日本の会計・人事を変える。”もっとやさしく””もっと便利に”企業のバックオフィスを最適化。

男女賃金差異の開示義務化とは?対象企業や差異の算出、公表方法を解説

男女賃金差異の開示義務化とは?対象企業や差異の算出、公表方法を解説

 スーパーストリーム

日本では、男女間の賃金差異が依然として大きく、先進国の中でも最下位に近い状況です。この問題を解決するために、政府は女性活躍推進法の改正により、従業員301人以上の企業に男女の賃金の差異の公表を義務づけました。

この制度は、2023年3月期決算企業から適用されています。そのため対象となる企業では、自社の男女の賃金の状況を正確に把握し、翌年度の公表に向けて準備する必要があります。もし、情報の公表を行わなかった場合の直接的な罰則は規定されていないものの、労働局からの求めに応じない場合には、罰則が科せられる可能性があるため注意が必要です。

そこで今回は、男女賃金差異の開示義務化について、対象となる企業や賃金差異の算出と公表の仕方を徹底解説します。企業の人事や労務に携わる方は、ぜひ参考にしてください。

男女賃金差異の開示義務化とは?男女賃金差異の現状と問題点を解説

男女賃金差異の開示義務化とは、女性活躍推進法の改正により、従業員301人以上の企業に対して、男女の賃金の差異を公表することを義務付けた制度です。この制度は、2023年3月期決算企業から適用されています。

男女賃金差異の現状と問題点

日本の男女間の賃金差異は、OECD加盟国の中で最下位に近く、男性の賃金に対して女性の賃金は73.7%しかないのが現状です。

賃金差異が大きい原因としては、女性の就業形態の偏り(非正規雇用の割合が高い)、職種の偏り(管理職や専門職の割合が低い)、キャリアの偏り(継続勤務年数が短い)、育児・介護などの家事分担の不均衡などが挙げられます。

賃金差異は、女性の能力や意欲を十分に発揮できないことにつながるため、女性の自立や社会参加を阻害するだけでなく、経済成長や人口減少の対策にも悪影響を及ぼすと考えられます。

男女賃金差異の開示義務化の目的とメリット

男女賃金差異の開示義務化の目的は、先進国の中で男女の賃金差異が大きい日本の状況を是正し、女性の参画や企業価値の向上につなげることです。

男女賃金差異の開示義務化のメリット

男女賃金差異の開示義務化によって、以下のようなメリットが期待されます。

公平な人事の評価と政策を構築できる

企業が、自社の男女の賃金実態を正確に把握し、賃金差異の原因や課題を分析することで、性別に関係なく能力や業績に応じた公正な評価制度や人事政策を構築することができます。

企業の社会的信頼や評価を高められる

企業が賃金差異の縮小に向けた取り組みや成果を外部に公表することで、社会的な信頼や評価を高めることが可能です。また、女性の活躍推進に積極的な企業として、優秀な人材の確保や定着にもつながるでしょう。

女性のキャリアや働き方の選択肢を増やせる

女性が、自社や他社の賃金差異の情報を参考にして、自身のキャリアや働き方の選択肢を広げることが可能です。また、賃金差異の是正に向けた企業の取り組みや成果を見て、自身の能力や意欲を十分に発揮し、活躍できる環境を探しやすくなります。

国内企業の人手不足が社会問題となる中で、優秀な人材が男女に関係なく活躍できること、そして安心して働ける場を提供することは、企業や社会の義務と言えるでしょう。

新規CTA

男女賃金差異の開示義務の対象となる企業と期限

男女賃金差異の開示義務の対象となる企業は、常時雇用する労働者数が301人以上の事業主です。労働者数の算出方法は、事業年度の初日における常用労働者の数で判断します。

初回の開示期限は、法施行後に最初に終了する事業年度の実績を、その次の事業年度の開始日からおおむね3か月以内に公表する必要があります。例えば、事業年度が4月~3月の場合、令和4年4月~令和5年3月の実績を、おおむね令和5年6月末までに公表するという形です。

その後の更新頻度は、毎年1回です。公表する場所は、自社のホームページや厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」のいずれかとなります。

また、下記の資料にあるように、上記に該当する企業以外でも、女性活躍の取り組みに関する情報開示を行うことで、自社の社会的信頼や評価を高めることにつながるでしょう。

出典:厚生労働省の資料「女性活躍推進法に基づく男女の賃金の差異の情報公表について」より

男女賃金差異の算出方法と公表方法

それでは次に、男女賃金差異の算出方法と公表の仕方について解説します。

総賃金と人員数の区分と定義

総賃金とは、賃金、給料、手当、賞与など、使用者が労働者に支払うすべての金額です。ただし、退職手当や通勤手当などは、経費の実費となるため、賃金から除外することができます。

一方、人員数とは、事業年度の初日における常用労働者の数です。常用労働者とは、期間の定めなくフルタイムで働く正規労働者と、契約期間や労働時間が相当程度短いパート・有期雇用労働者を合わせたものです。

総賃金と人員数は、男女別に正規労働者と非正規労働者に区分して算出します。非正規労働者とは、パートタイム労働者と有期雇用労働者のことを指します。

平均年間賃金と差異の割合の計算式

平均年間賃金とは、総賃金を人員数で除算したものです。平均年間賃金は、区分した労働者ごとに算出します。また、全労働者の平均年間賃金も男女別に算出します。

差異の割合とは、男性の平均年間賃金に対する女性の平均年間賃金の割合です。差異の割合は、労働者の区分ごとに算出します。算出した割合は、小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位まで表示します。

計算式は以下のとおりです。

  • ​平均年間賃金=総賃金÷人員数​
  • 差異の割合=女性の平均年間賃金÷男性の平均年間賃金​×100%​

参考:厚生労働省資料「男女の賃金の差異の算出方法等について」

男女賃金差異の公表方法と公表する場所

公表の方法は、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」に登録する方法と、自社のホームページに掲載する方法のどちらかを選択できます。

また、公表する際のイメージについては、下記の資料を参考にしてください。

出典:厚生労働省資料「女性活躍推進法に基づく男女の賃金の差異の情報公表について」より

資料ダウンロード

男女賃金差異の説明欄の活用と注意点

上記のように、男女賃金差異とは、同じ仕事をしているにもかかわらず、性別によって賃金に差があることです。この差は、女性の方が男性よりも低い傾向にあります。

女性活躍推進法に基づき、常時雇用する労働者が301人以上の事業主は、男女の賃金の差異を公表する必要があります。この公表は、自社の女性活躍推進の取り組みや実情を正しく理解してもらうために重要です。

男女賃金差異の説明欄とは?

そこで、自社の実情を正しく理解してもらうために「説明欄」を有効活用しましょう。説明欄とは、男女の賃金の差異の数値だけでは伝えきれない自社の実情を説明するための欄のことです。事業主は任意で、より詳細な情報や補足的な情報を公表することができます。

男女賃金差異の説明欄を活用する際の注意点

説明欄を活用する際の注意点は、次の4つです。

1.説明欄には、男女の賃金の差異の原因や背景、自社の女性活躍推進の取り組みや目標、今後の改善策などを具体的に記載すること。

2.説明欄には、男女の賃金の差異を正当化するような言い訳や、女性の能力や適性に関する偏見や固定観念を反映した内容を記載しないこと。

3.説明欄には、男女の賃金の差異を縮小するための具体的な行動計画や期限を明示すること。

4.説明欄には、男女の賃金の差異の算出方法やデータの範囲、期間などを明記すること。

男女賃金差異以外の指標(管理職比率や継続勤務年数など)の公表について

賃金差異以外の指標とは、女性活躍推進法に基づいて、一般事業主が策定する行動計画における目標や状況把握のための項目のことです。例えば、管理職比率、平均継続勤務年数、育児休業取得率、教育訓練受講状況などがあります。(下記の表を参照)

出典:厚生労働省資料「女性活躍推進法に基づく男女の賃金の差異の情報公表について」より

これらの指標の公表については、常時雇用する労働者数が301人以上の事業主は、男女の賃金の差異とともに必須で公表する必要があります。また、常時雇用する労働者数が101人以上300人以下の事業主は、上記の表にある16項目のうち、任意の1項目以上を公表しなければなりません。

公表の方法としては、自社のホームページや厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」に情報を掲載することが一般的です。また、説明欄を活用して、自社の実情を正しく理解してもらうために、より詳細な情報や補足的な情報を公表することも可能です。

賃金差異以外の指標の公表は、女性の登用や継続就業の進捗を測る観点から有効な指標となりますが、数値の大小に終始することなく、各企業における管理職比率や平均継続勤務年数などの状況把握・課題分析を改めて行った上で、女性活躍推進のための取り組みを行うことが重要です。

男女賃金差異の開示義務化のまとめ

このように、男女賃金差異の開示義務は、企業が自社のジェンダー差異の問題を可視化し、改善策を実行するための有効な指標となります。

このため、企業の人事給与管理が、より重要となります。なぜなら、人事給与管理には、賃金や昇進などの重要な要素を含むため、男女賃金差異の原因や解決策を探る上で欠かせないものだからです。

そこで、本記事内で解説した賃金差異の算出や公開業務を正確かつ効率的に行うために、人事給与システムの活用が不可欠と言えるでしょう。

人事給与システムの導入によって、自社の人事管理や給与管理の効率化と正確性の向上が可能です。

ただし、人事給与システムにはさまざまな機能と種類があるため、自社に合ったシステムを選び、導入することが重要です。

そこで、まずは自社に必要となる人事給与システムの要件や機能を明確にして、どのようなツールが必要かを検討してみましょう。

もし、自社に必要な機能や種類などがわからない場合には、いつでもスーパーストリームにご相談ください。貴社に最適なソリューションを提供いたします。

新規CTA

関連記事