トレンド情報 2024.05.27 (UPDATE:2025.04.15)
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賃上げ促進税制とは、前年度よりも給与等の支給額を増加させた企業に対し、その増加額の一部を法人税や所得税から控除できる制度です。賃上げ促進税制は、給与の増加を通じた消費の拡大と、経済の活性化を目的とするものです。
賃上げ促進税制を活用するには、一定の要件を満たした上で、前年度よりも給与等の支給額を増加させる必要があります。この制度は、令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度が対象です。
ただ、税制は頻繁に改正されることが多く、その内容も複雑で理解しにくいのが特徴です。そこで今回は、賃上げ促進税制の概要と、大企業に適用される法人税改革案の内容をわかりやすく解説します。企業の経営者の方はもちろん、財務や人事に関わる方も、ぜひ参考にしてください。
賃上げ促進税制は、企業が従業員の給与を増やすことを奨励するための税制措置です。この制度は、賃上げや人材育成に投資する企業に対して、雇用者給与等支給額の前年度からの増加額の一定割合を法人税額または所得税額から控除することで、企業の税負担を軽減します。
賃上げ促進税制の適用対象は、青色申告書を提出する全企業で、適用期間は令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度です。
税額控除の通常要件では、継続雇用者給与等支給増加額が前事業年度より3%以上増えている場合、その増加額の15%が法人税額または所得税額から控除されます。さらに、資本金10億円以上かつ従業員数1,000人以上の企業については、マルチステークホルダー方針を公表していることが追加要件となります。
マルチステークホルダー方針とは、企業が事業を行う上での、従業員や取引先等のさまざまなステークホルダーとの関係の構築の方針です。具体的には、賃金引上げ、教育訓練等の実施、取引先との適切な関係の構築等の方針を記載したものを指します。
この方針は、企業が持続可能な成長と長期安定的な企業価値の向上を目指す上で重要です。株主や顧客をはじめ、取引先、地域社会、従業員などのマルチステークホルダーとの適切な協働に取り組むことが求められます。
賃上げ促進税制の文脈では、資本金10億円以上かつ従業員数1,000人以上の法人は、事業年度終了の翌日から起算して45日以内に、マルチステークホルダー方針の公表及びその旨の届出の提出が必要とされています。これは、大企業が社会全体に対して責任を持ち、多様な利害関係者との関係を適切に管理し、持続可能な発展を支える新しいガバナンスのモデルを構築するためのものです。
また、賃上げ促進税制の上乗せ要件として、継続雇用者給与等支給額が前事業年度より4%以上増えている場合や、教育訓練費が前事業年度より20%以上増えている場合には、税額控除率がそれぞれ10%または5%上乗せされます。
賃上げ促進税制によって企業が受ける影響としては、賃上げを行った場合、その賃上げ分は全額損金算入されるため、黒字企業を前提とすると、約30%分の税負担が軽減されます。
さらに、賃上げ促進税制の適用によって最大45%が税額控除されることにより、賃上げ分の約75%相当額について税負担が軽減されるため、賃上げによる実質的な会社負担が約25%に抑えられます。
この制度は、従業員の給与増加を通じて消費の拡大を図り、経済全体の活性化を目指すものです。ただし、制度の詳細や適用条件は複雑であるため、企業によっては専門家のアドバイスを求めることをおすすめします。
大企業の法人税改革案における賃上げ促進税制の詳細は以下の通りです。
青色申告書を提出する全企業が対象です。
令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度です。
継続雇用者給与等支給増加額が前事業年度より3%以上増えていること。
その増加額の15%が法人税額または所得税額から控除されます。
資本金10億円以上かつ従業員数1,000人以上の企業は、マルチステークホルダー方針を公表していることが追加要件です。
継続雇用者給与等支給額が前事業年度より4%以上増えている場合、税額控除率を10%上乗せします。また、教育訓練費が前事業年度より10%以上増えている場合は、税額控除率を5%上乗せできます。
なお、上乗せ要件は事業者の規模によっても異なるため、中小企業庁の資料で詳細をご確認ください。
「継続雇用者給与等支給額」は、継続雇用者に対する給与等の支給額の合計額です。
「雇用者給与等支給額」は、全ての国内雇用者に対する給与等の支給額の合計額です。
「控除対象雇用者給与等支給増加額」は、適用事業年度の雇用給額から前事業年度の雇用者給与等支給額を控除した金額となります。
「教育訓練費」は、国内雇用者の職務に必要な技術または知識を習得させ、または向上させるために支出する費用のうち一定のものを指します。
また、賃上げ促進税制に関する詳細は、中小企業庁が発表したパンフレットからも確認できますので、ぜひご参照ください。
次に、賃上げ促進税制を活用するメリットと、経済への好影響について解説します。
以下では、賃上げ促進税制を活用するメリットについて解説します。
企業が賃上げを行った場合に、その賃上げ分が全額損金算入されるため、黒字企業の場合には約30%分の税負担が軽減されます。さらに、賃上げ促進税制の適用によって最大45%が税額控除されることにより、賃上げ分の約75%について税負担が軽減されます。
従業員の給与が増加することで、消費が促進され、経済全体の活性化に寄与します。これは、結果的に企業の収益にも繋がる重要な要素と言えるでしょう。
賃上げは、日本経済にとって欠かすことのできない重要な要素です。なぜなら、賃上げを実現することで、コストカット型の経済から、所得増と成長の好循環による新たな経済への移行のチャンスとなるからです。そのためには、物価の上昇率を上回る賃上げの実現が重要であり、賃上げ促進税制はこの好循環を支える重要な役割を果たすと言えるでしょう。
賃上げ促進税制は、企業が人材育成に投資することを奨励し、より高いスキルを持つ労働力の確保と育成を促進します。
賃上げによって従業員のモチベーションが向上し、生産性の向上にもつながります。これにより、企業の競争力が強化される可能性が高まります。
賃上げによる消費の増加は、内需を拡大し、経済成長を促進します。また、賃上げによって雇用が安定し、失業率の低下にも寄与するでしょう。さらに、給与が増えることで社会保障への拠出が増加し、社会保障制度の充実につながると考えられます。
このように、賃上げ促進税制は、企業にとっても経済全体にとっても多くのメリットがある重要な制度の一つです。ただし、賃上げの実施は企業の経営戦略にも影響を与えるため、慎重に検討する必要があります。
以下では、企業が賃上げ促進税制を活用する際の申告方法と手順を解説します。
企業は、賃上げによって増加した給与支給額を確認し、前年度と比較して増加していることを確認する必要があります。
確定申告書類には、控除の対象となる給与支給額の増加を示す書類や、控除を受ける金額及びその計算に関する明細を記載した書類を添付します。
上乗せ条件を満たすためには、教育訓練費が前年度より増加していることを示す書類も必要です。これには、教育訓練の実施時期や内容、対象者の氏名などが含まれます。
準備した書類を添付して、確定申告書を税務署に提出します。この際、電子申告の利用も可能です。
申告後は、税務署からの指摘に対応するため、提出した書類のコピーを保管しておくことが重要です。
賃上げ促進税制を活用する際は、以下の点に注意が必要です。
賃上げ促進税制を利用するためには、一定の適用要件を満たす必要があります。中小企業は前年度と比べて給与支給額が1.5%以上増加していること、大企業は3%以上増加していることが求められます。
給与が上がると、それに伴い社会保険料も増加する可能性があります。これによる財務への影響を事前に評価することが重要です。
賃上げ後に賃金を維持するための経営力が必要です。賃上げによる税額控除を受けた後も、継続的に賃金を維持できるかどうかがポイントとなります。
令和6年度の税制改正で新設された繰越控除制度により、当期の税額から控除できなかった分を5年間繰り越すことが可能です。ただし、繰り越した控除は給与支給額が前年度から増額した事業年度でしか利用できません。
教育訓練費の増加も上乗せ要件となっており、外部研修や講師を招いた勉強会などの費用も賃上げ促進税制の適用対象となります。従業員のスキルアップにつながるため、企業の競争力向上にも寄与します。
賃上げ促進税制の対象となるのは国内雇用者です。海外で働いている従業員は、国内の事務所で作成された賃金台帳に記載されている場合のみ適用されます。
制度の適用期間は令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度です。この期間を逃すと、税制のメリットを享受できなくなるため、期間内に申告することが重要です。
これらの注意点を踏まえ、賃上げ促進税制を活用する際には、適用要件を満たしているかどうかを慎重に確認し、税理士などの専門家と相談しながら進めることをおすすめします。
上記のように、賃上げ促進税制を導入する企業では、普段の経理や決算時の処理に変化が生じます。特に決算時には、適切な申告書類が必要となるため注意が必要です。
そこで以下では、賃上げ促進税制による変化と、クラウド会計システムを導入するメリットについて解説します。
賃上げ促進税制が経理業務にもたらす変化には、以下のような点があります。
賃上げ促進税制を適用するためには、従業員の給与増加率を正確に計算し、前年度との比較を行う必要があります。これにより、給与計算のプロセスが複雑になる可能性があります。
税額控除を適用するためには、賃上げによる給与支給額の増加分を計算し、税務申告書に記載する必要があります。このため、経理部門は新たな計算手順を理解し、適用する必要があります。
教育訓練費の増加も税額控除の対象となるため、これらの費用の管理と記録が重要になります。そのため、経理部門では、教育訓練に関わる費用の詳細な追跡と報告を行う必要があります。
賃上げによる控除額が多く、その年度内で使い切れなかった場合、最大5年間繰り越すことが可能となりました。そのため、経理部門では、繰越控除の管理と適用に関する新たなプロセスを確立する必要があります。
賃上げ促進税制の適用に伴い、税務申告書に新たな項目が追加されることが予想されます。そのため経理部門では、これらの変化に対応するための、知識とスキルの更新を行う必要があります。
従来の会計ソフトウェアや給与計算システムを使用する場合には、賃上げ促進税制の適用に対応するためにアップデートが必要となる場合があります。そのため経理部門では、システムのアップデートを監督し、新しい要件に合わせて調整する必要があります。
上記のように、賃上げ促進税制を適切に活用するためには、経理部門や担当者に大きな負担がかかる可能性があります。そこで、クラウド会計システムを導入することにより、経理上のさまざまな変化に対して効率的な対応が可能です。
クラウド会計システムを導入することで、リアルタイムなデータアクセスや自動アップデート、取引内容の自動仕訳などの機能が使えるようになるため、経理業務の効率化と正確性の向上を図ることができます。
また、賃上げ促進税制の適用による経理業務への影響は、企業の経営戦略や人材育成計画にも関連するため、経理部門が税制の変更に対応するだけでなく、企業全体の戦略的な計画においても重要な役割を果たすことになるでしょう。
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