を控除
      住民税:令和66月分は特別徴収なし、7月以降に控除額を
          令和
    75月までの11ヶ月に渡って均等に減税額を控除

     ②事業所得者等
      所得税:令和6年分の所得税の第1期の予定納税額から
          本人分控除、確定申告で精算
      住民税:令和6年度分の住民税の第1期の納税額から控除

     ③公的年金受給者
      所得税:令和66月以後最初に支払いを受ける公的年金等の
          源泉徴収税額から減税額を控除
      住民税:令和610月以後最初に支払いを受ける公的年金等の
          特別徴収税額から減税額を控除

令和6

ストックオプション税制

【要件緩和】

減税

○権利行使時に経済的利益が非課税となる税制適格ストックオプションの要件緩和

  • 【要件緩和の目的】
    スタートアップの資金調達環境を改善
    株式の管理コスト負担を軽減
    人材確保を容易にし、成長を後押し
  • 【要件緩和の内容】
    ①株式の保管委託要件の緩和
     IPOに限らず、企業買収時にも機動的に対応できるように
     証券会社への株式の保管委託が不要となり、ストックオプション
     発行会社自身が株式管理する場合でも適用可となる
    ②年間権利行使価額の上限引上げ
    actus_1
    ③社外高度人材に係る要件の緩和
     実務経験年数の短縮など

大綱では適用期日等の具体的な明記なし

住宅ローン控除等(子育て支援策として1年限定)

減税

 

 

○子育て世帯に支援策とし令和6年度のみの暫定措置

  • 【住宅ローン控除】
    ①子育て特例対象個人が認定住宅等の取得等をして令和6年中に
     入居した場合の借入限度額を500万円上乗せ
     (ZEH等の省エネ住宅は1,000万円上乗せ)
    actus_2
    ②住宅面積要件の緩和を1年延長
  • 【既存住宅等の耐震改修等をした場合の特例措置】
    子育て特例対象個人が、一定の子育て対応改修工事をした場合、その工事に係る標準的な工事費用相当額(250万円を限度)の10%をその年分の所得税額から控除
    ※子育て特例対象個人とは
     ・年齢40歳未満で配偶者を有する者
     ・年齢40歳以上で年齢40歳未満の配偶者を有する者又は
      年齢
    19歳未満の扶養親族を有する者

令和6

 

 

主要規定の延長措置等

 

〇居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除

○特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除

○認定住宅の新築等をした場合の所得税額の特別控除

○既存住宅の耐震改修をした場合の所得税額の特別控除

令和71231日まで2年延長

資産税

項目

内容

適用期日等

主要規定の延長措置等

○住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の延長

 

◯事業承継税制における特例承継計画等の提出期限の延長

令和81231日まで3年延長

 

令和8331日まで延長

 

 

消費課税

項目

内容

適用期日等

国外事業者に係る消費税の課税の適正化

 

○プラットフォーム課税の導入

特定プラットフォーム事業者を介して行われる国外事業者の消費者向け電気通信利用役務の提供は、その取引金額が50億円を超える場合、そのプラットフォーム事業者が行ったものとみなす

○事業者免税点制度の特例、簡易課税制度等の見直し

国外事業者による事業者免税点制度や簡易課税制度の租税回避を防止するため、制度の適用要件を厳格化

◯インボイス制度見直し

  1.  帳簿のみ保存で仕入税額控除が認められる自販機特例について、帳簿への住所等の記載を不要とする
  2. 仕入税額控除の経過措置は、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れが10億円超の部分は対象外となる

令和7年4月1日以後に行われる電気通信利用役務の提供より

 

 

 

令和510月まで遡り不要

令和6年10月1日以後開始課税期間

納税環境整備その他

項目

内容

適用期日等

その他

 

 

 

e-Taxの利便性向上

GビズIDを連携
処分通知の電子交付を拡充

◯重加算税制度の整備

隠蔽に基づく更正請求に重加算税

◯第二次納税義務の整備

法人の不正申告で未納がある場合、役員の個人責任を追及

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考:賃上げ促進税制まとめ

actus_3

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